見出し画像

スピッツ『撃ち抜かれた歌詞のフレーズ 5選』〜神秘的かつ独創的な歌詞の世界へ〜

私が敬愛、心酔してやまないバンド「スピッツ」について初めて綴ります。魅力を言い出したらキリがないのですが、今回は唯一無二ともいえる独創的な世界観の歌詞に着目していきます。


1. 憂鬱な迷い子撫でるように 風は吹き抜けてく


私が大好きな「三日月ロック」というアルバムに収録されているこれまた大好きな曲「旅の途中」のサビの歌詞です。

旅の途中のこのアルバムの中での位置づけは、アルバムが終盤に差し掛かったタイミングで流れる非常にしんみりと落ち着ける曲です。曲自体がすごく味わい深くて情景に富んでいます。

それにしてもこのフレーズは完璧ですね。とんでもない比喩表現です。なんとなく分かりそうで、冷静に頭に思い浮かべても具現化しない。でもしっくりくる表現なんです。手が届きそうでふわっと手から逃げていくような、まさにお祭りでの金魚すくいとでも言ったとこであろうか。

さらっと容赦ない天才的フレーズを忍び込ませるのがスピッツのえげつないところです。

2.他人が見ればきっと笑い飛ばすような ヨレヨレの幸せを追いかけて


これも大好きなアルバムの「さざなみCD」の2曲目に収録されている「桃」の二番目のサビの歌詞です。

さざなみCD自体が神がかった至高の作品なのですが、非常に清涼で爽やかで限りなく無色透明に近づいているんだけど色彩に富んだような奥行きもあるアルバムです。

このアルバムの爽やかさを形作っているのは間違いなく序盤の曲構成であり、2曲目でこれがかかった段階でもうとっくに心は掴まれています。

スピッツは聴く回数を重ねるにつれてハマっていくような曲が多いのですが、桃は一発でばちっとはまった曲でした。

それにしても素敵な歌詞で泣けてくる。自分にとっての幸せって他人からは理解されにくいですよね。また、誰も周囲に理解してくれる人がいないからこそ自分だけ異様にのめりこんじゃう現象も生きていたら経験しますよね。

そんな感傷的でもあり憧憬的でもあるような恍惚のあの空間を無心になって追いかけるような、状況がふんわりと頭に思い浮かび離れない、素晴らしいセンテンス。

ちなみに最初のサビの
つかまえたその手を離すことはない 永遠という戯言におぼれて
この歌詞も最高過ぎて言葉が出ない。スピッツが吐いている言葉に自分のような愚人が変な言葉を被せたくもないです。(ここまでくると(笑))

永遠は尊い言葉ではなくて、戯言なんですって、、、その戯言におぼれたくなる瞬間、想像できた方は感受性豊かな証拠です。


3.隠し事の全てに声を与えたら ざらついた優しさに気づくはずだよ


また何となく想像できそうで、だけど具体化できない、摩訶不思議な領域に、スピッツによって紡ぎだされたこのフレーズに集約された至高の空間に留まることしか凡人のなすすべはない。

これは「ベビーフェイス」という曲の歌詞ですが、この曲はずっと一貫して歌詞から死の匂いが漂ってきます。曲調もそうですが、決してシリアスで思いつめたようなものではなく、どこが寂しいのをこらえて明るくふるまっているような優しさや思いやりにあふれた温かい曲です。

また「ざらついた優しさ」という表現がどこから降りてくるのか気になって仕様がないぐらい素晴らしいというか、素敵。


4.君へと続く登り坂を すりへったカカトでふみしめて


これはまたまた「さざなみCD」から「P」という曲の歌詞です。

泣きたくなるぐらいに良い歌詞。頭で情景が想像できます。君へと続く道が登り坂だなんて表現も素晴らしすぎるし、かかとがすりへっていても一歩一歩踏みしめている姿が思い起こされて、この一文からも絶対にたどり着きたい君という存在が浮かび上がります。なんと詩的な世界なんでしょうね。

何となくこれまでどれだけ歩いてきたのかなとか、何回この坂を上ったのかなとか、その時の天候はどうだったのだろうかとか、路面の状況は悪かったんじゃないかとか、君の視点に立って登ってくる僕をどう眺めていたのかとか、自分の頭の中でストーリーまで作ってしまうぐらい、このワンフレーズが持つ無限大の創造性がうかがえますね。

Pはバラード曲としても超絶に一級品なので、聞いたことがない方は是非聴いてください。

5.愛はコンビニでも買えるけれど もう少し探そうよ


これは中学生の時聴いて何気に一番度肝を抜かれたフレーズかもしれません。「運命の人」という曲で、軽快なメロディーとともにこのとんでもなく衝撃的な歌詞が舞い込んできます。

先ほども述べた通り、さらっとこういうことを言っちゃうあたりが天才的なんですよ。どんな曲でもこんなことを言う歌詞は聴いたことがありません。

普通は愛は金では買えないみたいなことをバッチリ決めて格好良く言います。ていうか言いたいです。でもコンビニで買えちゃうよ~ってたやすく言っちゃいます。

これだけでも驚天動地なのに、その後に「もう少し探そうよ」って救われた気にさせちゃうところもすごいと思います。この一言は人生経験を積めば積むほど理解してくるような重いメッセージですよね。


何せスピッツの数多ある歌詞の中から極私的選りすぐりのフレーズを集めてみましたが、こんなの氷山の一角に過ぎません。そして読んでいただいてお分かりの通り、スピッツの歌詞に余計な説明など付け加えたくないのです。だから各々の頭の中で世界が広がっていってほしいと思い、非常に淡々とに紹介を綴っていきました。

スピッツについてはこれからも語りたいことだらけなので、映画・文学に続いて取り上げていきます。是非お読みいただければ幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?