vol.11 自己資本比率よりCCCをチェックしなさい!
よく企業の財務体質を示す安全性指標として、自己資本比率があげられます。
しかし、黒字倒産という言葉があるように、いくら利益が出ていようと、
いくら自己資本が充実していようと、時に会社はあっけなく倒産します。
その企業が安全かどうか判断するには自己資本比率では不十分です。
なぜ自己資本比率では不十分かというと、会社が倒産するときは債務超過になるときではなく、キャッシュフローが回らなくなるときだからです。
会社はたとえ債務超過となっていても、
債権者や銀行への支払いが滞らない限り(=キャッシュが回る限り)
存続し、かつ利益を生み出すことができます。
特にアメリカでは債務超過の企業も上場を維持できることから、
有名企業であっても債務超過になっているケースは数多くあります。
実際にマクドナルドやスターバックス、
ボーイングなどはすべて債務超過となっています。
これら企業は長年にわたって莫大な利益を生み出し、
株価も伸ばし続けてきました。
また、自己資本比率が低くないからと言って、安全とも限りません。
実際の事例として、日本企業ですがリーマンショック時に倒産した
アーバン・コーポレーションという会社を紹介します。
不動産業を営む会社で、倒産直前期には年商2400億円ほど、
経常利益率は25%という優良企業で、自己資本比率も22%ほどありました。
しかし、リーマンショックにともなう不動産業界の冷え込みにより
キャッシュが回らなくなり、あっけなく倒産したのです。
このことから、必ずしも
「自己資本比率が低い=不安定」
「自己資本比率が高い=安全」
ではなく、かつ
安全性を見るにはキャッシュフローを見るべきと言えます。
このキャッシュフローを見るのに有効なのが、CCCです。
CCCという指標は、
キャッシュ・コンバージョン・サイクル(Cash Conversion Cycle)の頭文字をとったもので、キャッシュフローをもとに計算される指標です。
具体的な計算式は、
棚卸資産回転日数+売上債権回転日数‐買入債務回転日数
となります。
計算式だけ見るとわかりにくいですが、
“仕入れから売上金の着金までにかかる日数”
と考えていただければ問題ありません。
仮にCCCが30日の食品メーカーがあれば、
原材料を仕入れて調理し、卸・小売業者に販売してからその売上金が実際に現金として着金するまで30日かかるということです。
しかし、この30日の間にも新たに原材料を仕入れたり、
従業員への給料を支払ったりする必要があります。
従ってこの日数が長ければ長いほど、その間に必要な資金、
すなわち運転資金をより多く確保しなければなりません。
結果、この期間が長ければ長いほど自由に使える資金が圧縮され、
事業運営上の重みになっていくのです。
企業の安全性を財務の観点から確認するなら、
自己資本比率の高さではなく、CCCの低さを確認するようにしましょう。
以上まとめると、
✅ 自己資本比率が高くても安全とは言えない。
✅ 本当に安全かどうかはキャッシュフローに注目すべき。
✅ CCCが低いほど、倒産などの危険性は低くなる。
となります。
また、CCCが低いということは、事業の継続に必要な運転資金が
少なくて済むという利点もあるので、効率的な経営ができている、
という評価も繋がります。
あまりメジャーな指標ではないですが、非常に有益な指標なので、
投資判断の際にはぜひ活用してみましょう。
ちなみに、CCCは低いほど良いのですが、
中にはCCCがマイナスという企業も存在します。
つまり、
”仕入れ代金を支払うより前に売上金が入ってくる”
という企業です。
実はGAFAと呼ばれる巨大企業のなかにもCCCがマイナスな会社が存在します。
明日はこの”CCCがマイナス”の企業について、解説していきます。
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