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「3DCGをフォトリアルに見せるには?〜モデリング編」

フォトリアルなファッション3DCGを制作するための要素として、前回は『モデリング』『テクスチャ』『写真撮影の知識』という3つが重要だというお話をしました。今回は、そのうちの第1の要素『モデリング』について解説します。

リアリティのある3DCGを制作するときに、形がリアルじゃなきゃいけないなんて、当たり前のことじゃあないか。と、みなさん思われるかも知れません。
では、服を着たアバターのフォトリアルな3DCGを作るときに、そのアバターの骨格がどうなっているか、筋肉がどういう動きをしているか、脂肪のつき方はどうなっているか、きちんと理解しているでしょうか。そもそも人間の関節がどのような曲がり方をするか、どれくらいの可動域を持っているか、人間がポーズをとったとき重心がどこにあるか、を意識しているでしょうか。
また、アバターに着せている服の構造は破綻していないでしょうか。パターンや仕様を把握した上で、素材の重量や、張り、落ち感、シワの寄り方など、現実の服に即した形状になっているでしょうか。

造形の再現は、構造の理解や材質の知識などが重要になってきます。
やはり、出来上がった3DCGが「リアルに見える」かどうかを判断するためにも、制作するモノに対するそれなりの知識はあった方が良いでしょう。ですが、洋服の3DCGを作るためには「多くの服作りの経験をしていないと絶対に不可能だ」という訳ではありません。もちろん、そうした経験が豊富である方が有利であることは間違いないのですが、アパレルでの経験が10年以上なければ服の3DCGは作れない、などということはありません。
では、具体的にフォトリアルな3DCGを作るために必要なもの、重要なことは何でしょうか。
ポイントは、リファレンス(参照見本)です。

想像の中だけでリアルな形状をモデリングするには、相当な知識と経験と技術が必要です。そうした知識や経験値の差を埋めていくコツは、リファレンスを用意して、それをよく観察し、再現していくことです。
実際のモノがどう見えるのか、しっかりとリファレンスに基づいて作り込んでいきましょう。リファレンスには、制作する対象物を構成する素材の物性データも含まれます。例えば、ゴワゴワの麻の生地と、細番手の綿の生地と、レーヨンの生地とでは、同じパターンでも見た目は全く違ってきます。動きのある瞬間を描写する場合では、物理属性の違いによって、生地の広がり、はね方、揺れ方も全然違ってきます。
モデリングの時点でそのような違いをきちんと表現しているかどうかが、仕上がりのリアリティに直接影響してきます。

そして、ここでもうひとつ重要になってくるのが、「本物っぽく見えるように脚色する」ことです。
ここまで散々「リファレンスに基づいて」と言いながら、このタイミングで「脚色する」とは何事か、と怒られてしまいそうですが、実はこの脚色もリアリティを増すためには非常に重要な要素なのです。

なぜなら、制作する側はリファレンスに寄せてリアルを追求しますが、完成した3DCGを見る側は、それがどれくらい本物に近いかを見比べる資料がない場合が多いからです。特に、アパレルに関わるプロではない一般の方が見る場合、比較の対象はそれぞれの中にある「本物のイメージ」です。
例えば似顔絵が「似ている」と感じるのは、本物の特徴を捉え、それを誇張しているからです。つまり、リアリティを破綻させない程度に特徴を誇張し脚色を加えることで、よりわかりやすく3DCGのリアリティが増すのです。そして、この脚色が限度を越えないようにするためにも、リファレンスが手元にあることが重要なのです。

次回は『テクスチャ』について解説します。

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