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理学療法士の仕事について考える

先日は、弊社主催の座談会を開催しました。
コロナ禍のため、少人数に限定しての開催でしたが、職場の違う理学療法士の先生をお招きして密度の濃い話を聞くことができました。
弊社の実施している理学療法についての話をしたかったので、参加した皆さん共通する要素は、「臨床を共有したことのある方」。
決して、私自身の臨床感を肯定してもらいたいからではないのですが、理学療法士間では、同じワードを使っても違うことを表わしていることがあるのが現状です。例えば、筋緊張が亢進しているとはいっても、どのような現象を表現しているのか。「硬い。動きにくい。」といっても何を表現しているのか定かでないことが多いです。だってそうですよ、臨床では、理学療法を実施する上で、客観的には表わせない、セラピストの主観で現象を表現することが多いのですから。基本中の基本、MMTでもそうです。中等度の抵抗に抵抗することができる。完全に施術者の主観ですから。

理学療法を処方する

 現在、弊社が業務委託契約を頂いているクリニックでは、セラピストは治療ベッド1台、しっかり徒手にてアプローチすることのできる環境にあります。私自身このスタイルにこだわるのは、患者様の身体の状態をシンプルに観察するため。そのために目で見て、手で触って、話を聞いて…
そうしないと患者様の状態を把握することはできないと思うので。
過去に経験したクリニックは、福岡の中心部のビルの中、ワンフロアにあるクリニック。施設の敷地面積の問題もあり、セラピストは治療ベッド1台分のスペースしかなく、その物理的制限下で患者様と向き合うことを強いられました。そこで学んだことは、「身体を触れること・話をすることで得る情報量を多くすること。」当然、動きを確認することができればいいのですが、そのスペースは非常に少ない。アプローチの効果、患者さまの満足度を上げるために、触診・問診の技術を上げるしかありません。さらに併設の疾病予防施設・スポーツ現場を使うことで、動作とのすり合わせを行ってきました。
理学療法を処方する上で、毎日でも変化する身体を観察することがどれだけ重要なことか。そういう思いで、「触る時間はあった方がいい」と感じます。もちろん、患者様の満足度を上げるという意味でもあります。しっかり身体を把握できているスポーツ選手には、触ることだけでなく、運動指導を行う上で、その選手の身体特徴をつかむことが必要になりますから。身体の質をどの時点で把握できるか、精密にではなく、理学療法を処方するために把握できるかがポイントのように考えています。トップダウンで評価して処方を行うので、如何に速く、如何に優先順位を整理するかが必要になります。決して全てを把握しなくてもいいですよね。
時間、経費などを度外視すれば、いつまでも全て把握するためにみていたいところ。しかし医療機関内でのリハビリでそんなことをしていたら、倒産してしまいます。
「動作の質なんて考える余裕はないですよ。とにかく立たせる。歩かせる。」
「同じような外来クリニックですが、マッサージしてROMして帰ってもらう。流れ作業でそんなに考えることもないです。」
理学療法士が働く現場には、そんな現状があります。その与えられた時間の中で理学療法を処方するか、考えずにルーティーンを処方するかは大きな違いです。もちろん、患者さまにとっても。セラピストにとっても。

リハビリ室の現状


理学療法を提供する施設としては様々あります。大学病院のように術後早期に退院してしまう施設。比較的アクティブに活動する患者さまが多い整形外科クリニック。ご高齢で医療保険領域から介護保険サービスに移行しようとする外科・内科のリハビリ室。地域性もあり、その施設の地域的な役割、その中でのリハ室の役割も違います。リハビリ室のシステムもそうです。患者様を次から次に施術していく。以前は車椅子でリハビリ室に来室した患者さまの上下肢を「拘縮予防」と称してROMエクササイズをしている光景をよく見かけました。ベッドサイドでもそうですね。その頃バリバリ働かれていた理学療法士の先生の表現を借りると、「車いすの方を並べて、次から次にROMをしていった。流れ作業のように。」と。昔は理学療法士が1日にとれる単位数も制限がなかった時代。病院側もできるだけ、診療点数を算定していた時代です。
 話が脱線しましたが、刺激を受けることが少ない入院生活では、1日1回病棟からリハビリ室に降りてきて、手足を動かしながら他愛もない話をすることも、生活の質を上げることに一役かっているのかもしれません。
リハビリ室へ来室できる患者様には、腹筋、プーリー、キャスターボードなどなど。自主トレメニューを作成・提供して、実施してもらい、5分くらいのマッサージにROMエクササイズ。そんなリハビリ室も多々あります。
リハビリ室に来室される方で、ここで介助してもらわないと歩行できない方もいる。ここでスタッフと話をすることを日常の楽しみにしている方もいる。「ここにきて楽しい。」と思ってもらい、家で動き機会を増やすことができれば、それは有効な社会貢献だと思います。
フィジカル的な要素の改善ではなく、心も身体もアクティブな機会を提供することも地域のリハビリ室の役割なのかもしれませんね。
一方外来クリニックでは、痛みをとる・可動域を上げることでバタバタしている。
患者様に「ここ、指圧はしないの?」と言われることも。利用される方のよっては、リハビリ=マッサージと認識している方もいらっしゃいます。按摩・マッサージ師という国家資格もあります。痛い・張っている部位を押さえ、マッサージして「気持ちいい」そのようなセラピーは…外来では、日常生活を自立されている患者さまを対象にすることが多いので、何かを介助するということは必要でない。さらにスポーツをやっている学生からは、「リハビリにいっても治らないやろ」という声も聞きます。なぜそのようなことになっているのか。怪我の原因が理学療法の対象でないのか。それとも対象とする原因があるのに見逃しているのか。原因ははっきりしているがアプローチ方法に問題があるのか。

大学で教授をされているセラピストの友人が「徒手にこだわるセラピストは何か??運動療法でアプローチするのが理学療法士!」と言われたことがあります。確かにその通りだと思うのです。

国家資格と同じように按摩・マッサージ師と理学療法士は違う。そういうアプローチをしたいものです。

もし関節の動きで介助(徒手)しないと動かない要素があるとすれば、日常生活自立されている患者様でもクリニックに来ることも有意義なことになるでしょう。関節徒手療法のセミナーへ参加すると、方法を紹介する内容が多い。そんな声をよく聞きます。また参加者も、それができるようになったことで、すごく理学療法士としてのスキルが上がったような勘違いに陥ります。


患者様のために、理学療法士のために


この項では結論から話そうと思います。
私が考えていること。「理学療法士が患者様にしてあげているわけではなく、理学療法を業となす上で、考える要素を提供して頂いている。その理学療法を通じて患者様・選手と共に作り上げる目標がある」ということ。

得てして、理学療法士は自身が持っている情報・技術を提供することで完結していることが多いように感じます。
患者様・選手から得た情報を基に、理学療法を作っていく。目標とするアクティビティのために理学療法処方を行うことが、自身の理学療法を発展させる一助になると思います。なので、「方法」ではなく得た情報から解釈する「思考力」が理学療法なのかもしれないです。

日常の仕事をバタバタこなしていく中で、何かスキルアップをする機会があるだろうか。
各患者様・選手たちは、フィジカル要素・社会的背景も違う。どのようにアプローチしていけばいいか、
ご高齢の方で、立ち上がることが意味のあること。立ち上がり方がどうこうではなく、立ち上がることが必要なのです。そういう方もいるでしょう。
介護の領域では、寝たきりで拘縮を予防するだけの目的で、ベッドサイドリハを行うケースもある。その先に、「おむつ交換をしやすいように」「寝返り介助をしやすいように」と全介助ではあるが、日常のアクティビティにつなげることができないか。
スポーツをする上で、より質の高い動作を習得したい。フィジカル的な要素を解析して運動療法を処方する。そういう方もいると思います。
その方の身体能力を瞬時に評価し、運動療法を処方する。そんなスキルを身に付けることができれば、決して、ベッドに横になり、みっちり評価し、徒手的に身体を動かさなくてもできることがあります。ただ…理学療法士を取り巻く環境が、バタバタ忙しく仕事をする中で、しっかり考察をする機会が減っている。若い理学療法士であれば、積み上げてきたものがないので、その場を取り繕うようなアプローチとなってしまいがち。日常を雑に過ごすと専門性を欠如する結果となりかねない。

整形で「動作の質にこだわるアプローチができるのは稀」という意見もあるが、活動性に差はあるものの、“動き作り”につながる活動をできれば、理学療法士としての経験を積むことができそうです。

考えて適切に理学療法を処方できればいいが、現状はそうはいかない。
考える癖をつけておくこと。将来のスキル成熟度に直結する。
「考えるスキル」を身に付ける。それができる“臨床力アップ塾”
徒手で治療をするだけではなく、徒手から動作分析までしっかりスキルアップできますよ!
今がチャンス!

https://fisico.jp/2019/09/28/%e8%87%a8%e5%ba%8a%e5%8a%9b%e3%82%a2%e3%83%83%e3%83%97%e5%a1%be/


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