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3DCGをフォトリアルに見せるには?〜テクスチャ編

フォトリアルな3DCGを制作するための要素として、前回は『モデリング』について、そのコツや意識するところなどをお話ししました。今回は2つ目の要素、『テクスチャ』について解説します。

前回までの記事

『テクスチャ』とはマテリアルの質感を表現するための様々な画像データのことです。リアリティのある『モデリング』データに、リアルな質感を持った『テクスチャ』をマッピングすることで、フォトリアルな3DCGは完成されます。

★テクスチャマップ

テクスチャマップと言われる画像データには、「アルベド」あるいは「ディフューズ」「ベースカラー」といわれる表面の色柄のデータを表すもの、凹凸のデータである「ノーマルマップ」「ハイトマップ」「ディスプレイスメントマップ」といったもの、表面の光沢や反射率などを表す「スペキュラマップ」「グロッシネスマップ」、表面の微細な粗さを示す「ラフネスマップ」、金属か非金属かによって異なる反射の仕方を表す「メタルネスマップ」や、透明度や透過度を表す「オパシティマップ」「トランスペアレンシーマップ」、さらに、屈折率やフレネル反射、表面のコーティングなど様々な物理パラメータを制御するマップが存在します。

3DCGをフォトリアルに仕上げるためには、これらのマップの特性を把握し、適切なパラメータ設定をする必要があります。
そう聞くとこの段階で「もう無理!」という声が聞こえてきそうですが、マップの種類は色柄を表すもの、凹凸を表すもの、反射を表すもの、不透明度(透過)を表すもの、というカテゴリーで把握していれば大丈夫です。
そしてこのテクスチャの設定でも重要なのは、モデリング同様「リファレンス」と「観察力」になります。
やはり、現実のモノを表現するのですから、その見本があった方が良いのは間違いありません。色や凹凸の度合い、透け感や艶感など、参考資料をよく観察して、そこに近づけていくという作業が、フォトリアルな3DCGを作る上では最も近道です。

★PBS(物理ベースシェーディング)とPBR(物理ベースレンダリング)

また、PBS(物理ベースシェーディング)、PBR(物理ベースレンダリング)と言われるワークフローで作られる現在の3DCGでは、現実の物理法則に基づいてパラメータが設定されています。マーモセットなどのサイトでは、素材ごとの光の反射率や屈折率の計測値データが公開されています。作成するマテリアルの素材構成がわかれば、これらのデータを活用してリアルな質感を出すことができます。

ファッションの3DCGに関して言うと、洋服などは非常に多くの素材で構成されており、一枚の生地をとっても経糸と緯糸で素材が違ったり、ところどころ金属的な光沢を持つフィラメントやラメが入っていたり、ふわふわとしたバルキーな毛羽が出ていたり、からみ織りのようなものであれば隙間の空いた構造をしていたりと、非常に複雑です。さらに、現実の糸はわずかに太さが均一でなかったり、生地の織りや編みも微妙に歪んでいたりします。しかもそれはランダムに発生しているように見えます。

これらの構造や素材の混率を把握し、表面加工の質感や、ランダムなパターンで発生する歪みなどを観察して、それぞれの特徴を表現するテクスチャマップを作成していくことでフォトリアルな3DCGが出来上がります。
例えばメタルネスマップとラフネスマップの画像で部分的に光沢を変化させてラメを光らせたり、ハイトマップとオパシティマップを組み合わせて綿ローンのエンブロイダリーレースのような抜けと透け感のある素材を表現したり、パターンのサイズ(小さなタイリングではなく)で、歪みから生じる影やムラ、細かいシワなのどノイズをのせたり、という具合です。

フォトリアルな3DCG制作では、現実の物理法則の再現がポイントになります。そしてそのコツは、日常的に私たちが目にしている物事を、注意深く観察することです。リファレンスと観察力で、3DCGのテクスチャの表現力は格段にアップするのです。

次回は『写真撮影の知識』について解説します。

文責:木内潤一(TFL)


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