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創造力(クリエイション)を高める方法

機械やデジタル技術、ロボットに人間の作業を任せることがどんどん増えています。
AI(artificial intelligence/人工知能)にも「知能」の一部を任せられるようになりました。
シンギュラリティ(singularity/技術的特異点)が来て「AIが人間の知能を超える」「人間の仕事が奪われる」という議論もありますが、もう少しポジティブな視点で、デジタルやAI技術が社会でさらに活用される近未来において、われわれ人間の役割にあわせて育成すべき能力を考えてみましょう。


一般的に近未来において人間の役割は「創造」「価値を生み出すこと」などが言われていることと思います。
では、そのような未来に向けて「創造力」を高めるにはどのようにすれば良いのでしょうか?

FMBにはTFLという親会社があり「ファッションテック教育」を提供しています。
教育ビジネスに携わってきた経験から「創造力」を高める方法に関して私見をまとめてみました。

■創造力をキーにした教育が日本国内でも


「KJ法」「コラージュ」「アート思考」「マインドマップ」「オズボーンのチェックリスト」「マトリクス法」「SWOT分析」「デザインシンキング」「スペキュラティブデザイン」「リベラルアーツ」・・・
大学や大学院だけでなく、従来、技能教育に特化してきた専門学校でも上記のような新しいビジネスやデザインを生み出すための教育方法が少しずつ広がりを見せてきました。社会人に向けた大学院やプライベート・スクール、オンライン教育でも、ビジネス創造カリキュラムや「デザインシンキング(思考)」を謳っているスクールをたくさん見つけられると思います。
また、AppleやGoogleなどのグローバル企業で「デザインシンキング」を経営や事業展開していくプロセスで取り入れられて以降社員教育などでも多く採用されています。


■欧米のファッションデザイン教育にみる創造力育成


「ファッションデザイン」における創造力育成に関して、日本の教育手法は欧米と少し違いがあります。

日本の専門学校では、先生の作業をみて覚えて同じ作業を身につけることや、板書(資料)を記憶して覚えること、綺麗な作品を作る作業に重きが置かれます。
一方、ファッション教育機関で世界的な権威のある大学には「セントラル・セント・マーチンズ (Central Saint Martins)(イギリス)」「アントワープ王立芸術アカデミー(ベルギー)」「パーソンズ・スクール・オブ・デザイン(アメリカ)」があり、これら3つの大学では、技能教育は極限まで少なく、新しいデザインやアイデアを生み出すことと、それを生み出すプロセスや自分の考えに意味づけすることに重きが置かれています。
具体的なカリキュラムで言えば「答えのない命題(ワークショップで実施されることが多い)」や「教授とのダイアログ(対話)」などがあります。



■変革期や未来に必要な「創造力」


環境問題やエネルギー問題、紛争、政治、疫病などなど、われわれの未来を予見することが難しくなった現在、未来に必要なビジネスやサービス、衣服デザイン、生活様式などは、現状の延長線上に答えがないことは明白です。
つまり、「正解」を答える能力よりも、新しい未来を「創造」できる能力を育成することが求められているのです。

産業革命とは「産業上の諸変革による、経済・社会組織の飛躍的な変革のこと」を意味しますが、現在のデジタル・通信技術、AI技術などによる産業変革期は「第4次産業革命」と言われています。
この変革期には新しい技術によって変化する「未来」をイメージして、ビジネスやデザインを「創造」することが必要です。

■メタ認知


「メタ認知」という言葉を聞いたことがありますか?
FACEBOOKが社名を「メタ」に変更したので、「メタ」は聞いたことがあると思います。手前味噌ですが、FMBの社名は「ファッション・メタデータ・バンク」の略称で、早くから「メタ」という言葉に着目していました。

私見ですが「メタ認知」は、前述の創造力を育成する方法を学ぶ以前に、持っておかなければならないスキル(=誰にでも身につけられるという意味)と考えます。

WEB検索すると、以下のような説明が出てきます。

「客観的な自己」「もうひとりの自分」などと形容されるように、現在進行中の自分の思考や行動そのものを対象化して認識することにより、自分自身の認知行動を把握

心理学やカウンセリングでも使用される言葉ですが、教育領域では、前述の「答えのない命題(ワークショップで実施されることが多い)」や「教授とのダイアログ(対話)」などで育成される能力だと考えます。



海外の大学に行かずとも「メタ認知」能力を育成する方法があります。
日常生活の中で、自分自身で感じている感情やイメージを意識して「メタ認知」することです。加えて、多くの感情表現できる言語をインプット(読書・会話)することです。
図式化すると、以下のプロセスを意識的に行うことです。

感情・ファッションイメージ ⇨ メタ認知 ⇨ 感情の言語化

・音楽・映画・アート作品などに触れて感じる感覚を感じて(=気づき)言語化すること。
・感じていることを表すことのできる言語を増やすこと。
・なぜこのような感覚を持つのかを自己探求すること。

■メタ認知を「共感」に


自分自身の感情・感覚は、生まれてから今まで自分以外の外界から受けてきた五感情報や他人から受ける感情などで形成されています。逆に言えば、同じ社会で生活している(外界からの同じ情報を受けている)人の中には、自分と同じような感情を持つ他人がたくさんいる(マーケティング用語で言えばクラスター)ことにつながると思います。
つまり、自分のメタ認知ができることは「自分以外の他人が感じること」として置き換えていくことができます。


「デザインシンキング(思考)」の起点には「共感」が必要だと言われています。
ゆえに、「メタ認知」は、近未来に欲しい(=共感できる)サービスやデザインを「創造」できる基本スキルとなるわけです。

■日常生活にアートやデザインを
この文章を読んでいただいた方に、ぜひおすすめしたいことを。
・アート・デザイン・自然に触れること(メタ認知を忘れずに)
・本やネットの文章、会話を楽しむこと(感情表現できる言葉を探してください)


そして自分以外の人と「共感」できるポイントをたくさん見つけてください。きっと、「創造力」が高まります。

文責:市川 雄司


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