白雨詩社

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最近の記事

霧の切れ間を

近所だけど初めてのエリアは、遠出の欲求を満たしてくれる。 ほんとうはでもほんとうにどこか遠くへ行きたい。 カフェのダウンライトのもとで本を読んでいたら、あ、昔この光のもとでこうして本を読んだな、という異国で生活してた頃の時間を思い出した。 日本に長く居すぎたのかもしれないな、と思った。 そろそろ出るときなのかもしれないな。 こんなにもいろんなことが行き詰って、こんなにもいろんなことが痛い。転地療法もいいのかもしれないよ? 海の表層よりも下の方の潮流は「私は南に向か

    • いちにちの始まり

      今朝の起き抜け。今日という1日に直面する気力がないように感じた。 そのときにふいっと、アレクサンダー・テクニークの先生、トミーさんから教わった、「起き抜けにまっすぐ”いつもの自分の人生/生活のストーリー”に入っていくんでなく、一瞬でいいから、こうして命を受けて今ここにいることを思ってみて」というのが思い出されてきた。 今日1日に直面する気力が出なかったのは、今日1日がこんな1日になるだろとわたしに告げる「いつもの人生/生活のストーリー」があるから。夢ではまったく違う世界で

      • ”現実”に閉じ込められてしまわないために

        「愛している。」 朝、起きぬけのまどろむ意識の中で聞こえた。自分の声として聞こえた。でもわたしは生きていてこのかた、愛っていうのがよくわからなくて「愛している」という言葉をこんなふうに言えたためしがない。だからこれは自分の声に聞こえたけど自分の声じゃないな、と感じた。 自分のじゃない声が、自分の声色で意識の中で聞こえてくること。これは、直観的異種間コミュニケーションを学ぶ過程で、実地で学んだこと。正確には、直観的異種間コミュニケーションを学ぶ過程で実地で確認できたこと。

        • 明けました。おめでたい……。

          おとといの夕食の鮭のロール白菜が、はちゃめちゃにおいしかった。どうもその日の午後あたりから調子が上向いてきてたみたい。 翌朝、すなわち昨日の朝の、目覚めの感触もいつもと違った。重たくどんよりした感覚がなくなってた。目が覚めてから起き上がるまでにかかった時間はたぶん前日と同じくらいだったけれど、それは重たさとどんよりさがないことの嬉しさと幸せをつくづく噛みしめてたからでした。 「ああ、明けたんだな」と思った。こんなにはっきりと違いを自覚したのは始めてかも。 今回不調に陥っ

        霧の切れ間を

          新聞白旗9号:暮れなずんでいる

          自分のやってきた仕事が機械で代用可能だ、と言われているかのように感じるシーンが、ここ数年で増えてきました。 翻訳・通訳の仕事に携わって30年以上になるけれど、AI文字起こしやAI翻訳の精度が年々上がってきているのも実感する。本当にそのうち機械が私のかわりにこの仕事をするようになるんだろうなあ、と感じます。 ただ、日本語・英語間の通訳・翻訳については(それ以外の言語については明るくないので何とも言えないのだけれど)、機械翻訳の精度は向上したとはいってもまだ実用レベルには至っ

          新聞白旗9号:暮れなずんでいる

          静かに満たされる

          見ているだけで、とか、聴いているだけで、静かに満たされるってあります。 子どもが一心に何かに取り組んでいるところとか。 冬の木についたまんまるの実の連なるさまとか。 小さな野鳥が羽根をはばたかせる音とか。 いわゆるアートと呼ばれるものに接したときも、そういうときがあるけれど、満たされ感よりも刺激や興奮のほうが大きいときもあったり。 今夜は本当に久しぶりに、イサドラ・ダンカン舞踊のオンラインクラスに参加できて、振り付け作品を1つ、みんなと踊ったのだけれど、その後で同じ

          静かに満たされる

          新聞白旗8号:甘々王国で

          精神的にとてつもなくしんどくなって、朝から小さな家出をして、海辺のデニーズに入って、キャラメルハニーパンケーキを注文したのです。 あまり食欲もなかったし、「身体に合っていない」とかかりつけの先生にも言われているから普段小麦粉は控えているし、そもそもデニーズに入ること自体が年に1度あるかないか、なのに。 それなのに、デニーズで、キャラメルハニーパンケーキ。 何の期待もなしに食べたのです。むしろ自分をいじめるような感じで食べ始めたかもしれない。 それが……、ガツンと甘いキ

          新聞白旗8号:甘々王国で

          センチメンタルな5センチメートル

          センチメンタルな5センチメートル 戻れないもどかしさ 残るのは名残りだけ ただ、名前だけ残ってる 移ろいやすい、やわらかい、虚ろ 眼の裏側でたどっていく たどって、くるんで、それから離して 繰り返し手繰りよせる たぐりよせなくても、もうあるのにね もう ある あるとき 気づく それは、40秒ないし 40時間あと 神の道に上がった砂が 着地するまでの タイムラグ 時間の絨毯 ビロードの空に広げられてる 砂をなおすのは 重力なのか 神の道が張り巡らされた この地

          センチメンタルな5センチメートル

          夜見る夢が、だんだん育っていっているお話

          コロナの時代になって自室からオンライン通訳の仕事をすることが増えたせいなのか、「自分の家や部屋に他者が入ってくる」ことがテーマになっている夢をずっと続けて見ています。 夢の中の自室は、昔住んでた家だったり、寮の一室だったり、夢の中で引っ越した先の家だったり、旅先で泊まる場所だったりいろいろ。 いずれにしても、他者が勝手に入ってきていて、そのために不安やストレスにさいなまれていました。 「ドアに内側から鍵をかけたけど、ドアの手前のスペースが共有スペースとつながっていたから

          夜見る夢が、だんだん育っていっているお話

          【にゃんこちゃんとぱんこちゃんのおはなし】

          にゃんこちゃんとわんこちゃんが「にゃんこちゃん」「わんこちゃん」とよばれているのを聞いて、ぱんこちゃんは(わたしはぱんこちゃんだ)と思いながら、食品だなの中でしずかにしていました。 「にゃんこちゃん、おはよう」 「にゃんこちゃん、ごはんだよ」 「にゃんこちゃん、おいでー」 にゃんこちゃんがおうちの人によばれるたびに、食品だなの中のぱんこちゃんは、心の中で「にゃんこちゃん」のところを「ぱんこちゃん」におきかえてみるのでした。 (ぱんこちゃん、おはよう) (ぱんこちゃん、ご

          【にゃんこちゃんとぱんこちゃんのおはなし】

          翼を切り離しながら、飛ぶ

          切り離しながら、 切り離しながら、 翼を切り離しながら 飛ぶ *** 大昔に書いたフレーズが、降ってきた今朝でした。 チャレンジなことを2日連続でやった翌日、例のごとくノビていました。なにかリカバリーのためになるようなことをしなければ、と思うのに心も体もあまり動かない。 休むしかないと思ってゆっくりしたのですけども。 どうもこういうときにゆっくりしてしまうと、チャレンジなことをしてたときのことへの”反省”が始まってしまう、反省癖の激しいわたくし。 反省を阻止す

          翼を切り離しながら、飛ぶ

          新聞白旗7号:白旗を上げてついて行く

          おとといだったか、なにか面接試験みたいなもの(?)を受けていて「好きな建築家は誰か」と聞かれ、「エットレ・ソットサス」と答えている夢を見ました。 朝目覚めて「すごく久しぶりに思い出したなあこの名前」と思いました。 ソットサスのことを自分は全然多くは知りません。どうして持っているのかもいつから持っているのかも思い出せない、ソットサスの写真集を1冊持っているだけ。そこに映っている作品と写真の質感だけが、私の知っているソットサスのすべてです。 △「とても美しいベッドのデザイン

          新聞白旗7号:白旗を上げてついて行く

          壁画とクラブハウスと感覚器官と:「伝えあう」「わかりあう」流儀の文化的・個人的多様性のこと

          昨日の新聞白旗(6号)で、コミュニケーションの中での「言葉にならないもの」について、つたなすぎる文章を書きました(なんとなく。。またしても偏りすぎた文章を書いてしまった気がしてどうしようーと思ってたのです)が、そしたら今日、これが目に入ってきました。 何気なく開いた整体協会の会報誌『月刊全生』の1ページ目に。 「眼は見る道具である しかし目があるが為に見えないことは、見ることよりさらに多い。 口は言葉を言うが、その為に言えない真実を見失う。」 野口晴哉さんの言葉です。

          壁画とクラブハウスと感覚器官と:「伝えあう」「わかりあう」流儀の文化的・個人的多様性のこと

          新聞白旗6号:新しいあきらめ感

          伝えたいことがたくさんあるのに、どこから話し始めていいかわからない。というか、これを伝えるには、そのまえにこれを伝えなくちゃで、それを伝えていくとなると必然的にこの話になるわけで。。。でも誤解してほしくないからこの話もしなきゃで。。などとつらつら考えていると文字通り「果てしなさ」が自分の中にやってきて、「ああ、もういいや。やっぱり何も言わずにいよう」ってなる。 そのような状況がここしばらく続いています。 面倒くさがらずに伝えよう、と思うのか、やっぱりそこまでわかりあおうと

          新聞白旗6号:新しいあきらめ感

          新聞白旗5号:「どうしたらいいですか!」

          ここしばらく、意欲がゼロでした。というかマイナスでした。何も生産的なことがやれないし、返事しなければいけないメールも返事できない。社会人として廃人化していました。急ぎの仕事はないので、まあそこまでヒト迷惑にはなってない(と思う)のですが。 情けないという想いばかり。しんどいのに、心の動きが致命的に鈍くて、自分ではどうしようもできなかった。 で、今朝、ちょっと体調をくずした相方に「(ホメオパシーの)レメディーを飲むといいよ」と声をかけ、相方がレメディーの箱を開けたときに、「

          新聞白旗5号:「どうしたらいいですか!」

          白豹

          ちょうど2年前の今日、ブログのほうに書いたもの。思い出されてきたので。。 〈白豹〉 薄氷 の 月は 続き 木々を 聞き 白豹 は 罪を 包み 過去を 囲う 檻を 折る 昼が 翻る 海は 産み 柵を 裂く 服は 吹雪く 時が 届き 鏡は 屈み 屑が 崩れだす  橋の 端の 竹を 叩け 風を かざせ 今だ 今だ 創作の励みになりますので、ご支援いただけたらうれしいです😊↓