見出し画像

【ゲーム考察】ドラクエ、FF、ポケモン、ペルソナ・・・「ターン制コマンドバトル」の面白さとは?

【ターン制コマンドバトルとは?】

「ターン制コマンドバトル」というジャンルのゲームを遊んだことはありますか?

ターン制コマンドバトルとは、その名の通り、

自分と相手のターンを交互に繰り返して、コマンドを入力することで対戦するゲーム

です。

・・・とは言われても、「何だそれ?」となるかもしれないですね。
具体例を見てもらえれば「あぁ、アレね」となると思います。


例えば、

画像1

『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて PlayStation®4版プロモーション映像』 より

『ドラゴンクエスト』シリーズや、


画像7

ファイナルファンタジーIII より

『ファイナルファンタジー』シリーズ(※厳密にはFF1~3まではターン制コマンドバトルで、FF4~13はアクティブタイムバトルシステムというリアルタイム性を含んだバトルです)、


画像3

ポケットモンスター 金・銀 ダイジェスト映像 より

『ポケットモンスター』シリーズ、


画像4

ペルソナ5 物語の序盤紹介映像 より

『ペルソナ』シリーズなどが代表的なターン制コマンドバトルです。

このターン制コマンドバトル、面白いですよね。
ハマったことがあるゲームが1つはあるのではないでしょうか。

では、それらのターン制コマンドバトルはなぜ面白いのでしょうか?
その理由は、例えば、

・ストーリーが面白いから
・難しい操作をしなくても強化すれば勝てて嬉しいから
・キャラクターが個性的だから
・世界観が独特だから

などなど、色んな面白い理由があると思います。
僕は今回、バトルに絞って、その面白さを分解していきたいと思います。


【ターン制コマンドバトルの面白さとは?】

さっそく結論からお伝えします。

ターン制コマンドバトルの面白さはズバリ、

相性を考えながら戦い方を練ること

だと僕は考えます。

なぜなら、「相性を考えながら戦い方を練る」ことが、

・試行錯誤を重ねて敵を倒す達成感
・効率的に敵を倒す気持ちよさ

という、最も気持ち良い体験につながる過程だからです。


ポケモンを例に挙げて解説します。

これからあなたはポケモンでジムリーダーに挑むとしましょう。
あなたがジムリーダーに勝つまでの間に、以下の過程をたどると思います。

・バトル前:リソースの獲得・配分
・バトル中:状況に応じた判断
・有利な展開を作る
・敵に勝利する

この流れをもっと詳しく見てみましょう。

▼バトル前:リソースの獲得・配分
このジムリーダーはどうやら、いわタイプのポケモンを使うらしい。
となると、みずタイプのポケモンをリストの1番最初に持ってこよう。
(または:みずタイプのポケモンを持っていないから、捕まえに行こう)
(または:みずタイプのポケモンを持っているけど、レベルを十分に上げて勝てるようにしておこう)

と、バトル前にリソースの獲得や配分を行った上で、

▼バトル中:状況に応じた判断
相手は、いわタイプのポケモンを出してきたぞ。
自分はみずタイプのポケモンを出したから、相性が良いみずタイプの攻撃をしよう。

バトル中に状況に応じた判断を行い、

▼有利な展開を作る
「こうかはばつぐんだ!」
よし!弱点を突いて大ダメージだ!

有利な展開を作ることで、

▼敵に勝利する
やった、戦略がハマった!
勝てた!

敵に勝利することができます。

この流れの中の、「バトル前:リソースの獲得・配分」と「バトル中:状況に応じた判断」を見ると分かると思いますが、相性を考えながら戦い方を練っていますよね。

画像5

つまりこのような図式に落とし込むことができます。

「相性を考えながら戦い方を練る」という過程を経て、有利な展開を作って敵を倒すことで、気持ちよさと達成感を得ることができます。


ターン制コマンドバトルのゲームデザインは、この体験を与えることを目的にデザインされています。

「有利な展開を作って効率的に敵を倒す」という気持ち良い体験が得られるから、
戦闘に負けたとしても、「今回はこの判断がまずかったかな、次はああすれば勝てるかな」と何度も試行錯誤してしまいます。

ここがターン制コマンドバトルの面白さの本質と言えるんじゃないかなと僕は考えてます。


そして、さらに深ぼって考えてみると、

試行錯誤(戦い方を練ること)が飽きない理由として、
「相性」の存在が大きいと僕は考えています。

なぜ相性というものがあり、それは大切なのでしょうか?

相性についての考察を次に書いていきます。


【相性とは「感情をより揺さぶるための装置」である】


ターン制コマンドバトルでは、自分と敵の間に、「相性」というものがあります。

例えば、こんな相性があります。

▼属性・タイプ間の相性
・くさタイプのポケモンに、ほのおタイプのわざ→「こうかはばつぐんだ!」
・みずタイプのポケモンに、ほのおタイプのわざ→「こうかはいまひとつのようだ」
・ゴーストタイプのポケモンに、ノーマルタイプのわざ→「こうかがないみたいだ…」

これは属性やタイプの間に存在する相性ですね。

ゲームによって相性は様々ですが、

画像6

こんなタイプの相性や、

画像7

こんな属性の相性を見たことがあると思います。


もしくは、こんな相性もあります。

▼パラメータと攻撃方法の相性
・ゴツゴツした敵には物理攻撃が効きにくいため、魔法を使えるキャラクターを編成した方が勝てる
・すばやさは遅いが、攻撃力は高いので、防御力を上げる魔法と回復魔法で耐えて、じわじわ弱らせて勝つ

このパターンは、相手のパラメータと自分の攻撃方法の間に相性があります。

さらには、こんな相性。

▼攻撃方法の相性
・マホカンタ(魔法攻撃を反射する呪文)を使う敵には魔法が効かないから、物理攻撃が強いキャラクターで攻撃した方が勝てる

このパターンは、相手の攻撃方法(特殊魔法)と自分の攻撃方法の間に相性があります。


このように、属性やタイプに限らず、パラメータや攻撃方法の間にも相性は存在します。


なぜ相性があるのでしょうか?
それは、

「試行錯誤を重ねて敵を倒す達成感」と、「効率的に敵を倒す気持ちよさ」
この
2つの感情を、より揺さぶるためにある。

と僕は考察します。

では、「相性」という仕組みが、それぞれの感情をどのように揺さぶっているのかを次に見ていきましょう。


【気持ちよさを生むための相性】


まずは、相性が「効率的に敵を倒す気持ちよさ」という感情をどのように揺さぶっているかを書いていきます。

「相性」が存在することによって、「弱点」というものが生まれます。
弱点を突いて攻撃すると、大ダメージを与えたり、敵の攻撃を無力化したり、とても有利な展開を作ることができます。

弱点を突いた瞬間って気持ち良いですよね。

チクチクとダメージを与えていって倒すよりも、
「こうかは ばつぐんだ!」と大ダメージを与えた方が「気持ち良い!」となるはずです。

画像12


(この画像を見ただけでも爽快感を得ることができますね)

弱点を突くことによって、「気持ち良い」という感情がより大きく揺さぶられているはずです。

これは、相性という仕組みがあるからこそ、感情を揺さぶることができるのです。


もし、仮に相性の差が曖昧だったとしましょう。

どの技や魔法を使っても、相手に与えるダメージは50~60の幅に収まる

・・・のようなイメージです。
どの技を使っても結果は大体同じなので、大ダメージを与えたり、有利な展開を作ることもできません。

これだと、大ダメージを与えて敵がバタっと倒れることも無いですし、逆に全く攻撃が効かなくて敵がドヤ顔でこっちを見てくることもありません。

そのため、「よっしゃ大ダメージだ!」「うわ、攻撃が効かないだと!?」という具合に感情を揺さぶられることがありません。
(とにかく倒されないことだけに気をつければOKですしね。)

感情が揺さぶられないと、すぐに飽きが来ちゃいます。
これじゃあ・・・面白いとは言い難いです。


気持ち良さを生むための"気持ち悪さ"

「相性は感情を揺さぶる装置」で、その感情の一つには「気持ち良さ」があるんだ!
・・・というお話をしました。
そして気持ち良いという感情を作るために、「こうかはばつぐんだ!」みたいな、弱点を突くシチュエーションを作っているというお話をしました。

ただ、これだけじゃないんです。
「気持ち良い」という感情を揺さぶるために、相性はもう一つの役割を果たしてるんです。

さっきは相性の良さについてフォーカスしましたよね?
ということは、今度は相性の悪さの話です。

つまり、「相性」が「気持ち良い」感情を引き起こすために果たしている重要なもう一つ役割は、

相性の悪さによってストレスという感情を引き起こしていることです。


ポケモンの、「こうかは いまひとつの ようだ」はその一例ですね。

画像13

(この文字列はストレスですよねぇ)

「相性がよくて弱点を突いて気持ち良い」という感情を作るためには、
「相性が悪くてなかなか敵が倒せなくてストレス」という感情も作る必要があります

なぜかというと、「ストレス」というマイナス感情に触れる体験をさせることで、「気持ち良い」というプラス感情に触れた時に、よりはっきりと「気持ち良い!」と感じることができるようになるからです。

つまりは感情にコントラストを付けている、ということですね。
この感情のコントラストを、「相性」という仕組みは作っているのです。


画像8


相性という仕組みは、その仕組みが生み出す「弱点」と「相性の良し悪し」という要素によって、「気持ち良い!」という感情がより引き立つ構造になっているのです。


【達成感を生むための相性】

続いては、「相性はいかにして『達成感』という感情を揺さぶっているのか?」について見ていきます。


先ほど、「相性が存在することによって『弱点』が生まれる」という話をしました。
では、弱点が生まれるとプレイヤーの心理としてはどんな変化が起こるでしょうか?

たぶん、

「弱点を突いてなるべく効率的に勝ちたい」

・・・と思ってしまうはずですよね?
だって大ダメージを与えた方が気持ち良い体験を得られる訳ですからね。

となると、自ずと

「この敵の弱点って何なんだろう?」
「自分のモンスターと敵のモンスターは相性が良いかな?悪いかな?」
「この攻撃が相性が良いかな?」

・・・と考えるはずです。
つまり、相性が存在することによって、「弱点を突くために戦い方を練る」という工程が生まれます

そして、「弱点はどこにあるかな、どういう攻撃を出そうかな」と戦い方を練って練って敵に勝つと、「自分の力で考え抜いて敵を上手いことやっつけることができたぞ!」という達成感を得ることができます。

このようにして、相性という仕組みは達成感という感情も引き起こす装置であると言えます。


▼達成感を生むために必要な労力

では、次に達成感を引き起こすメカニズムについて書いていきます。

達成感を感じることができるのはズバリ、「戦い方を練る」という工程が、「多くの要素を元に最善の判断を下す」という大変労力のかかる工程だからです。

「多くの要素を元に最善の判断を下す」とは、どのような要素があって、どのような判断をするのでしょう?

分解して見てみましょう。


まず、「戦い方を練る」という行為は、推理行動選択に分解することができます。

敵の外見や攻撃方法などの特徴を見て、「この敵に対してはこの攻撃が効くかな、こういう攻撃をしてくるかな」と考えるのが推理。

その上で「このモンスターはこの攻撃、このモンスターにはこのアイテム・・・」と行動を決めていくのが行動選択。

ターン制コマンドバトルでは、プレイヤーはこの2つを繰り返します。

推理と行動選択を、さらに細かく分解してみました。


▼推理
・どのような敵と遭遇するかを予想する
・属性・タイプは何かを予想する
・攻撃方法、威力を予想する
・自分と敵を含めた攻撃順番(すばやさ)を予想する
・敵が特殊な能力を使うかどうか、使った場合誰にどのような影響を及ぼすかを予想する

画像11

▼バトル前の行動
・どの味方を連れていくか
・味方をどの順番に並べるか
・味方にどんなアイテムを持たせるか
・味方にどんな攻撃方法を覚えさせるか

画像11

▼バトル中の行動
・戦うか逃げるかの選択
・攻撃参加メンバーの選択
・攻撃するか防御するかアイテムを使うかの選択
・攻撃方法の選択
・攻撃対象の選択

画像9


これでもかなり簡略化して説明しています。
例えば強化・育成の要素や、連戦を迫られる状況など、他にも考えうる要素はたくさんあります。

このようにして、プレイヤーはめちゃくちゃ多くの要素を頭に入れた上で、それらがどういうステータスか状況を判断して、どのような行動選択をすれば効率的に倒せるかを考える必要があるのです。


さらに、推理と行動選択の大まかな流れを書くと、以下のような流れを繰り返します。

▼バトル前
出くわす敵の推理(どういうタイプの敵と遭遇するかな、このフィールドはこういう特徴があるからこんなモンスターが出てくるかな)

行動選択(こういう状況に備えて、このモンスター連れて行こうかな、やっぱりこっちにしようかな)

▼バトル中
相性の推理(弱点は何かな、どういう攻撃をしてくるかな、攻撃順番は自分より速いかな、遅いかな)

バトル中の行動選択(この魔法使おうかな、このアイテムにしようかな)

この流れを繰り返す中で、プレイヤーは勝利という目標達成を目指します。

自分の持っているリソース、限られた行動、敵の状況、様々な要素を見て、最効率を考え、弱点を突き、勝利した暁には充実した達成感を得られるでしょう。

このように、推理と行動選択によって構成される「戦い方を練る」という労力のかかる過程があることで、勝利した時に達成感を得られるのです。


・・・そして、先ほどの「気持ち良さ」の時にも話しましたが、達成感についても同様に「もしも」の話をします。

もし、仮に相性の差が曖昧だったとしましょう。

どの技や魔法を使っても、相手に与えるダメージは50~60の幅に収まる

・・・のようなイメージです。
どの技を使っても結果は大体同じなので、大ダメージを与えたり、有利な展開を作ることもできません。

もしこのような状況だと、どの技を使っても結果がほぼ見えているので、「推理」をする必要がごっそりなくなります。

だって「魔法を使った方が良いかな?アイテムを使った方が良いかな?」と考える必要がないですからね。

こうなると、どんな行動を選択しても結果が変わらないため、行動選択にも意味が無くなっていきます。
つまり、作業と化していきます。

こうして得られる体験としては、仮に勝ったとしても「まぁ勝つわな」という予定調和の体験になってしまい、試行錯誤をする必要がなくなります。
つまるところ、勝った時に達成感を得られません。

最終的には、感情が揺さぶられない体験となり、ゲームをやめてしまうでしょう。

だから、相性という仕組みはとても重要な役割を負っているのです。


【まとめ】

これまで述べてきた考えを図式化してきました。

ターン制コマンドバトルの面白さと得られる体験

そして、まとめると・・・


・ターン制コマンドバトルの面白さとは、「相性を考えながら戦い方を練ること」である。

なぜなら「相性を考えながら戦い方を練ること」が、
以下の2つの体験に繋がるから。

・効率的に敵を倒す気持ちよさ
・試行錯誤を重ねて敵を倒す達成感

相性は、これらの感情を揺さぶる装置である。

相性がもたらす弱点の存在によって、有利な展開を作ることができ、敵を倒した時に「気持ち良い」という感情をもたらす。
そして、相性の悪さが引き起こすストレスがあることによって、コントラストとして「気持ち良さ」の感情が引き立つ構造になっている。

そして相性があることによって、弱点を狙うために「戦い方を練る」という過程が生まれ、これがあることにより勝った時の「達成感」を生む。

「戦い方を練る」という過程は推理と行動選択に分解することができ、これらの行為は多様な要素から最善の判断を下す、という多大な労力のかかる行為である。
そしてこの労力が、勝った時の達成感を増幅させる。



まぁ普段こんな細かいことを考えながらゲームすることはないと思いますが、ターン制コマンドバトルでは意外とたくさんのことを考えながら遊んでるんだな、と思ってもらえたかと思います。

だから、ゲームしてるだけですごい!めっちゃ色んなこと考えてる!
って自分で自分を褒めてあげてください。笑

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?