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絵本はとても難しい


2023年5月26日(金)朝の6:00になりました。

最近買った絵本は、小林賢太郎さんの『カキワリの劇場』です。

どうも、高倉大希です。




絵本は、簡単な読みものだと思われがちです。

絵が文章を補っていると、考えられているからです。


これは、大きな間違いです。

絵が文章を補っているのではありません。

文章が絵を補っているのです。


にじ色のゼリーのようなクラゲ。水中ブルド-ザーみたいないせえび。見たこともない魚たち。見えない糸でひっぱられている。ドロップみたいな岩から生えている、こんぶやわかめの林。うなぎ。かおを見るころには、しっぽをわすれているほど長い。そして、風にゆれるもも色のやしの木みたいないそぎんちゃく。

レオ・レオニ(1969)『スイミー』好学社


絵本は、アニメーションのように連続した絵を見せることができません。

つまり、絵と絵の間には大きな空白が存在します。

だからこそ、文章がその空白を補います。


絵を読んだら文章を読み、文章を読んだら絵を読みます。

種類の異なるテクストを、行ったり来たりするわけです。

絵本を読むって、実はけっこう難易度が高いのです。


ウエズレーは、ひとりであそべるあたらしいゲームをかんがえだした。道具はぜんぶ、庭の作物をつかってつくった。近所の子たちは、うらやましくてしょうがない。

ポール・フライッシュマン(1999)『ウエズレーの国』あすなろ書房


そう考えると、漫画も極めて難しい媒体であることがわかります。

絵と文字を読む必要があることはもちろんですが、そこにコマ割りが加わります。


4コマ漫画は単純ですが、最近の漫画のコマ割りは複雑すぎて驚きます。

ななめにコマを割ってみたり、わざとコマから絵をはみ出させてみたり。

細かなコマ割りがつづいたかと思ったら、見開きで1枚絵が展開されたり。


絵と文字だけでも組み合わせは無限にあるのに、そこにコマ割りが加われば、パターンは計り知れません。


絵本作家は、読者が目にしているものと同じテキストをもとに、「なにを捨て、なにを残し、どうつなげるか」を考え、10枚や20枚の絵を描き起こしている。つまり絵本を手にする読者は、絵に描かれた場面だけでなく、絵に描かれなかった場面のすべてを知ることができる。

古賀史健(2021)「取材・執筆・推敲 書く人の教科書」ダイヤモンド社


そう考えると、文字だけで構成されるこの note は、とてつもなく単純です。

目に見える文字を、ただ追えばおしまいです。

この note をつくるために書いた2万字の資料は、誰も知る由がありません。






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