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2020年4月、どれほどの会社が雇用危機に直面したか〜HRテックベンチャー月間60万PVの記録〜

【この記事は2020年12月に投稿したオープン社内報を、2022年11月に再掲したものです】

株式会社Flucleでコンテンツマーケティングを担当している本田です。

2020年4月、自社メディアで思いもよらぬ結果が出ました。
それは「サイト合計で月間60万PV」という数字です。

労務管理というニッチな分野の、バズる要素ゼロのメディアにおいて、ちょっとしたエポックメイキング的なできごとです。しかしこれは完全に棚ぼたな結果で、狙ったものではありませんでした。

背景は新型コロナです。思いもよらぬ感染症の流行と社会的騒ぎは「雇用」に大きな波紋を投じ、小さなHRテックベンチャーのコラム記事に想像以上のアクセスを集めました。

運用3サイトのPVバランスは、1:8:1

株式会社Flucleで運用しているメディアは、合計3本。

①コーポレートサイト:https://flucle.co.jp/
②サービスサイト:https://hrbase.jp/
③人事労務のQAサイト:https://solutions.hrbase.jp/

上記3サイトの、2020年の合計PVです。60万の山がスゴイ!

良い成績を上げたのは、②のサービスサイトです。年間通じて、合計PVの8割はサービスサイトのコラムが叩き出しています。

ここからは、サービスサイトのPV結果と、その月のコンテンツマーケ班の動きについて簡単に記していこうと思います。


2020年1月(月間PV:34,030)

サービスサイトの箱がようやく形になるも、どのように構築し、どうマーケティング的な成果を出すべきか、試行錯誤の時期でした。しかしこの時期、人事労務のコンテンツは、根を詰めて作り込めば滞在時間がどんどん伸びることを実感します。平均ページ滞在時間は6:02、これを維持しようと決めた月でもありました。

人事労務コンテンツの作成には予想以上の時間と手間がかかります。労務の素人やライターだけでは、絶対にいい記事が生み出せないのは分かっていましたから、採算度外視、人件費無視で、社労士や現場をよく知るメンバーと顔を突き合わせ、クオリティ重視で作成していました。

2020年2月(月間PV:48,676)

月間PVがじわじわと48000まで伸び、コンテンツチームで「もうすぐ5万PVだね」「10万PVとか、夢だね〜」という、ポジティブな話題が出始めた時期です。「新型コロナ」という脅威が少しづつ生活を浸潤し始めるも、まだまだ自分事として捉えられていなかったと記憶しています。

2020年2月は大きなサービスリニューアルがあり、記事作成よりもサイト構築や広報に手を取られ、記事数は多くはありませんでした。

2020年3月(月間PV:114,067)

「10万PV達成したら美味しいビールを飲もう」「ボーナス欲しいよね」なんて夢を語った翌月、PVはあっさりと10万を超えてしまいます。

原因は新型コロナです。遠い中国の話だったウイルスは、一気に日本を混乱に巻き込み、社会全体が危機感と高揚感に包まれました。

未知のウイルスというパンデミック映画のような状況を目の当たりにしながら、私たちは通常のサービス提供をいったん横に置き、新型コロナ流行下の雇用対策情報を発信し始めました。

誰に求められたわけではありません。とにかく雇用に関するネガティブなニュースが多かった。社会保険労務士でもある弊社代表の三田の元には、毎日多くの相談事が舞い込んでいました。しかし誰にも正しい答えは分かりません。

雇用調整助成金の相談窓口に電話はつながらず、厚生労働省のサイトに掲載される情報は毎日変わり、随時発表される助成金のコロナ特例もどの情報が正しいか分からず、雇用に関する制度の変更が随時行われ…、現場はパニックです。

株式会社Flucleも3月末からは全社リモートワークになりましたが、コンテンツチームは何とか最新情報を出そうと、厚生労働省のサイトにかじりつき、つながらない助成金窓口に電話をかけ続け、記事公開後も毎日のように情報更新を行いました。

・2020年3月に公開した記事例
(公開当時と現在では情報が変わっている可能性があります)
新型コロナ対策:社員を休ませるときの、休業手当の基準【休業命令書Wordファイル付】
新型コロナ対策:雇用調整助成金の特例措置、現在の情報まとめ 社労士監修

通常時はまったく世の興味を引かないような、堅く専門的なコラムです。多くの会社が雇用の課題に直面していることを、Googleアナリティクスを通じて感じるなんて、思ってもみませんでした。

2020年4月(月間PV:539,677)

「いま困っている会社」に少しでも正しい情報を届けるため、4月も記事をつくり続けました。とはいえ量産はできません。数人がかりで、数日に1本がやっとです。

4月に入ると、3月に公開した記事がどんどん検索で引っかかり始めます。
広告費は一切使っていません。

ほんの数カ月前まで、3〜4万PVで小躍りしていたのが嘘のようです。通常時ならGoogleアナリティクスをつまみに旨い酒が飲めるほどの嬉しい結果ですが、当時はそんなことはいっていられませんでした。

4月の混乱の中、弊社代表と、社会保険労務士の有志が集まり、「コロナから会社と従業員を守るプロジェクト」を発足させます。

コロナから会社と従業員を守るプロジェクト

全国の社労士が集まり、手弁当で正しい情報を届ける活動をしている…ということで、プレスリリースの反響もよく、おかげさまで多くのメディアから連絡をいただきます。コンテンツをつくりながら、広報対応にも奔走していた時期でした。このような活動の後押しもあり、サイトのPVはぐんぐん伸び続けました。

ちなみに4月はもちろんのこと、いまだにクリックされ続け、年間PVトップをキープしているのは、4月2日に公開したこの記事です。通常時には検索ボリュームの少ない休業手当、賃金、計算というキーワードが4月の生々しい混乱を物語っています。

【計算用Excelシート付】休業手当の計算に必要な、平均賃金の出し方 社労士監修

以下は2020年通算のPVですが、2位以下を大きく引き離す結果となっています。計算用Excelシートを添付したのがよかったのでしょうか。

また、メールマガジンの登録も伸びました。4月だけで、記事に貼ってあるバナーからメルマガ登録フォームは245回送信されています。ニッチな領域の小さな会社のメルマガです。それに何の施策を取らずとも「月間245人も登録してくれた」。

コンテンツマーケ担当者なら、この驚きを分かっていただけるでしょう。

2020年5月(月間PV:259,536)

GWが終わり、ほんの少しだけ自粛解禁ムードが出てきた5月。あっという間にPVが落ちていきます。

5月は3記事公開していますが、うち2記事は新型コロナ以外のテーマです。

2020年6月(月間PV:109,081)

数字だけ見ると、面白いように転がり落ちていきます。

社内では、新型コロナや雇用調整助成金の情報発信に追われることが減り、既存サービスHRbaseに使える時間がやっと戻ってきました。

2020年7月・8月(月間PV:81,525→60,512)

お叱りを受けそうですが、7月8月は記事公開ができませんでした。コンテンツマーケ担当が、時間のほとんどをサービスリニューアルに費やしていたからです。せっかく上がったドメインパワーをだいぶ無駄にした時期です。

このとき、歯を食いしばってでも、コストをかけて外注してでも、コンスタントに記事を出していたら…と、12月になって悔やんでいます。

2020年9月・10月(月間PV:61,071→54,002)

9月10月ともに、1本ずつしか公開できませんでした。やばい…。何をしていたのでしょうか…。

いいわけさせてください。新サービスを出すことが決まり、「既存サイトからのリード獲得施策の見直し」が議題に上がりました。つまり、ここまで育てたコンテンツたちを見捨てた、新しい戦略が必要になる可能性が生まれたということです。

メディアを必死に育ててきたのに「もう頑張らなくていいよ」といわれた気がして、やるせない気持ちでいっぱいでした。手も気持ちも、新サービスに向いてしまい、メディア運用に少し背を背けた秋でした。

2020年11月(月間PV:42,254)

11月、落ちるところまで落ちました。これまた既存サービスと新サービスの対応に追われ、コラム記事の優先順位は一気に下落。メディアは本当に手間がかかる子どもみたいで、ちょっと目を離すをあっという間にグレてしまうのです。

しかしコンテンツマーケチーム、ここから奮起です。このサービスサイトを閉じる必要はない、と判断し、新サービスリリース以降の活用に向けたコンテンツ戦略を組み直し、フレッシュな記事を定期的に公開できる体制の構築に奔走します。おかげでとても優秀なコンテンツメーカー複数名に加わっていただくことができ、少しづつ記事の編集体制がととのってきました。

2020年12月(月間PV:45,275)

12月、横ばいです。

しかし、よい兆しが見え始めています。まず、12月はコラムを5本公開できたこと。

そして、サービスサイト以外のメディアで、芽が出始めていることです。
以下は、直近30日の「運用3サイト合計」のPVの伸びのグラフです。サービスサイトのPVが横ばいなのに、全体では少しづつ上がってきています。

それは、3本目のメディア「HRbase Solutions」の頑張りのおかげ。「一番わかりやすい人事労務のQAサイト」として、地道に運用をしてきたサイトが、あまり手をかけなくてもジワジワと結果を出し始めてくれています。

サイトはこちら|HRbase Solutions

以下は「HRbase Solutions」単体の、ここ90日間の成果です。オーガニック検索で、約2倍にまで伸びています。

1日たったの1000PV前後の話ですから、大手メディアさんからするとゴマ粒くらいの規模感でしょうが、運用者にとっては涙ちょちょぎれるほどに嬉しいグラフです。

「HRbase Solutions」は読み物ではなく手続きのQAサイトですから、SEOも意識せず、ただ愚直にひたすらに「正しい手続き」についてまとめています。一般の方には何のこっちゃというサイトですが、人件費を一番多くかけている記事たちです。頑張れ!頑張れ、HRbase Solutions!

私だってもっと派手な仕事がしたい

コンテンツマーケを担当する以上、華々しい結果が欲しい。バズる記事や、人気のメディアを世に出してみたい。面白いよね!っていって欲しい。

しかし労務管理という分野で求められるのは、「分かりやすく正しい情報」、これ以上でも、以下でもありません。だからコンテンツチームは、ブツブツと口の中で呪文のような労務用語をつぶやきながら、もくもくと地味でお堅い記事に向き合います。

その価値は、常に5分以上をキープしているページ滞在時間に表れています。これは今後もキープしたい指標です。

私たちのサイトのポリシーは「たどり着いてくれた読者の『どうしたらいい?』を、サイト内で解決してもらうこと」。

労務管理を扱うメディアのすべての価値はここに帰結する。そう信じて、毎日記事を作成しています。

アフターコロナの価値ある記事作成を

2020年4月の段階では、60万PVという結果を手放しで喜ぶわけにはいきませんでした。私たちの記事が多く読まれるということは、困っている人が多いということだからです。

また、コンバージョンという目で見ても、散々でした。

しかしこの60万PVには、「これほど多くの会社が、困惑し、悩み、手を尽くし、藁をもすがる思いで、雇用を守ろうとしていた」という事実が詰まっています。

毎日アナリティクスを確認し、次々届く「資料ダウンロードのお知らせ」「メルマガ登録のお知らせ」のアラートに驚き、あり得ないほどにバタバタしている社会保険労務士たちを眺めながら、日に幾度も記事内の微修正を行った、小さな会社のコンテンツマーケ担当者としての、2020年の記録でした。

2021年は、もっとポジティブなニュースで記事が書けますように。
そして、会社と社員がもっとうまく手を組み、すべての会社でアフターコロナを乗り切る体制がつくれますように。
コンテンツチームは、2021年も価値ある記事作成に、力を注ぎます。


お読みいただいた社外の皆さま、ありがとうございました。現在株式会社Flucleでは新メンバーを募集しております。どうぞ、以下ページより会社情報をご覧ください。

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