利益剰余金(Ⅰ)

『利益剰余金』とは、企業活動において生み出した利益の積み重ねの事である。順調に利益を上げていけば、それだけ会社内に蓄積されていく。

なお、巷では「内部留保」と表現されているらしい。

『利益剰余金』に限らず、企業活動や企業会計の流れは知っておく必要があるだろう。最低限、簿記3級レベルで習得する基礎知識と勘定科目一覧を一通り理解したいところである。


■企業の資金調達の手段

企業経営をし、維持していく上で、資金を調達する必要がある。その手段は以下の3通りある。

(1)銀行から融資してもらう
(2)株主から出資してもらう
(3)企業活動によって利益を増やす

この資金で設備投資や研究開発を行い、人員を増やして、事業拡大をしていく。
この繰り返しによって、純利益を増やし続けていくのが、企業経営の基本である。


■当期純利益の推移

法人企業統計調査による「剰余金の配当の推移」から、当期純利益と配当金のデータをグラフ化してみた。(金融業・保険業を除く)

2021年度……63兆0071億円
2020年度……38兆5357億円
2019年度……44兆9630億円
2018年度……62兆0300億円
2017年度……61兆4707億円
2016年度……49兆7465億円


2013年に第二次安倍内閣になって以降、鋭く上昇しているのがわかる。
これは確実に「アベノミクス」による効果である事は紛れもない事実である。


当期純利益は、以下のようにして求められる。
(1)売上総利益=売上高-売上原価
(2)営業利益=売上総利益-{販売費及び一般管理費}
(3)経常利益=営業利益+(営業外収益-営業外費用)
(4)税引前当期純利益=経常利益+(特別利益-特別損失)
(5)税引後当期純利益=税引前当期純利益-法人税等

この『税引後当期純利益』が、決算時に、損益勘定から繰越利益剰余金勘定に振り替えられる。(資本の振替)
決算から3ヵ月以内に行われる株主総会において、繰越利益剰余金の使い道が決議される。
「配当金(後日支払い)」「利益準備金」「任意積立金」の三項目にて処分する。これを「剰余金の処分」という。

未使用となった残高は、前期までの「繰越利益剰余金」の累計に積み上げ、「利益準備金」「任意積立金」と共に、『利益剰余金』として、次期の「純資産」に繰り越されて「貸借対照表」に計上される。

この一連の流れにおける「繰越利益剰余金勘定」の仕訳は、以下の通りになる。


また、「剰余金の処分」の仕訳は、以下の通りになる。


■利益剰余金の推移

法人企業統計調査による「利益剰余金の推移」(全産業)をグラフ化してみた。(金融業・保険業を除く)

2021年度……516兆4750億円
2020年度……484兆3648億円
2019年度……475兆0161億円
2018年度……463兆1308億円
2017年度……446兆4844億円
2016年度……406兆2348億円


『利益剰余金』(利益準備金+(任意積立金+繰越利益剰余金))は、企業の利益が増加し続ければ、当然のように積み上がっていくものである。
順調に増加しているという事は、それだけ利益を好調に伸ばしている企業が多く存在するという何よりの証であり、会社の財政も安定し、銀行からも信用されやすくなるという事。

それって悪い事ですか???


■利益剰余金の目的

利益剰余金は、何らかの目的や明確な使い道がある。

・株主配当
・設備投資や新たな事業拡大
・大規模な買収
・財政基盤の強化と安定した企業経営
・財務の悪化や景気の停滞への備え
・買掛金の決済
・借入金の返済
・資本の組み入れ

特に、将来的に大きな投資をする時に備えるために時間をかけて貯蓄する事は、企業としては当然に考えられる選択肢である。


■利益剰余金が多い時のメリット

・資金繰りがラクになり、経営が安定する。
・企業活動の選択肢の幅が広がる。
・金融不安が減り、銀行からの信用度も増す。

ただし、ここで、勘違いしてはいけないのは、利益剰余金は株主に帰属するものであり、直接的に従業員のものになるわけではないという事。


■利益剰余金の運用

純資産の一部である利益剰余金の性質を理解していないがために、トンデモな勘違いをしてしまっている人が多いが、
『利益剰余金』は、「当期純利益」が原資となっており、現金預金だけではなく、有価証券、売掛金、設備、固定資産(建物・土地)などの様々な資産形態をとって資産運用されている。

従って、会社の金庫や預金口座に現金預金を貯め込んでいるわけではない。

但し、本当に何の目的もなく闇雲に貯め込んでいるだけだと、株主に目を付けられて配当圧力を掛けられたり、事業を拡大する気があるのか?と判断されてしまう事もある。

企業活動によって稼ぎ出した当期純利益をどのようにして使うか。
株主の顔色を窺って配当金を上げるのか?
それとも、事業拡大のための投資や企業の成長に重きを置くのか?

そこんところは、経営陣が上手く舵取りをするべきところだと思う。



利益剰余金(内部留保)について、世耕弘成 経済産業大臣(当時)のわかりやすい解説。


※e-Gov法令検索
・財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=338M50000040059
・金融商品取引法(旧・証券取引法)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000025
・会社法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086
・会社計算規則
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418M60000010013


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