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Soft Rains of May

その日は雨だった。

今回、僕が東京へ行ったのは今、勉強している講座に参加することだったんだけど、「この機会に会いたい人に会おう!」と思い立ち4日間滞在することになった。

すると、以前から一度お会いしたいと願っていた在京のある方とスケジュールが合いランチをすることになった。「せっかくなので、どこか東京らしいところで」とリクエストしたところ、東京ミッドタウン日比谷でお会いすることになった。僕は初めて行く場所だった。

我々は日比谷公園と皇居が一望できるとても雰囲気の良いレストランで昼食を共にした。わざわざ窓側をリクエストしてくださったそうで、この方のお気遣いが心に沁みた。

他にもいくつか候補の素敵なレストランがあったそうだが、どこも満席だったそうだ。わざわざ僕のために時間と労力を割いてくれたことが、とても嬉しかった。ホスピタリティとは「献身」の同義語かもしれない。

東京は大阪に比べて緑が多い印象がある。都会のど真ん中でもこんなに空が広く見える場所があることに感心した。雨じゃなければよかったのになあ。I wish it wasn't raining.

「さいとうくん、素敵なジャケットをお召しですね。よくお似合いです」
「ありがとうございます。けどユニクロですよ。安くて機能的です」

さりげなく、相手を褒めてくれるあたりが本当に素敵だ。僕にはこういう部分が足りない。

お互いの仕事の話に花が咲き、とても楽しいビジネスランチの時間を過ごさせていただいた。食後のコーヒーを飲んでいると、いつしか相手のお悩み相談になり、気がついたらコーチングセッションになっていた。最近この流れが多い。ありがたいことに好評なので、ご興味がある方はぜひご体験ください。今回もスッキリしていただけた。良かった。

これまでオンラインでしか話したことがなかったが、やはりリアルに会うのは実にいいものだ実感した。ちょっとした雰囲気の変化はPCのモニターではわかりづらい。 

「さいとうくんは今回どちらにご宿泊なんですか?」
「池袋です」
「そうなんですね!私は学生の頃、池袋に住んでいて庭みたいだったんです。けど先日、久々に行ってみたら新しい建物がいっぱい建っていてね。昔自分が住んでいたところが、どこかわからなかったんです。あれっ?、私の家はどこだったっけ?と行き過ぎてしまってました」
「それほど、街自体が大きく変わったということですか?」
「そう、再開発が進んでこの街はどんどん変化しています」
「まるで生き物みたいですね」

ランチを終え外に出ると雨は小降りだったので、我々は丸の内を経て東京駅まで歩くことにした。5月の雨は優しく静かで穏やかだ。途中から傘はいらなかった。ペニンシュラやら帝国劇場を経て高層ビル群の谷間に入り、ティファニーやエルメスなどハイブランドが並ぶ丸の内仲通りを歩いた。途中、薔薇が綺麗に咲いていた。

丸の内は近代的でいかにも都会的であり、高層ビルが立ち並ぶ日本屈指のビジネス街だ。道ゆく人々も皆こざっぱりした格好をしていた。昔来た時はこんな風だったかな?確かに東京はどんどん変化する生物なのかもしれない。

「さいとうくん、丸の内が似合いますよ」

ちょっとびっくりししたけど嬉しい言葉だった。でも、僕のどこが似合うのか訊いておくべきだったと、後から少し後悔した。

そして東京駅に着いた。

「今日は素敵なランチタイムをありがとうございまいた。またお会いしましょう。もっとも僕が次に東京に来るかは、いつになるかわかりませんが」
「さいとうくん、きっとあなたは近いうちにまた東京へ来ますよ。おそらく年内に」とその人は微笑みながら予言めいたことを言った。
「まさか⁉︎東京が苦手な僕が今年はもう2回も来てるんですよ。多分ないとは思うけど、もしその機会があればご一緒しましょう」
「ええ、ぜひ。今度はお天気だといいですね」

そんな風に我々は別れた。

奇しくもそこは前回、来京した時に僕が何か新たな始まりの予感を感じた場所だった。その時、僕はこんな風に書き記していた。

高層ビルの向こう側には空が広がっており、意外と東京の空は広いものやなと感じながら、ふと「ああ、新しい物語が始まったんやなあ」という気持ちが湧いてきた。未来は希望に彩られる。

事実、前回ここに来た時から僕の人生は大きく動き始め、その後激流の中へと突っ込んで行った。すったもんだあったけど、今はようやく水面上に顔を出して息をしている状態だ。

東京嫌いの僕にとって、東京が僕の新たな物語の始まりの地だったとはめちゃくちゃ意外やったけど、確かにそうなったのだ。人生ホンマにはわからへんものだ(だから面白いんやけど)。

大切なのは人との出会いとつながりだ。この5か月の間に僕は実に数多くの素敵な人たちと出会い、多大なる刺激と影響を受けた。ある種の閉じられ自己完結された世界から、開かれた世界へ飛び出したことでその人たちと繋がることができたのだ。勇気を出して飛び出してみるもんやね。

さて次、この街には一体いつ来るのだろうか?

その時、僕はどんな僕でいるのだろうか?

とても楽しみだ。

「そん時は、よく晴れた日がええなあ・・・」

僕はそんなことを思いながら池袋を目指した。

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