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レントゲン画像から…

理学療法士をしています。起業して一人親方ですが、業務委託で関わりを持たせて頂いているクリニックがあります。臨床について話ができる相手がいると、自身の頭の中も整理できる。仲間って素晴らしいですね!その話の内容を書いてみます。

凹凸の法則

ことの発端は、「脛骨の前方滑り」。
何のこと?そう、なんのことだか…
手術後で膝の伸展が出ていない方がいる。その時に、徒手でどのように操作するという議論が始まり、言葉の使い方で議論が右往左往した話です。
まずは凹凸の法則の話。

関節包内で自動的な運動が行われる際、中枢側の凸の関節面が固定されていて、末梢側の凹の関節面が動くときは滑りと転がりは同じ方向に動く(中手指節関節の運動など)。これを凹の 法則という。逆に、中枢側の凹の関節面が固定されていて、末梢側の凸の関節面が動くときは滑りと転がりは相反する方向に動く(肩甲上腕関節の運動など)。これを凸の法則という。関節モビリ ゼーションや関節運動学的アプローチは、この法則に則って行われる。

http://nagano-ahaki.life.coocan.jp/

関節可動域制限に対する運動療法 〜凹 凸の法則は間違いであ る〜とのテーマで2008年にセミナーがあっています。 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 市橋則明先生のセミナーですが第43回日本理学療法学術大会での公演です。残念ながらどんな内容だったか?アブストラクトのみネットで検索できました。

てこの原理

もう一つてこの原理について。今回、話がでたのは、第1のてこの話。治療で使うのでちょっと載せておきます。いわゆるシーソーの原理ですね。引用した文章は図による説明がありましたが、

てこで大きな力を得る場合は、力点と作用点の間に支点を置く。力点を右側とした場合は、左から「作用点、支点、力点」の順になる(右図参照)。力点で加えた小さい下向き力は、三角形で支えられる支点を媒介して、作用点で大きな上向きの力となる。 力点と作用点を入れ替えると要する力は大きくなるが、動きを大きく、あるいは速くすることができる。

ウィキペディアより

膝関節について

”凹凸の法則”、”てこの原理”…なんの話だか?ここからは理学療法の話をします。膝関節の関節運動についてです。膝関節は大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)、それと膝蓋骨からなります。凹凸の法則でいうと、凹は脛骨の関節面。凸は大腿骨の関節面ですね。
今回は、前十字靭帯再建術、人工関節置換術の術後の膝の症例から得た情報です。

インスタで見かけて動画から写真にしてます。前十字靭帯が捻じれながら関節運動を制御しているものでした。写真に起こしたのですが、大腿骨(上の骨)を動かし、膝関節を屈曲しています。脛骨(下の骨)の関節面で大腿骨が転がりますが、前方へ滑っていかない。なので、大腿骨と脛骨の接点は、関節面上を後方に移動していきます。この転がり・滑りは関節包内運動といって、関節運動で生じる骨運動です。身体を外からみえません。身体の外から見える骨運動は構成運動といいます。関節を作る骨の位置関係が変わる運動ですね。今回は詳細な控えてみます。脛骨を固定して大腿骨だけが動くことって…日常ではあり得ないですよね。

凹凸の法則でいうと、大腿骨(凸面)が動くときは転がり・滑りは骨運動の反対側へなので、これに準じて関節包内運動が起これば、大腿骨は脛骨の関節面上に留まりますね。

レントゲン画像

ちょっと話が飛びます。手術後のレントゲン画像を比較したいと思います。
その前に、膝関節を構成する3つの骨がどのように動くか確認です。

この後の話での目印として、大腿骨顆部の前後に△の印をつけてます。この印と、膝蓋骨、脛骨関節面(高原)の位置関係を追ってみると、包内運動の転がり・滑りの程度が予測しやすいのではないでしょうか。脛骨中心軸から大腿骨顆部中央(ほんとうに中央か?)に向かって直線を引いています。立位になるとおおよそこの辺りで荷重を支持するのではないでしょうか?研究レベルではわかりませんが m(__)m

4つの症例のレントゲンを載せてます。
A、B、Cは前十字靭帯再建術後。Dは人工関節置換術後です。△の印は上述した通り。Aは屈曲したときに後方の△が関節面に乗ってくるようにみえます。大腿骨・脛骨が転がり・滑りの包内運動をうまくできているのかもしれません。BとCは関節可動域に明らかな制限のある症例です。顆部の前方△と膝蓋骨の関係、後方△と脛骨関節面との関係。うまくいっていないように感じます。もちろん、Aのように違う角度でのレントゲン画像がないので、何とも言いようがないですが。同じ膝関節角度で、前方△に膝蓋骨が乗ってくるだろうか。後方△は関節面上のどの辺りにあるだろうか。そういう見方をすると包内運動があるのか??Dの人工関節の症例は、キレイに脛骨関節面に後方△が乗ってます。最近の人工関節は性能がいいのか?!

術後、歩行は装具での制限があったり、身体能力の低下、痛みによってぎこちなくなります。例えば、前十字靭帯再建術後の例です。重心は患側へ十分移動できないし、膝関節の動きは円滑ではないく、屈曲位のままですね。

このような歩行を日常しなければならないので、筋アライメント、骨アライメントともに特徴的になります。もちろん術後早期は、再建靭帯の保護が最優先!多少かばっても靭帯への負担を減らす方がいいのではないだろうか。

右膝関節前十字靭帯再建術後

徒手療法

すごく話は飛んでますが、徒手でROMエクササイズをしています。ではこの時に凹凸の法則を考慮して行うのか。

こんな感じで膝関節の伸展を誘導してみました。術者の左手が問題です。右手で足部を誘導して膝を伸展するのですが、左手は脛骨を大腿骨に対して後方へ押し出すように誘導します。前十字靭帯に対してもやさしいし、関節運動としても円滑です。膝窩部の軟部組織も伸張されるように感じます。
しかし…
「中枢側の凸の関節面が固定されていて、末梢側の凹の関節面が動くときは滑りと転がりは同じ方向に動く」
脛骨の滑りを逆方向へ誘導しているのです!
でもね、効果はでるんですね。
なので、先日仲間と話したのは、「これっててこの原理で誘導している!」ということ。
個人的には関節包内運動だけではなく、
『術後早期の荷重のかかり方を整えると思うと、レントゲンで見た脛骨関節面と大腿骨の位置関係を整える。そのために関節運動を他動的に再教育する。』
そのように考えてみるのもいいのかなと思っています。

実際はこんな感じ

同じような印をつけ、マーカーで落書きしてみました!
伸びやすくなります。骨運動の関節包内運動を改善しているので、伸展しやすくすると屈曲も可動域が拡大することが多いです。関節運動を円滑にするからですね。屈曲制限の原因が包内運動と違う要素があるのであれば、別ですが。この状態で立つと「膝が伸びやすくなった」とクライアントから感想を頂くことが多いです。脛骨の関節面にしっかり大腿骨が載っていると思います。歩行してみると立脚中期がしっかりとフラットな足底接地に近くなってきます。

臨床を試行錯誤を書いてみました。冒頭の用語の使い方。実際の現象とどうなんだろうと思いますが。治療方法を探っていかないと、教科書に正解は載ってないですからね!臨床で起きたことと教科書で書いてあること。照らし合わせて、自身の臨床を育てたいものですね。

長々となりましたが、伝わったかな。
こんな内容の勉強会してます。
お近くの方はぜひ!


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