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筋肉を観察してみよう

理科(生物)を勉強する理由の1つに自分のことを知って、自分を大事にするということがあると思っています。大学4年の終わりのことですが、卒論に追われカップラーメン中心の食事しておりました。そのせいで、胃酸過多になってしまったのですが、父に「何のために生物を研究しているんだ」と怒られました。私の専門は動物分類ですが、中学と高校の生物の知識があれば、カップラーメン中心の食事をすれば胃酸過多になることは予測できます。今回は、身近なもので生物のことがわかる事例を紹介します。

材料は鰹節

鰹節は、カツオの肉を煮熟してから乾燥させた日本の保存食品です。記憶が正しければ、世界で一番硬い保存食という話もあったと思います。普段私たちが使用するのは、この鰹節をかんなで削った、削り節です。
なぜ、鰹節が筋肉の構造を観察する材料になるのかというと、カツオの肉を崩さずに乾燥させて、薄く削っているからです。鰹節のカツオは、まず三枚以上に下ろされて、そのまま乾燥させます。そのため、カツオの筋肉の構造がそのまま残っています。また、薄く削ることで筋肉の細胞が分離されます。これを顕微鏡で観察すると、写真のように縞模様が見えます。

縞模様がよくわからない場合は、赤丸のあたりを見てください。同じ様な模様が一面にあるのがわかります。

筋肉は3種類

私たちの体を作る筋肉は3種類あります。1つは骨格筋で、いわゆる“筋肉”です。腕や足にあり、体を動かす筋肉です。2つ目は、平滑筋で、内臓(主に胃や腸)の筋肉です。内臓の筋肉は骨格筋のように強い力を必要としません。口に入った食べ物を何時間もかけて肛門まで運ぶ持久力が必要で、骨格筋と構造が異なります。この構造の違いは、焼き肉で赤身とホルモンの違いになるといえば実感できるのではないかと思います。3つ目は心筋で、名前の通り心臓の筋肉です。全身に血液を送り出す力強さと、動き続ける持久力を兼ね備えています。

赤枠ないに縞模様があります。写真の目盛りは、1目盛りが1μm(1mmの1000分の1)です。

骨格筋の構造

鰹節で観察できるのは骨格筋です。鰹節を低倍率で観察すると細長い長方形が並んでいるのが見えます。これが筋繊維と呼ばれる筋肉細胞です。少し余談ですが、骨格筋の細胞は多核(細胞内に核が複数あること。一般的な細胞は、1つしかもたない。)です。これは、骨格筋の細胞が融合して1本の細長いバネになっているためです。この筋繊維をさらに拡大すると、先ほどの写真のような縞模様がみえます。これは筋細胞内にある筋原繊維と呼ばれるもので、骨格筋がバネの様な働きをもつ原因となっています。

筋肉が動く仕組み

この縞模様の構造は分子レベルになるので、私のもっている顕微鏡では見ることはできませんが、上図のようになっています。筋原繊維は、アクチンフィラメントミオシンフィラメントという2種類のタンパク質で、サルコメアという小さな区切りを作っています。このミオシンフィラメントはそこそこ太いので、顕微鏡で見ると影となって見えます。これが筋原繊維の縞模様の原因です。
筋肉が伸びているときは、ミオシンフィラメントの先端が、アクチンフィラメントに引っ付いて動かない様にしています。筋肉を縮める時は、カルシウムがミオシンフィラメントの先端にかかり、アクチンフィラメントから離れます。するとアクチンフィラメント同士が近づき、筋肉が収縮します。

違う世界を見てみよう

今回の話のネックを上げると顕微鏡が必要であるということでしょうか?ただ、かなり安価なものが通信販売のサイトで売られている様です。顕微鏡があると、「研究室でないと見れない」と思っているものを見ることができます。たとえば、爪楊枝のおしりで口の中をこすって、スライドガラスにはりつければ細胞を観察することができますし、アクアリウム用の水草を見れば、植物の細胞を観察できます。ヨーグルトやヤクルトを見れば、乳酸菌が観察できます。実用性はありませんが、いかがでしょう?


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