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騰訊控股有限公司(テンセント)の軌跡。

皆さんこんにちは。たっちです。
本日は世界的にも影響力の強い中国系プラットフォーマー、
BATの一角である騰訊控股有限公司(以下テンセント)
について考えたいと思います。

テンセントは、世界のゲーム市場において、
売上一位に君臨しており、時価総額では世界1位になったことも...
また、同社が提供しているソーシャル・ネットワーキング・サービス
微信(Wechat)のMAUは11.6億(2019年末)と多くのユーザーを抱えています。
フィンテック事業やグループウエア事業においても中国国内で
一定のシェアを持っています。

テンセントやテンセントのサービスの本質
を考えていくことによって、
何か新しい気づきが得れるのでは?
という軽い気持ちで今回リサーチをしてみました。

また、Googleで「テンセント」と調べたのですが、
1ページ目に近々の概要がまとまったサイトがなかったので、
記事としてまとめて公開させていただきます。

※主に、インターネットのメディア, テンセントのHP,
呉 暁波氏の「テンセント 知られざる中国デジタル革命トップランナーの全貌」を参考にしております。

騰訊控股有限公司(テンセント)の概要

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まず初めに、テンセントの基本情報からおさらいをします。
ざっくりと企業像を捉えていただければと思います。
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■代表者
馬 化騰

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創業者5名の内の1名で、テンセント創業以前はポケベルサービスを手がけていた中国の深圳润迅通讯发展有限公司でエンジニアとして働いていました。テンセント創業当初の事業でも、ポケベル向けのソフトウェアを開発していたこと、同社のQQの着信音がポケベル音だったことからも、ポケベル愛があったのでしょう。

■サービスロゴ

ペンギン

テンセント社内のデザイナーがサービスのロゴを考えていた際に、
複数の小動物を候補として提示した中の一つがペンギンだったそうです。
特別大きな意味はなさそうでした。
※bilibiliにテンセントペンギンの歴史も載っていました。
https://www.bilibili.com/video/av75071302/

■本社所在地
中国 広東省深圳市南山区高新科技園北区深圳市騰訊大厦

スクリーンショット 2020-04-08 21.46.16

中国国内に留まらず、欧米圏, ASEAN地域にも拠点を設けています。
積極的にアライアンスを組んで様々な業界に進出しているテンセント
ですが、拠点としては現状9拠点となります。
ちなみに日本にも、Tencent Japan合同会社(テンセント日本)があります。

■創業
1998年11月11日
■売上高
3773億元(約5.9兆円)
■従業員数
54,309人

創業から20年弱で全世界に5~6万人規模の従業員を抱えており、
売上高は日本円で約5.9兆円で、日本企業と比較してみると、
・KDDIやNTTドコモがそれぞれ5兆円程度
・三井住友フィナンシャルグループが約5.7兆円
・日本製鉄が6.1兆円
ということで、モバイルの普及で一斉を風靡した業者や、
歴史的な企業とも肩を並べている訳であります。

ちなみに世界的なプラットフォーマーGAFAや、BATの規模感
と比較してみると、

■ GAFA              ■ BAT
・Google:1618億ドル(約17.5兆円) ・Baidu:1695億元(約2兆円)
・Apple:2601億ドル(約28兆円)     ・Alibaba:5000億元(約7.8兆円)
・Facebook:707億ドル(約7.6兆円)   ・Tencent:3773億元(約5.9兆円)
・Amazon:2805億ドル(約30兆)       

西洋のプラットフォーマーには大きく離されておりますが、
20年前に中国企業がテック関連で台頭してくると誰が予想したでしょうか。
(2000年といえば中国3大ポータルが米ナスダックに上場をした年でも
 あったが、当時の新浪, 网易, 搜狐は模倣色が強かったように感じる。)

先日2019年通期の決算が開示されているので、
財務関連は別記事にて記述します...。

騰訊控股有限公司(テンセント) 発展の歩み

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1998年に創業したテンセントは、
当時登場して間もないインターネットと
普及が進んだポケベルと組み合わせて、
ソフトウェアシステムの開発に取り組んでいました。
そうしてインターネットからの呼び出しを受信して、
ニュースやメールなどを受け取れるというサービスです。

ところがこのサービスは、
ネットワーク上でのリアルタイム通信という
イノベーションでありつつも、
携帯電話の普及と共にポケベルが使われなくなってしまうことから
ボツとなってしまします。

その頃突如テンセントの前に現れたのが、
イスラエル人が開発, 提供していたICQという
インターネット上でのリアタイム通信サービスです。
1998年にユーザー1000万人を抱えていたICQが、
アメリカ・オンライン社に4億7000万ドルで買収された前後で、
中国でも複数の業者内で、このサービスの模倣が始まっていました。

このICQ(テンセントのサービス名はOICQ)が、
後のQQや微信の開発へと繋がっていくわけです。
ところが、テンセントがこのICQサービスの開発
に携わったのは偶然のことらしいのです。

当時、中国電信が中国語版のICQサービスを購入したいということで、
開発者を一般競争入札で探していたのです。
期限までに時間がなく、企画案だけで臨んだこの競争入札では、
勝つことが出来ませんでしたが、
彼らは討論の末、
自社サービスとして中国版ICQの開発に着手することになります。
テンセントが開発したICQ(OICQ)のローンチは1999年2月のことです。

OICQの登録ユーザーを順調に伸ばしたテンセントですが、
大きな問題がありました。
過剰にユーザーが増えすぎたために、
サーバー増設等のランディングコストに
莫大な費用が発生していたのです。
(また米国機関より訴訟問題を起こされたことで、
 OICQからQQへと改名しています。)

何度も資金不足に悩み、事業売却もうまく行かなかった
テンセントは2001年6月に何とかMIHから巨額の資金調達に成功。
その頃にはQQの最高同時接続数が100万を超えていました。
ちなみに登録ユーザー数は1億人でした。(ローンチから2年弱)
なぜ後発のOICQ(QQ)が成功したのかは後述・・・まとめ①

テンセントは、創業から2年程度で、
MIHから6,000万ドルの評価をしてもらえましたが、
この時点で明確な収益モデルを導き出せていませんでした。

2000年当時、並行して「モンターネット計画」が進行しており、
テンセント内ではマネタイズの可能性を見出していました。
実際、モンターネットの恩恵を受けたテンセントは、
2001年6月MIHから出資を受けた同月に、
主に営業におけるキャッシュフローを通じて
財務諸表上で初めて損益同額となっていました。

「モンターネット」は2000年初めに、
馬化騰がNTTドコモが提供していた
iモードに出会ったことがことの始まりです。
ワイヤレス付加価値事業を生み出したこのビジネスモデルを模倣し、
2000年にチャイナ・モバイルと「モンターネット」の提供を開始しました。

テンセントは既存のQQのモバイル版(移動QQ)
を提供することになりますが、
ショットメッセージ付加価値サービスとは、
技術上のブレークスルーというものは特に存在せず、
当初は周囲からは期待されていませんでした。

ところが、ショットメッセージ付加価値サービスは大化けしたのです。
この理由は後ほど解説をいたします。・・・まとめ②
当時のモンターネット上で、移動QQサービスを通じての
ショットメッセージ送信数は全体の70%を占めていました。

そして2002年にもう一つの利益獲得モデルを手にすることになります。
それが「QQショー」です。
これはQQの中にアバター機能を盛り込むもので、
現在の私たちからすれば普遍的なものですが、
当時実装していた業者は少なかったのです。

当時のテンセントは、有料会員サービスで利益を得ようとしたものの、
利用者からの炎上や、新規参入者を引き寄せてしまい、
マネタイズに失敗していました。

なぜ「QQショー」で成功することができたのでしょうか。
これも熟考したく後に記述をします。・・・まとめ③

2003年には、
「QQ游戏(https://qqgame.qq.com/)」ゲーム市場
「腾讯网(https://www.qq.com/)」インターネットポータル事業
へと参入をしていますが、当初はあまり上手くいっていなかったようです。
QQ游戏ではネットゲーム環境が脆弱だったこと。
(2004年8月には最高同時接続数100万人を達成しています。)
腾讯网ではQQからの移行ユーザーが多く、年齢が低かったことから
企業広告でマネタイズがしにくかったことが挙げられます。

その後2004年6月に、
リアルタイム通信サービス事業、モンターネット事業を軸に、
テンセントは香港市場へと上場を果たします。
主幹事はゴールドマン・サックス。

そしてここから、テンセントの更に激しい競争が始まるのです。

・・・次に続く

まとめ

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テンセントの上場までの「発展の歩み」から学べることがあるはずです。
上場までを振り返ると、
事業におけるブレークスルーと考えられるのは下記3点かと思われます。

①後発であったテンセントの中国版ICQの普及
②モンターネット上での移動QQサービスの普及
③QQショーにおける利益の獲得

①後発であったテンセントの中国版ICQの普及

テンセントは中国国内において後発で中国版ICQをローンチし、
順調にユーザー数を増やしていったのですが、
それは何故なのでしょうか?
まず1つ目は、競合他社が本腰を入れて、
ICQの普及に着手していなかったことです。
例えば、アメリカ・オンラインが提供していたオリジナルである
ICQサービスは、当時目を向けられていませんでした。
マイクロソフトとブラウザ市場で激しい競争をしていたからです。

2つ目は、ローカライズ, イテレーションスピードです。
西洋からやってきたICQを、中国向けにローカライズする中で、
無数のイノベーションを起こしてきたのです。
この点のイテレーション競争において、
国有企業であった中国電信のICQサービスの改善は、
スピードが遅かったと考えられます。

つまり、現在P&GやSTARBUCKSでさえも中国市場で苦戦していること
を考えると、西洋のイノベーションをそのまま中国市場に持ち込んでも
上手くいかないのでしょう。

この意味で、昨今中国企業がデータドリブンやオムニチャネルといった
顧客起点の概念を上手く用いるのは、
当時から、ただ模倣するのではなく、
西洋イノベーションを中国向けに
ローカライズしてきたからだと考えられます。
(もちろん中国政府の後押しや、中国人の情報感度が高く、
消費サイクルが早いことも関係しているはずですが。)

テンセントの中国版ICQは利用ユーザー起点でサービスを
何度もアップデートしてきたからこそ後発でも成功したのでしょう。

②モンターネット上での移動QQサービスの普及

テンセントはモンターネットを通じた移動QQサービスで、
中国国内のメッセージ送信の70%をシェアを占めていました。
これは何故でしょうか?
当時だと新浪, 网易, 搜狐あたりは、
メッセージ付加価値サービスを提供していたはずです。
そのような大企業にどのように対抗したのでしょうか。

これは消費者に対するメッセージ付加価値サービスとしての
印象づけが上手くいったからだと思います。
結論、私たちが記憶できる情報は限られており、
「これをするなら、この商品サービスを使おう。」
と直感的にアクションを取ることも多いはずです。

新浪, 网易, 搜狐はポータルサイトとして成長した企業であり、
メッセージ付加価値サービスを提供している企業としては、
認知や信用を獲得できなかったことが考えられます。

③QQショーにおける利益の獲得

テンセントはモンターネット以外の分野において、
利益獲得モデルを探していました。
そこで上手くいったのが、QQショーでした。

そもそも、2002~2003年そこらで、
リアルタイム通信ツールにアバター機能を搭載していた時点で、
ただ、メッセージを送るだけだったツールが、
エンタメ要素が加わったバーチャル世界になったということです。

QQショーが上手くいったのは、
よりリアルなコミュニケーションを取りたいという人間の
本質をついていたからだと感じます。

ただのメッセージだけでなく、アバター機能で個性を表現できたほうが
承認欲求が満たされるし、双方で感情を共有し合うことができます。
当時はタイムラインやInstagramのようなライフスタイルを共有し、
コミュニケーションを取れる場所が限られていたはずです。
感情的な付加価値の創出がQQショーの成功と言えるでしょう。

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引き続き、テンセントについて調べて参りたいと思います。

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