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僕らはデジタルディスラプターを目指せるか。(全くカオスなDXの定義)

こんにちは!現在のお客様の経営課題にしっかり向き合い、未来の飛躍にむけてそっと寄り添う高田馬場のファーストベース行政書士事務所の代表山川です。

僕はIT企業の中の人として、会社の事業部門として事業計画や経営計画に長い間関係してきました。また事業投資に向けた数多くのビジネスプランも審査しました。最後にAIを活用した新規事業の立ち上げに若い方たちと一緒になってかかわってきました。

デジタルトランスフォーメーション(DX)について、使っている方によってその意味について若干の違和感を感る場合が何度もありました。ずっと気になっていたところ、2021年の4度目の非常事態の夏の時間をすこしまとめて使い、前編としてDXの定義について整理してみます。

引用が多めですが、デジタルトランスフォーメーションの定義を丁寧に整理していきます。

DXとは(一般的な定義)

まず避けて通れない一般的な定義です。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の概念はいつ頃から広がったのでしょうか。始まりは、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授の論文です。そのなかで、
「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」


ITの浸透により社会が良い方向へ変革していくと、デジタルトランスフォーメーションの概念を提唱しました。この訳文が多くの場面で紹介されていますが、少し意訳されています。

元となる原文は次の文のようです。
The digital transformation can be understood as the changes that the digital technology causes or influences in all aspects of human life. (Erik Stolterman)

ともあれDXの概念の始まりがこの論文のようです。

でも実のところこの訳文だけでは、DXとは何だろうという回答は、見えてこないですよね。
見えてきますか?大きな捉え方ですよね。なんでもありの如く。これをDXの本質と定義づけている方もいらっしゃいますが、まあ理念のようなものと考えた方が良いと思います。

では日本の話、経済産業省です。DXの定義について何と言っているのでしょうか。

経済産業省のDXの定義

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
(「DX 推進指標」とそのガイダンス 令和元年 7 月 経済産業省)

どうでしょうか。ビジネスでのDXの在り方が見えてきませんか。それを深堀するまえにデジタルシフトという言葉があります。DXとの違いは何でしょうか。

デジタルシフトとの違い

デジタルシフトとは、主に仕事の世界で使われますが、従来のアナログつまり人間系によって手作業で行ってきた業務をデジタル化すること、つまり業務のIT化のことを指しています。
たとえば電卓で計算して集計したものがコンピュータシステムで専用ソフトにより直接専用画面から入力していく。データがグラフやデータをつかって分析資料に活用するなどで今までの作業が効率化、タイムリーな提供ができるようになること。これがデジタルシフトです。デジタルシフトはデジタイゼーションとも呼ばれます。

DXとの決定的な違いは、デジタルシフトが業務の部分的プロセスに限定されていること、あるいは業務の効率化にとどまり、デジタルシフトを進めても業務そのものの変革、製品やプロセスの変革までをふくんでいないこと、企業文化が変革するまでにはいたらないことでしょう。

どうしてでしょうか。もう少し経済産業省の定義を探してみましょう。

経済産業省のDX

経済産業省のなかでDXをどういう位置づけとしてとらえ、今後の省内でどのように利活用していくかの方向性が以下の文にて読み取れます。

「文書や手続きを単に電子化するだけではなく、ITを徹底的に活用することで、手続きを簡単・便利にし、蓄積されたデータを政策立案に役立て、国民と行政、双方の生産性を抜本的に向上することを目指します。」(MTI DX webサイトより)

手続きなどの電子化だけを言っているのではないですよ。IT技術を活用することにより今より便利にならなければなりません。さらに重要なのは得られた多くのデータより政策立案に役立てて良い方向に変えていくことを目指しているのだと。
繰り返しになります。ここで大事なところは「データ」を役立てること。そして便利な社会に「変えていく」ということです。

では経済産業省は日本のビジネス、民間産業をどう取らえているのでしょうか。

「DX 推進指標」とそのガイダンス

令和元年7月に経済産業省は「DX 推進指標」とそのガイダンスを公開しています。
「DX推進指標」とは起業のトップやDXに係る関係者がDXを進めていく上で現状や課題を共有して次の活動につなげるための気づきを提供するツールです。

この中で 「DX推進指標」でのDXの定義として、次の様に記載しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
(経済産業省:「DX 推進指標」とそのガイダンス 2019年7月 p1)

「データとデジタル技術」「~を変革」などのキーワードがここでも出てきますね。このことは「DX推進指標とそのガイダンス」の2.1章「DX 推進指標」策定の背景と狙いに明確に記載されています。

「DXは、本来、データやデジタル技術を使って、顧客視点で新たな価値を創出していくことである、そのために、ビジネスモデルや企業文化などの変革 が求められる。」
(経済産業省:「DX 推進指標」とそのガイダンス 2019年7月 p5)

DXの概念の整理

DXとは、本質的には、IT化とかデータの単なる活用を行うことを指しているのではありません。大量のデータをIT技術の活用によって新たな価値を創造することです。このことで新しいビジネスや企業の形態が変わってくることを意味しています。

官公庁ですとユーザが便利になったね、だけではなく政策に得られたデータが活用されより便利な社会となることがDXの意味でしょう。

企業ですと、膨大なデータを活用してあらたなサービスが創出すること、それによって企業の在り方が変わってくるというのがDXの意味なのです。

「DX が目指しているものは、業務改善・効率化のみにとどまらず、『顧客視点で新たなビジネス価値を創り出すこと』である。」
(経済産業省:「DX 推進指標」とそのガイダンス 2019年7月 p14)

このようにデジタルシフトとDXは目指しているところが違うところです。一部の資料の影響でIT化、IOT実装、AIの活用をDXととられる方がいて混用されています。これまで述べてきたように全く違うものだと理解されるのが正しいと思います。またデジタルシフトを狭義のDXとして含めている方もいらっしゃいますがそれは異論のある所です。手法も異なり、アウトプットが全く異なるからです。

DXとデジタライゼーションとの違い

デジタイゼーション(Digitization)とデジタライゼーション(Digitalization)とDXとの違いについて少し補足します。デジタライゼーションとDXは、デジタイゼーションと、先ほど述べた通りですが目的という点明確に違いがあります。

それでは、デジタライゼーションとDXの違いについてはどうでしょうか。これは、ほぼほぼ同じとの見方、DXの前段階としてとらえている見方と様々です。

DXの前段階としてとらえる見方は、デジタルの進展を3つのステップでとられていて、DXはデジタライゼーションの次の段階として認識しています。この場合のDXとはストルターマン教授のDXの世界を定義づけています。最終段階が漠然としているので、経営戦略としては、そのままでは使えないと思います。もし仮に段階的に分けるのであれば少なくともデータをどう持っているかで考えたほうがビジネスの場面で理解する場合はしっくりくると思います。

データからみる違い

ここからは僕の見解です。
デジタル化以前は、人間系での業務です。データはデジタルになっていません。紙にかいたて紙で保管。共有方法は主にコピーですね。デジタル化されるとどうでしょうか。先ほどのデジタイゼーションの場合です。業務に関するデータがデジタル化されていきます。おもな守備範囲は個人・グループ・部門などの範囲です。電子化されてよかったね。仕事も速くなったし、便利になったね。効率化もできるよね。こんな感じですよね。

ではデジタライゼーションではどうでしょうか。データはもはや活用できるデータです。それではDXとの違いはデータの再利用では無いでしょうか。再利用というと何やらリサイクルのように聞こえますが、元のデータが形を変えて別の価値を持つことと認識すべきと思います。たとえば膨大な数のお客様のデータを整理してマーケティングに活用するとかです。ある程度の分析が入ることもあるでしょうがデータ自体は大きくは変化しない、別の価値には未だなっていない。DXでは大量のデータを処理して分析して予測する。

たとえば経済産業省のコロナ禍の支援策としての持続化給付金や一時支援金がありましたよね。事務局のコールセンターに、数多くの申請者からの問合せがありました。仮に、即座に音声データを整理して⇒Q&Aとしてまとめる、公表する。こういったことを実現できたとすれば、この段階がデジタライゼーション。さらに、これらを分析して申請者がわかりにくい点や申請誤りの多い点を次回の給付金の制度設計に「反映する」までデータを活用するとDXと言えるのではないでしょうか。データが別の価値となっているのです。前の方ででてきた経済産業省の定義でいう「新たな価値」です。


理解されていないから推進されていない

この「DX 推進指標」とそのガイダンスが作成されたかというと、以下のようにあります。

「経営者が DX の必要性を認識し、デジタル部門を設置するなどの取組が見られるものの、実際のビジネス変革にはつながっていない という状況が、多くの日本企業に見られる現状と考えられる。」
(経済産業省:「DX 推進指標」とそのガイダンス 2019年7月 p1)

私はビジネスの変革にDXがつながっていない、あるいはDXの推進があったとしても多くがPOCの事例でとまっているのは、DXについてさまざまな定義・解釈があり、それがDXの推進の妨げとなっている大きな要因ではないかと考えています。

だからこそ定義をきちんと整理することは大切ではないでしょうか。




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