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DNAで決まること

遺伝子解析DNA鑑定は、かつては大学や研究機関などでしかできないことでした。しかし、最近はある程度の費用を出せばゲノム解析をすることができ、高校にもDNAを増幅するサーマルサイクラーがあり、DNA解析がかなり身近なものになっています。このように、分子生物学の分野はすごい勢いで進歩しているのですが、内容が難しく、理解ができないまま結論だけを受け入れてしまっていませんか?知人(文系出身)と話をしていたところ、「正直PCR検査と言われてもよくわからない。あれって、遺伝子を解読しているの?」と聞かれました。「PCR法は特定のDNAを増やす技術で、あの検査はウイルス特有のDNAがあるかを確認するものだよ。」と説明しましたが、普段から関わっていないと”DNA””遺伝子””ゲノム”なんて、どれも同じ意味だと思ってしまいますよね。

”DNA””遺伝子””ゲノム”の違いを簡単に説明すると、”遺伝子”は体パーツ(正確にはタンパク質)を作るための設計図で、”ゲノム”は生物が生きるために必要な遺伝情報全てのことです。そして、これらの情報はDNAという物質に含まれる塩基の並び方によって保存されています。たとえて言えば、DNAという紙に、塩基という文字で、遺伝子という内容が書かれている、ゲノムという名前の本となります。(かなり大雑把な説明なので、注意していください。)

5年ほど前から、生命保険の加入に遺伝子検査の結果を求めないことゲノム情報の取り扱いの注意が各種機関から出されています。このゲノムや遺伝子情報をうまく利用すれば、病気の予防などができるのですが、検査の結果で保険には入れませんというのは困ります。遺伝子検査の結果で区別することは理にかなっているのかもしれませんが、待遇に差をつけられる差別が行われてはなりません。そんな、遺伝情報によって管理される社会をえがいた映画が”ガタカ”です。
あらすじは、「遺伝子操作で生まれた“適性者”が社会を支配する近未来。自然出産で誕生したビンセントは、“不適正者”として冷遇される人生を歩んでいた。彼は幼い頃から宇宙飛行士を夢見ていたが、それは適性者のみに許される職業だった。ある日、ビンセントはDNAブローカーの仲介で、下半身不随となった元水泳選手ジェロームの適性者IDを買い取る。ジェロームに成り済まして宇宙局「ガタカ」に入社したビンセントは、努力の末についにタイタン探査船の宇宙飛行士に選ばれる。

ガタカは1997年に上映された映画でしたが、私が観たのは数年後のことでした。遺伝情報によって管理される社会というSFディストピア感あふれる設定にひかれました。この手の作品は、最終的に理不尽な管理社会を打倒することを目的としていることが多いです。しかし、このガタカはジャンル的にはサスペンスであるため、ビンセントが検査や捜査をくぐり抜けて、宇宙飛行士になるまでを描いており、管理社会を潰すわけではありません。そのため、この映画は登場人物の様々な思いが交錯するのですが、とても切ないものになっています。最終的には、ビンセントが宇宙飛行士として土星へむかうことになるのですが、このシーンはアクション映画で敵のボスを倒すシーンよりも爽快でした。なんせ、ビンセントがガタカの世界の根幹を否定したことになるからです。

遺伝情報を根拠に判断するというのは、一見理にかなっているように思えます。しかし、遺伝子というのも生物の特徴の1つを決める情報でしかありません。身長が低いにも関わらず活躍するプロ野球選手がいるように、特定の特徴だけで適性が決まるわけではありません。私たちは何かをするときに体にある数えきれない体の特徴を駆使しています。少しくらい適性のない特徴があったとしても、体全部を使いこなして、成果を出すのかは本人しだいです。なによりも、挑戦するかどうかは本人の勝手です。

生命保険の加入に遺伝子検査の結果を求めることや遺伝情報による管理社会の一番の問題点は、「自分の努力で変えられない」ことで自分のことが決められてしまうことにあります。昔は、性別や肌の色を理由に入学や入社を拒否することがありました。現在は、社会ではそのような差別はなくす取り組みがなされていますが、日常生活では知らずに「自分の努力で変えられない」ことで人を決めつけてしまっていることがないでしょうか?性別によるらしさを求めたり、血液型で性格をきめたりなどなど。ささいなことで、気にしない人も多いかもしれません。しかし、「メモをとらないから、忘れ物をするんだ!」と言われたら改善の余地がありますが、「x型だから、いい加減で忘れ物をするんだ!」と言われたら、血液型を変えることはできませんから改善の余地がありません。しかも、血液型といい加減かどうかは科学的な根拠はないですから、ただの人格否定です。細かいことかもしれませんが、もしかしたらどこかで嫌がっている人がいるかもしれないので、気をつけていきたいと思います。

ブログをやってたりします。よかったら、みてください。1つしか記事はありませんが。


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