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シン東洋陶磁@リニューアルした大阪市立東洋陶磁美術館をみっちり堪能

  約2年間の改修工事を経て、リニューアルオープンした大阪市立東洋陶磁美術館の初日4月12日は、偶然、大阪中之島美術館の「福田平八郎展」へ行こうと予定していたので、なんたる偶然!と朝一番にまずこちらへ。

  昔、大先輩にここは見に行くべし、と言われていましたが機会がなく、今回が初訪問。しかし、昨春、東京の泉屋博古館で「特別展 大阪市立東洋陶磁美術館 安宅コレクション名品選101」としてこちらの安宅コレクションがどーんと貸出展示されており、一目でそのコレクションの大ファンに。オープンしたら絶対行こうと心に決めていました。

朝一番、開館前のシン大阪市立東洋陶磁美術館

  たっぷり2時間は余裕を見ましたが、結局3時間の鑑賞に。さすが開館記念だけあり、見たかった安宅コレクションの名品は全部揃っているし、ほとんどの作品に解説+見えない壺の後ろ側や底部分の画像があり、更には全作品写真が撮れる。建物自体も「映え」を意識とありましたが、来場者の口コミやSNSを広報活動に活用していく戦略か?なお、展覧会タイトルの「シン」には以下のような願いが込められているそうです・・・

タイトルの「シン」には、「新」たなミュージアムへと歩み始めること、「真」の美しさとの出会い、「心」がワクワクする鑑賞体験を、という3つの願いを込めています。大阪市立東洋陶磁美術館の原点であり続ける珠玉のコレクションの新たな魅力と価値に出会える、「シン・東洋陶磁」をご体感ください。

展覧会サイトより引用

  ということで、名品揃いで掲載する画像を選ぶのが難しい・・・今回は部屋毎にテーマがあったので各2~3つずつお気に入りを選んでみました。各部屋のリード文は展覧会サイトより引用です。

1 「天下無敵(てんかむてき)-ザ・ベストMOCOコレクション」 
 大阪市立東洋陶磁美術館(MOCO)の原点である安宅コレクションを中心に、天下無敵のMOCOコレクションの中国陶磁と韓国陶磁の精華に出会う。

紫紅釉 盆:安宅氏が執念で古美術商の廣田氏からゲットした秘蔵の名品で「三種の神器」と呼ばれた中国陶磁の1つ。ブルーとパープルが本当に綺麗。透明なもの以外は入れる気が起きない、眺めるためだけにあるようなお盆。
粉青鉄絵 蓮池鳥魚文 俵壺:翡翠に捕えられた魚?に蓮。反対面は蓮と鷺。ちゃんと鷺側の画像つけてくれてありました。翡翠側が表のようで、泉屋博古館でもこっち側しか見てない・・・
青磁彫刻 童女形水滴(左)と童子形水滴(右):左の童女は頭の蓮花の飾りを取って水を入れて壺から注ぐ。右は底に水を入れる穴があるのにこぼれない仕組みで、抱いている鴨から注ぐ。

2 「翡色幽玄(ひしょくゆうげん)-安宅コレクション韓国陶磁」
高麗の人々が「翡色(ひしょく)」と呼び、そのヒスイのごとき輝きをたたえた高麗青磁。中国でも「天下第一」とされたその幽玄の美の世界。

青磁象嵌 六鶴文 陶板:さらっと書いてあるのに花も鶴も繊細。青磁の色も綺麗で飾りたい。青磁に白で絵柄が小さく入っている作品はいくつかありますが、中でもお気に入りです。
青磁陽刻 蓮唐草文 壺:小さな壺に繊細な文様がびっしりと。冴えた翡翠色が銀盆にあるだけで静謐で幽玄な雰囲気が更にましまし。

3 「粉青尚白(ふんせいしょうはく)-安宅コレクション韓国陶磁」
朝鮮時代前期を代表する粉青(ふんせい)は、日本では「三島(みしま)」の名で知られる。白色を尊ぶ儒教的美意識への変容を象徴する斬新な美の世界。

粉青粉引 瓶:長年の使用で生じた染みは「雨漏」と呼ばれ、茶人の間で景色として珍重されたそう。「雨漏」・・・お茶の世界らしい洒落た呼び方。白化粧地の変化も楽しむ心がいいなあ。
粉青鉄絵 魚文 深鉢:大胆な魚柄。韓国陶磁は繊細なものと、こういったお茶目で大胆な柄が同居していて面白い。意外なことに祭器らしい。魚は宮殿での出世を意味するもの。

4 「清廉美白(せいれんびはく)-安宅コレクション韓国陶磁」
儒教思想を背景にした清らかな品格をたたえる朝鮮時代の白磁。見るものを優しく包みこむその清廉な美しさの世界。

青花 草花文 面取瓶:これがこの部屋のテーマど真ん中と思われる清廉な白磁。面取りのさりげない技巧と手すさびのようにさらっと描かれた青花が絶妙なバランス。
鉄砂 龍文 扁壺:韓国陶磁の龍や虎はなぜ全て可愛い系なのか?安宅氏の好みの柄がこれなのか、そもそも韓国陶磁がこういうものなのか、安宅コレクションでファンになった私には不明。
鉄砂 虎鹿文 壺:睫毛バッサバッサで牙がにょーんと剽軽な虎。反対側には鹿がいますが、解説画像でしか確認できず。横から眺めてもぴょーんと伸びた後ろ足しかいつも見えないのが悔しい。

5 「優艶質朴(ゆうえんしつぼく)-李秉昌コレクション韓国陶磁」
日本で韓国の古陶磁と出会った李秉昌博士が日本各地を巡り、半生をかけて築き上げた世界でも有数の個人コレクションにみる優艶と質朴の美の世界。

青磁象嵌 雲鶴文 碗:「優艶」タイプでしょう、これは。実物は青磁の地色がもっと明るいので、とても華やかかつ優雅なお椀です。絵のバランスが素晴らしい。
粉青象嵌 鳥魚文 瓶:鷺につつかれている魚が逃げている図。ユニークな姿の鴨もいるそうですが、どれだかわからず。水中の様子を透視法で描くことで奥行きが。
粉青鉄絵 蓮池魚文 俵壺:前出のと同種でしょうか。俵型の壺。ちょっとひしゃげた造形と勢いのある魚の絵柄が似合ってる。「質朴」タイプでぱっと目を引く壺です。

6 「陶魂無比(とうこんむひ)-日本陶磁コレクション」
東アジア先進の陶磁器やその文化を受容・継承しつつ、土や釉薬、かたちや文様などへの独特の志向やこだわりを見せた日本の陶磁器。各時代の陶磁器に込められた魂の軌跡と美の世界。

鼠志野 草鳥文 額皿:迷いましたが、他の部屋にはない雰囲気があって私が好きなものということで鼠志野を是非。白の薄で秋の気配を描き、渋い鼠地と合わせて日本的なバランス。
色絵 石畳鶴文 大皿(左)と色絵 菱畳地瓢箪文 大皿(右):古九谷様式。今見てもモダンに感じる幾何学模様。鶴や鳳凰などハレの柄。菱形の上に瓢箪デザインを不規則に並べる斬新さ!

7 「陶花爛漫(とうからんまん)-李秉昌コレクション中国陶磁」
国際的視野をもった李秉昌博士が、韓国陶磁の研究に役立てる目的で収集した中国陶磁。新石器時代から宋・元時代までの未完の中国陶磁コレクションの世界。

青白磁 瓜形水注:花弁の形をした蓋や、瓜型の胴にある葉の模様、青みを帯びた白磁色味、注ぎ口のシュッとしたところがお洒落。バリスタ用のポットみたい。北宋の景徳鎮窯。洗練の極み。
白地黒花 唐草文 鉢:こちらは逆に白地に黒で勢いよく大胆に描かれた唐草文様。渦巻きかと思った。こちらは金時代。

8 「喜土愛楽(きどあいらく)-現代陶芸コレクション」
土に様々な種類があるように、陶芸家の表現手段も千差万別である。つくり手の喜怒哀楽、様々な感情が込められた作品との対話のひととき。

右端の指紋みたいなのが気になりました・・・

9 「明器幽遠(めいきゆうえん)-安宅コレクション中国陶磁」
古代中国の墓に見られる副葬専用の器物である「明器」。当時の生活や文化、そして人々の豊かな暮らしへの願いをうかがい知ることができる幽遠なる明器の世界。

加彩 婦女俑:ふくらみを帯びた造形が優美。元々は小鳥が手に止まっていたようで、その囀りに耳を傾けているポーズが愛らしい。グルグル回る展示だが、どの角度で見てもスキがない。
三彩 獅子:唐三彩の色合いやツヤも見事ですが、後足をカミカミしているポーズが秀逸。
木葉天目 茶碗:本物の木の葉(桑)が焼き付けられたお茶碗。最初に見た時に、黒地に金で葉脈が描かれているのかと思って驚いた。縁に金がはめてあり、更に豪華。

10「天青無窮(てんせいむきゅう)-安宅コレクション中国陶磁」
「天青」と形容される独特な青色の釉色、そして洗練された精緻なつくりを特色とする北宋時代の汝窯青磁。自然光のもとで味わう青磁の深遠なる美の世界。
※この部屋は青磁を見るために「自然採光展示」となっています。古来、青磁は「秋の晴れた日の午前10時ごろ、北向きの部屋で障子一枚へだてたほどの日の光で」見ることで、その微妙な釉色がよくわかるそう。何その微妙に具体的な注文!でも、その光を再現させたお部屋で青磁を鑑賞できます。
ただ・・・目で見るには美しい自然光展示なんですが、画像になると色が一段暗く写る(腕前と携帯カメラの問題かもしれない)気がする。本物、もっと良いです!

青磁 水仙盆:これが「天青」と形容される青みを帯びた独特の釉色らしい。トルコブルーのような鮮やかさ。他の青磁は確かにもう少し沼のようなグリーンがかっている。
青磁 鳳凰耳花生:まさに砧青磁。厚く釉薬が重ねられており、とろけるようなつやのある青磁。
国宝 飛青磁 花生:何が残念って、本当は微妙なグリーンがかった明度のある青磁に鉄の飛び文様がもっと美しい絶品。文様が単なる焦げ茶ではなく、輝きが中にある感じ。この花生に活けるお花ってどんなのでしょう?存在感がありすぎて、単品で飾る以外浮かばない凄みがあります。

11「皇帝万歳(こうていばんざい)-安宅コレクション中国陶磁」
世界の「磁都」として1,000年以上の歴史を有する景徳鎮。皇帝の徳を称える象徴でもある、元時代から明時代にかけてつくられた最高級の青花や五彩磁器の華麗なる美の世界。

瑠璃地白花 牡丹文 盤 (「大明宣徳年製」銘):コバルトブルーが一段濃い、他よりも存在感のあるお皿。つやのある釉薬で白で描かれた柄が際立っている。
緑地紅彩 宝相華唐草文 瓢形瓶 (「大明嘉靖年製」銘)黄地青花紅彩 牡丹唐草文 瓢形瓶 (「大明嘉靖年製」銘):2つ並ぶととってもポップ。
黄地紅彩 龍文 壺 (「大明嘉靖年製」銘):「皇帝万歳」コーナーだけあって5本指の龍柄のものが多数あるが、これが色・柄ともに目を引きます。

12「百鼻繚乱(ひゃくびりょうらん)-沖正一郎コレクション鼻煙壺」
粉末状嗅ぎタバコ用の小型容器である鼻煙壺。実用品であり愛玩品でもあった中国鼻煙壺の「百華(鼻)繚乱」の魅力。

一杯ありすぎて・・・小さな容器に色んな世界が詰まった、印籠と根付けコーナー見ている感じ。

13「泥土不滅(でいどふめつ)-現代陶芸コレクション」
泥土からかたちあるものを生み出す。人類の最も根源的な営みの一つであり、時を越えて継承されるその不滅の精神に出会う。

最初、何だかわかりませんでした(笑)。部屋が見つからない!と思ったらここだった。

  と、お気に入りを厳選しましたが、あと2つ、特別扱いで展示されているものがありました。それは、これ。国宝 油滴天目 茶碗。まず、入口からすぐ2階に上がるのですが、すぐこの展示があり、吸い寄せられると、手前にある第1室を見過ごしてしまうという罠が(苦笑)。美術館の人に「こっちからですー」と呼び戻されました・・・

国宝 油滴天目 茶碗:内側だけでなく外側もその美しさを堪能できるように展示されている。静嘉堂の曜変天目も凄いですが、これも宇宙が掌に収まる感じ。白茶が映えるように黒地が尊ばれた。

  もう1つがこの美術館、通称”MOCO”のメインキャラクターに任命されたトラ(MOCOちゃん)が描かれているこちらの壺。韓国陶磁ならではの愛らしさで、陶磁器の絵柄なのに、そのままの造形でアニメキャラクターに匹敵。特別展示室2にあります。

青花 虎鵲文 壺:にょろーんと長い身体のトラ。ニッコリして愛想がいい。
青花 虎鵲文 壺:反対側にはカササギ。幸せを呼ぶらしい。
青花 虎鵲文 壺:丸くなっている姿はネコみたい?・・・と解説にも書かれています

  最後に、ウキウキとショップに寄ったら、何とこのMOCOちゃんグッズもハガキもないという衝撃が。お店の人に「MOCOちゃんは何かないのでしょうか。」と聞きましたが、図録だけと言われてしまった。まだ開発中なのか?市立だけに商売気が少ない?最近は展覧会グッズが妙に充実しているから意外でした。

  ところで、泉屋博古館で開催された「安宅コレクション名品選101」では、安宅氏の逸話というか裏話がちょこちょこ解説されていて面白かった。お気に入りで寝室に飾っていた、とか、どうやって入手した、とか。経営破綻した安宅産業の創業家の個人コレクションだった話を、市立の美術館が積極的に話すのもちょっと憚られそうだからやむなしかなあ。

  しかし、安宅コレクションを散逸させないために大阪の財界人が手を尽くしたというのは凄い。MOCOのなんて住友グループ21社が総額152億円を寄附する形でまるっとコレクションを大阪市の美術館に・・・お陰で楽しませてもらってます。感謝!

MOCOのすぐ近くにある大阪市役所のツツジが見事でした。リニューアルお疲れ様でした!


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