簿記から学ぶ企業会計の基礎(Ⅱ)

前回のnoteの内容について、もう少し具体的に踏み込んでいく。


■仕訳帳

企業活動における取引が行われる毎に、下図のように一定のルールに従って「仕訳帳」に記録していく。(簿記3級レベル)


例えば、以下のような取引が行われたとする。

(1)銀行から100万円の融資を受ける。
(2)70万円分の商品を仕入れる。
(3)70万円で仕入れた商品を、90万円で売り上げた。
(4)銀行から借りたお金を、利息10万円込みの合計110万円で全額返済する。

この場合の仕訳帳の記録の仕方は以下の通りになる。


(1)銀行から100万円の融資を受ける。
借方…現金預金を100万円手にする。(資産の増加)
貸方…借入金という名の借金を100万円背負う。(負債の増加)

(2)70万円分の商品を仕入れる。
借方…商品を70万円分手に入れる。(資産の増加)
貸方…現金預金が手元から70万円減る(資産の減少)
 ⇒費用は70万円。(費用の発生)
 ⇒この時点で、現金預金は30万円残っている。(100万円-70万円)

(3)70万円で仕入れた商品を、90万円で売り上げる。
借方…現金預金が90万円増える。(資産の増加)
貸方…商品が90万円で売れた。(資産の減少)
 ⇒この時の収益(売上)は90万円。(収益の発生)
 ⇒商品の利益は20万円。(90万円の収益-70万円の費用)
 ⇒この時点で、現金預金は120万円残っている。(30万円+90万円)

(4)銀行から借りたお金を、利息10万円込みで合計110万円を全額返済する。
借方…借入金という名の借金を、10万円の利息とともに全額返済した。(負債の減少)
貸方…現金預金が手元から110万円減る(資産の減少)
 ⇒手元には、現金預金が10万円残った。

…と、このように記録していく。

そして、「財務諸表」という決算書を作成する事になる。


■財務諸表

「財務諸表」とは、以下の4つを指す。

[1]貸借対照表(B/S…Balance Sheet)
[2]損益計算書(P/L…Profit and Loss statement)
[3]株式資本等変動計算書
[4]キャッシュフロー計算書

その中でも特に[1][2][4]を「財務三表」という。

ここでは、[1]貸借対照表と[2]損益計算書について扱う。


■貸借対照表

ストック情報(財政)を示す。

◎借方……資産
 ⇒「資金運用の状況」を記していく。
◎貸方……負債(他人資本)+純資産(自己資本)
 ⇒「資金調達の状況」を記していく。

借方の合計と貸方の合計は、必ず同額になる。


貸借対照表に関連する勘定科目のおおまかな分類は以下の通り。


■「純資産の部」の株式資本

(I)株式資本
株式会社の自己資本で、割合が高いほど企業の財務状態が良い。

(1)資本金
株主から出資された企業活動の元手となる資金。


(2)資金剰余金
上記「資本金」に計上しなかった資金。

 (a)資本準備金
会社法(第445条2項・3項)により、積み立てが義務付けられている「法定準備金」。
配当処分する事はできない。

 (b)その他資本剰余金
「資本金」や「資本準備金」を取り崩したり、自社株式を処分したりした時に生じる差損益。
会社法(第453条)により、株主に対して配当をする事ができる。


(3)利益剰余金
以下の(a)(b-1)(b-2)の累計が、次期の「純資産」として繰り越されて、「貸借対照表」に計上される。
巷では"内部留保"と呼ばれているようだ。

 (a)利益準備金
会社法(第445条4項)により、積み立てが義務付けられている「法定準備金」。
配当処分する事はできず、資本の欠損填補などの用途に限定される。

 (b-1)任意積立金
「その他利益剰余金」の一つ。
企業が自主的に積み立てるお金。特定の目的がある積立金と、特定の目的がない「別途積立金」がある。
会社法(第453条)により、株主に対して配当をする事ができる。

 (b-2)繰越利益剰余金
「その他利益剰余金」の一つ。
利益剰余金のうち、「利益準備金」と「任意積立金」以外の部分を指す。
前期からの繰り越し累計額に計上する。
会社法(第453条)により、株主に対して配当をする事ができる。

従って、"内部留保課税"なんて、どう考えても無理である事がわかる。


■損益計算書

フロー情報(業績)を示す。

◎借方……費用
◎貸方……収益

収益と費用を差し引く事で「損益」を求める。
 「収益>費用」の時、利益となる。
 「収益<費用」の時、損失となる。(マイナス利益)


損益計算書に関連する勘定科目のおおまかな分類は以下の通り。


■損益(利益・損失)の種類

費用と収益の差し引きによって求められる損益(利益・損失)は、以下の5種類が基本的な考え方となる。

(1)売上総利益=売上高-売上原価
 ※いわゆる「粗利」
(2)営業利益=売上総利益-{販売費及び一般管理費}
 ※企業経営の強さを表す指標の一つ
(3)経常利益=営業利益+(営業外収益-営業外費用)
(4)税引前当期純利益=経常利益+(特別利益-特別損失)
(5)税引後当期純利益=税引前当期純利益-法人税等

単に「利益」と言った場合は、『税引後当期純利益』を指す事が多い。

法人税等とは、主に法人税・住民税・事業税を指す。

なお、従業員の人件費については、
 管理部門の従業員は「一般管理費」から、
 営業部門の従業員は「販売費」から、
 製造部門の従業員は「売上原価」(労務費)から、
それぞれ給料手当や賞与として計上される。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?