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『運試し擬人化』 #毎週ショートショートnote【大晦日編】

 毎年、大晦日が近づくにつれ俺は顔色が悪くなる。

普段は色白な外見や芯が強い性格を褒められるのに、この時期の俺は「ぼそぼそ言ってすぐキレるし、なんかイマイチ」と文句ばかり言われる。

そんなある日
「今年は少し趣向を凝らしてみるか」
「いいわね、運試しっぽくて」
という声が降ってきた。

一体何が起きるんだ?


「そういえば今年の蕎麦は一味違うらしいよ」
こたつに置いた蕎麦の丼を前に女は言う。

「どこが?」
と向かいに座る男。

「食べてみてからのお楽しみ!」
「相変わらずもそもそしてるな」
「うどん屋の作る蕎麦だからね」
「あれ?一本だけうどんが入ってる」
「それが当たりよ」
「どういうこと?」
「今年は蕎麦の中にランダムにうどんが一本入ってて、それに巡り合えた人はいい年が迎えられるんだって」
「へえ!ラッキー!」

 丼の中で出汁に浸された蕎麦風の俺達に紛れた一本だけのうどん。そいつだけいつもと同じ外見で幸運を呼ぶうどんと呼ばれているなんて…

ずるくね?


 今年最後のお題ですね。私はnoteを始めてまだ一か月も経ってない若輩者なんですが、『毎週ショートショートnote』のお題がとても楽しみなので、これからも引き続き、たくさん書かせていただこうと思ってます!

 さて、今回のお題は「運試し擬人化」ということで……そのまま使わず、地元の名産「うどん」「運試し」を掛けて(ついでに出汁もかけて?)「う(ど)ん試し」として書いてみました。でも食べ物を擬人化するのって少し矛盾がありますよね。食べたらいなくなる存在だから記憶が受け継がれることはたぶんない……でもそこは大目に見てください~🙏🙏

 ちなみに出身地のうどん屋さんは年末のみ、蕎麦も持ち帰り用に販売してくれるのですが(大抵のうどん屋さんでは、年がら年中持ち帰りのうどん玉を販売しており、なんなら出汁やネギ、生姜もつけてくれます)、蕎麦粉の割合が半々、もしくは七、八割方うどんで、太さもほぼうどんのまんまなんですよ。だから、年越しに食べるのもうどんと蕎麦の二種類を用意して、ひとつの丼にうどんと蕎麦の両方を入れて食べる猛者もいます(笑)そんなローカルネタを練り込んでみました。(今の時期はうどんを踏み踏みするバイトもあるんだよ!)


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