マガジンのカバー画像

偉大なるサイレント映画の世界

2
真に偉大と呼びうる映画は、サイレント映画だ。 その偉大さに少しでも接近したいという試み。そして少しでも発見したいという贅沢な望み。
運営しているクリエイター

記事一覧

あなたはGeorg af Klerckerを知っているか?

あなたはGeorg af Klerckerを知っているか?

 映画は、時に、思いがけぬ遭遇を組織する。それは、スウェーデンという北欧の一国におけるサイレント映画の作家といえば、やがて合衆国に渡ることにもなるマウリッツ・スティッレル Mauritz Stiller とヴィクトル・シェストレム Victor Sjöström あたりを知っておきさえすればよかろうと高をくくっている(とはいえ、彼らの作品もじゅうぶんに視界に収めているとはとてもいえない)私を深く恥

もっとみる
画面ごとに「これが映画だ」と呟くことしかできない恐るべき映画について――ルイ・フイヤード監督『ティー=ミン』(Thi-Minh,1918-19)

画面ごとに「これが映画だ」と呟くことしかできない恐るべき映画について――ルイ・フイヤード監督『ティー=ミン』(Thi-Minh,1918-19)

 映画とは『ティー=ミン』(Thi-Minh,1918-19)のことである。かような断言をふと呟かせてしまう恐るべき作品というのが存在する。ルイ・フイヤードLouis Feuilladeが第一次世界大戦の末期に撮り上げた『ティー=ミン』は、そのような作品である。

 フイヤードは、これまですでに、映画史上の傑作というべき、全5部作の『ファントマ』(Fantômas,1913-14)、『レ・ヴァンピ

もっとみる