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サザンオールスターズ&桑田ソロ アルバムランキング

昨年の「時代遅れのロックンロール」のプチヒットもあってか数ヶ月前からサザンを聴き直してるんですよね。なんせ子供の頃から親にサザンのアルバムを聴かされてきたわけだから、もう手慣れたもんよ!と意気込んでたのですが、改めて聴くとあら不思議。あれこのアルバム、こんなに良かったっけ?ってな感想がチラホラ出てきましてですね。「結局海のyeah!!!最強!」信者だったかつての俺に向けても、今一度独断と偏見でランキングを作ってみたという次第です。ちなみにこの際なんだからというノリで桑田ソロ作とkuwata bandもランキングに入れてます。(原坊のまではさすがに勘弁してくれ…)

あと一応、ランキング発表の前に桑田に対する個人的な見解を述べます。

○桑田佳祐とかいう超絶エリートについて

まぁサザンといえばご存知この男のワンマンバンドといってもいいでしょう。
確かに原坊の編曲センスとコーラスに目を見張る場面もありますが、特に近年では「桑田と愉快な仲間たち」のようなプロジェクトになってるのは間違いありません。
んで、桑田佳祐のアーティストとはどうゆうアーティストか端的に説明すると「邦楽界一のエリート」という言葉がぴったり当てはまると思ってます。

一体どういう意味か?
まず彼って世界でも有数のメロディーメーカーであることが重要な特徴でしょうね。
ほら、彼の楽曲ってブルースや歌謡曲由来のものがたいへん見受けられると思うんですが、いずれにしろベタな感じがしないんですよね。デビュー作の「熱い胸さわぎ」なんかでも、そこらへんのクラシック・ロックよりも新鮮に聴こえるし、相当メロディセンスが良いんだと思います。
それに加えて「いとしのエリー」「真夏の果実」「TSUNAMI」とかいう誰が聴いても納得してしまうようなバラードだって作れるわけでしょう?そんで詩の完成度とか実験精神とか他ジャンルの吸収力とかもろもろ他者と比較しても、ほんと申し分のないソングライターなんですよね。

あともう一つの特徴として、マーケターや経営者としても大変クレバーな所が挙げられますね。
それは、ざっくり彼らのキャリアを振り返ると実感できると思います。

「勝手にシンドバッド」で颯爽とシーンに登場し、「いとしのエリー」で”軽そうに見えて意外と実力派なロックバンド”っていうポジションのままシングル,アルバムどちらも安定したセールスを飛ばしていくわけじゃないですか。
んでバンドブームが起きる前の1985年に実験的な二枚組アルバム「KAMKURA」を出してちょ〜うどベストなタイミングで活動休止するわけですね。こうすることで上手く勝ち逃げするわ世間は神格化するわ完璧な策略だと思いますよ。

そして90年代を迎えて復活したかと思えば、新進気鋭のプロデューサーだった小林武史の才能を見抜き、JPOPサウンドの確立に携わっていくわけでしょ?
さらに、オルタナの気風が現れたら「young love」や「さくら」でロックバンドとしての矜持をアピールしていくわけですよ。
それで流石にセールスが伸び悩んだなぁ〜と我に返ったら「TSUNAMI」という特大アンセムをぶっこんで、自分の地位を殿堂入りさせちゃうんですからもう見事というしかない。

普通こんだけ時代に合わせて上手く役回りを変えていけないと思うんですよ。しかも40年以上も。かのミスチルでさえ2000年代後半からは小林武史との蜜月な関係が裏目に出て評価を落としがちになるわけですから。

例えるならば音楽の神が舞い降りてくるポールマッカートニー的な側面とバンドマネジメントも怠らないミック・ジャガー的側面を持っているわけです
まさにザ・エリートミュージシャンという訳ですな。

とざっとおさらいしたところで、ランキングを発表したいと思います。

最下位  NIPPON NO ROCK BAND   
           (KUWATA BAND,1986)

正直レビュアー泣かせの作品です…
桑田がデタラメなロックバンドがやりたいと言って活動した割に、サザン活動休止からの次作の期待もあってか商業的に成功を収めてしまったKUWATA BAND。シングルに関しては潔く思いっきりロックしていて素敵なのだが、このアルバムに関してはぜんぜん理解できませんでした。
というのも日本語ロックのサンプルを作ると謳っていながら、なんのひねりもない洋楽かぶれのステレオタイプのロックが展開されるからなんですよ。
サザンで培った実験精神は一体何だったんだ??って思わず首を傾げてしまいます。
ま、事実この作品は桑田が黒歴史扱いしていてるし若気の至りってことで深く考える必要もないのかもしれません。実際この反省を踏まえてサザンの二回目の黄金期に突入するのでね。
一応曲ごとに注目してみると「BELIEVE IN ROCK」や「I'M A MAN」など問答無用で乗れるナンバーが入ってるくらいですかな。

20位  稲村ジェーン(10th,1990) 

イントロだけで飯三杯食えるハイパー名曲「希望の轍」と邦楽史に残るウルトラ名バラード「真夏の果実」が入っている作品だけど、サントラだしどうしても最下位になっちゃうよね。
ていうか例の稀代の大名曲2つをサントラにしか入れないってもったいなさすぎる!!前後作とうまく合わせれば充分大名盤になれるポテンシャルはあったはず!!と思うのは俺だけ?
しかも面白いことに表題曲を始め「LOVE POTION No.9」など聴いても桑田のメロディーの勘はこの時期が一番冴え渡っているんだよな。
アルバムとしてのまとまりは0でも、曲に関しては小林武史のアレンジで及第点を超えているし、しんどく感じません。やっっぱ前後作とうまく合わせれば…(以下無限ループ)

19位  綺麗(6th,1983)

出だしの「マチルダBABY」から明らかの通りシンセサイザーの本格的な導入でテクノポップに接近したアルバム。それに加え前作から続き、社会派の曲も増え、自身の音楽の『進化』と『深化』を同時に図った彼ら。
しかし……!ごめんなサザン!
「マチルダBABY」含む数曲しか印象に残ってないんだ!

そう、talking headsに脅されたんですか?ってぐらい バリバリアフリカしている「ALL STAR JUNGO」や、大昔のゲームセンターのBGMみたいな「南たいへいよ音頭」であったり、原はヒロシに騙されてたりと、まあ挑戦心は認めるけどいまいちアルバムとしても曲ごとに見てもパットしないんですよね。
という訳で、残念ながら次作での大爆発に備えての過渡期の作品ってことでこの位置づけに。
んで「マチルダBABY」はいつ聴いても名曲、うん。

18位 SOUTHERN ALL STARS(9th,1990)

第二期サザンの幕開けを飾るこの作品は、バンドサウンドもパワフルに出ていて小林武史とのサウンドプロダクションも大方申し分のないものになってる。ある程度普遍的でサザンの持っている個性も出せたという点で考えれば、快調な滑り出しでしょう。
ただ正直に白状すると、この作品いまいち印象に残ってない。
なんだろう、垢抜けなさがゆえの親しみやすさが完全に失せていてグッと来る瞬間がなかなかないというか。ちょっと小綺麗すぎるんですよね。
JPOPの良さとサザン本来の良さがうまく噛み合ってない気がするんですよね。(その融合に見事成功したのが「真夏の果実」とかになってくるんですが)
インパクト大のサーフロック「フリフリ'65」、山下達郎からインスパイアされた「忘れられたbig wave」、聴くだけで南国リゾート旅行ができる「愛は花のように」とか収録。他にもいろいろ入っていた気がするけど、このアルバム聴くならもっといい作品あるよねといった感じ。

17位 葡萄 (15th,2015)

はい、ここで最新作です。
40年以上のキャリアを経ての作品ということもあり、いぶし銀なナンバーが多々見受けられる印象。
還暦を迎えたサザンが再度日本の現状に向き合った結果、エールを送り平和を希求するのがベストだという結論に至ったのでしょう。
年齢の問題もあって、これからもなかなかこの境地にたどり着くバンドは少ないんじゃないか。
楽曲の質も高水準でサウンドも程よい熱量とドライさを両立している印象です。
ただ個人的にこういう壮大でメッセージ性の強い作品は退屈になってしまうため順位も低めにつけてるのだけれど、そりゃ2世代分も違う筆者からすれば共感できないのは仕方ないよな。

言葉の重みマシマシでっせ〜なメッセージソング「平和の鐘が鳴る」、ディスコのリズムが印象的な「アロエ」、何回聴いてもメロディーの請求力が半端ない「東京VICTORY」、哀愁たっぷりに歌いきる「栄光の男」、SNSの普及に真摯に向き合った「バラ色の人生」など桑田が往年の作詞家であるからこそ納得できるような歌詞が詰まってます。

16位 ROCK AND ROLL HERO  (ソロ 3rd,2002)

「波乗りジョニー」「白い恋人達」といったこの時期に生み出したド名曲を収録せず、古き良きロックを追求したアルバム。時代のトレンドを考慮すれば、ある種桑田なりのガレージロックリバイバルの回答と受け取ることも出来るが、メンバーの演奏技術は高いわどうしてもポップな味付けになっているわといった感触なので、普通にただの趣味で作ったんだろうな。
要するに頭空っぽにして渋いロックンロールが堪能したい時にはたまらない一枚という訳だ。

15位 ステレオ太陽族 (4th,1981)


う〜ん、率直に言うと中途半端といった印象です。

アレンジャーの八木を従えて、当時のAORやフュージョンの流行と足を揃えたアルバムなのですが、なんだかゆったりしすぎていて初期サザンにあったスピード感が薄れダレてしまった具合。
日本のAORと言ったら真っ先にシティポップの一派が挙がりますが、どうしても彼らと比べるとクオリティが劣って聴こえるんですよね。
もちろん洗練された完成度の高い作品を作っているのは事実なんですが。
例えば「我らパープー仲間」のアレンジは完全に趣味研バンドの域を出たジャズスキャットが展開されていて充分成長を感じられるポイントです。

ただそういった反動が災いしたのか、以前から同様にレゲエやフォークなどメンバーの趣味趣向がもろに出てしまったナンバーも多く、アルバム通してまとまっているかと言われればやはり微妙。結果この順位に落ち着いてしまいました。
ばりばりビリー・ジョエル意識しまくりの「My foreplay music」、情景が目に浮かぶ正統派バラード「朝方ムーンライト」とか諸々収録。特にラストを飾るサザン屈指の激甘バラード「栞のテーマ」は何度聞いても胸に来るものがありますね。

14位 10ナンバーズ・カラット(2nd, 1979)

「え゛え゛え゛え゛るぃい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛」でお馴染みの名バラード「いとしのエリー」が入ったアルバム。

正直1stの勢いのまま作っちゃいました感は否めないしアルバムの完成度は低い方だけど、桑田のボーカルはよりソウルフルになっていて、原のコーラスとの掛け合いも息ぴったりになってきてます。
それに1stがリズムを重視してたのに対し2ndは情感溢れるメロディーを重視していて、そのせいかピアノが前面に出てる印象。この青春と音楽を満喫している感じがたまらないというか、この後の活動を俯瞰してみるとあれれ何故だか涙が……というか桑田にバラード書かせたらやっぱ天下一品なんですよね。

淡すぎるラブソング「ラチエン通りのシスター」、古風なジャズをオマージュした「アブタカダブラ」や蛍の光のメロディーを効果的に配置した「ブルースへようこそ」が収録。その流れで「俺にしてみりゃこれで最後のlady」と呟かれるのだから、もう惚れちゃうよね。

13位 がらくた (ソロ 5th,2017)

music man同様、多種多様な佳曲で並べられている作品。正直マンネリは感じたものの、相変わらずサウンドは洗練されているのでまずまずの評価。これといって特に言うことはないです。
還暦を迎えたからなのか、music man より質素でシリアスな作風になっているぐらいかな。歌詞が和風すぎるラブソング「簪」や「杜鵑草」、スリリングなイントロで幕を開ける歌謡「大河の一滴」などもろもろ収録。

12位 さくら (13th,1998)

かの国民的バンドにも尖りに尖った時期があった事を忘れてはいけない。
同世代のオルタナの気風を受け、従来のサザンにあった開放感あふれるサウンドは失せ、捻くれたアプローチを多様している作品でございます。
特にこの時期レディオヘッドからの影響を受けていたせいか、デジタルサウンドやディストーションのかけられたギターを取り入れた曲が多いんですよね。
桑田に至ってはビートに特化した音楽を作るために本来の歌唱法をさらに崩し、歌詞もより難解に。カードを見なければ、ちょっと何言ってるかわかりません状態ですよホント。

タイトルからは想像もつかないくらい上品なジャズが聴ける「マイフェラレディ」、ジャコばりの美しいベースの音をバックに美メロを紡ぐ「唐人物語」、波田陽区もたじろぐ圧巻の弾き語り「私の世紀末カルテ」、アヘアヘドラムンベース「電子狂の詩」などやりたい放題といった楽曲が収録されていますが、その一方で「LOVE AFFAIR〜秘密のデート」や「SAUDADE〜真冬の蜃気楼」などといった後期サザンを象徴する王道JPOPソングもしっかり入ってます。

確かに作品のコンセプトは「万葉」や「young love」のほうが統一されていますが、なにしろポップな曲とロックな曲との振れ幅が狂気を感じさせるほど極端で、リスナーをとことん困惑させてきますね。でもこの突き放す感じが他の作品では見る機会が少なくてある意味魅力的な一枚です。(その後急に我に返ってTSUNAMIを書くんだからほんと恐ろしいです)

11位 熱い胸さわぎ(1st,1978)

ここで記念すべきデビューアルバムの登場です。”軽快なリズムにキャッチーなメロディー”サザンの個性は既にこの時点で確立されており、今後の期待しかない模様。サークルのノリのままぶつけた結果、大味のJPOPサウンドなんかは一切なくスピーディーに展開されるためつるっと聴けるプロダクションに。デビュー直後なので、初々しい桑田の粘りっこい歌唱法と原のコーラスの頑張り具合が直に伝わります。

リトル・フィートをリスペクトした「いとしのフィート」、当時のパンクブームと迎合した「レゲエに首ったけ」などが収録。また「女呼んでブギ」、「別れ話は最後に」といった楽曲を聴くと、彼らの広い音楽的素養が見えてくるのも味わい深い点ですね。ただ冒頭の「勝手にシンドバッド」の印象が強すぎて全体を振り返れば良くも悪くも小さく収まってる感じ。

10位 music man(ソロ 4th,2011)

ざっくり言うとキラーストリートのノリをそのまま延長して一枚にまとめた感じ。要はポップス!ロック!エロス!といった理念のもと、歌謡曲〜ワルツといった幅広い音楽的素養を武器に、社会風刺からコミックソングまで歌詞にする姿勢はまさにミュージシャン 桑田としての名刺代わりになるようなアルバムだ。
どうやら制作途中に食道がんを発症したらしいが、そんなアクシデントさえも微塵に感じさせない。
加えてネットの普及によってもはや一つの音楽性に留まらないアーティストが増えた2010年代の初頭に、こんなジャンルレスでメッセージ性のある作品をぶつけてくるのはしっかり時代と歩調を合わせている証拠だと思います。
歌謡曲版ウォール・オブ・サウンド「恋の大泥棒」、バイオリンポップ「銀河の星屑」、いやもうサザン名義でよくね?な「古の吹く社」といった、既存のアプローチを駆使した佳曲の詰め合わせセットって感じ。

9位  young love(12th,1996)

小林武史とのプロダクションが見事に化学反応を起こしメガヒットを連発した第二期サザンであったが、ここは策士・桑田の賢明な判断によって小林との共同作業をやめセルフプロデュースに専念する方向へ。(ちなみにミスチルの場合2010年代まで小林を引きずることになり軽薄なポップバンドとして認識されやすくなってしまう)
さあこれでやりたいことができる!と前回の反動からか思いっきりハードロックへ回帰してしまったアルバム。
ジャケットもロックの古き良き時代のオマージュで固められてて、ブルースとかバンドアンサンブルをこれでもかってくらい全面に押し出していますね。しかもいい感じに90年代のJPOPの音とありのままのサザンとが融和されていて、これを最高傑作に挙げる意見もすごく分かるんだよな。ただ個人的に超濃厚なラーメンを小一時間食べてる気分になって、少し胃もたれしちゃうというか。意外と前作の延長線上にある曲も含まれていて新鮮味がないんだよね。あまり聴く機会は少ないかな。

南米っぽくもありヒップホップっぽくもあるけどそれでいてポップスに仕立て上げるのはもはや職人技としか言いようがない「愛の言霊」を始め、どこぞの石ころとカブトムシをオマージュしたんですかねぇ「young love」、大森さんハードに鳴らし過ぎでは…!?な「soul bomber」、もはや夏というよりクリスマス感しかない「太陽は罪な奴」、サザン史上一番真面目な歌詞なんじゃないか「心を込めて花束を」といった具合に、個々の楽曲のクオリティはトップクラスなんだよな実際。


8位 KAMAKURA  (8th,1985)

はい、やってきました問題作。よくデビュー当時から追ってた古参ファンのブログとかを見るとこれが邦楽史を変えた一枚であるかのように名盤!名盤!と絶賛しているので、初見で聴くと困惑してしまう。
なので実態は「人気者で行こう」で培ったデジタルファンク路線を更につきつめリズムマシンやサンプラーを使用した楽曲で埋めた異色の作品と捉えていただきたい。

この時期、ゴダイゴや甲斐バンドなど同世代のロックバンドが相次いで解散していく中、コミックバンド扱いされていたサザンが時代をリードする存在になったのは邦楽史においても結構重要なターニングポイントなんですよね。

当然、バンドの勘と経験が1番噛み合ってる時期なので曲の緩急やメロディーラインは非常にまとまった仕上がりとなっています。

プリンスを感じさせるサウンドコラージュ「computer children」で幕を開けアフリカンビートで日本語を乗っける「真夏の情景」へ続く怒涛の展開。
アルバムの中盤に流れる名バラード「メロディー」なんか今聴いても感涙ものだ。原由子が産休中に病院で録らされた「鎌倉物語」もいい味出してます。

桑田が描く歌詞も申し分もなく社会風刺から失恋ものまで縦横無尽に駆け巡るし、肩書だけで考えれば最高傑作かもしれないが、後半になるとちょっとダレて微妙な曲も出てきているしなぁって感じなんですよね。

しかもこれ皮肉な話で時代の最先端の音を求めた結果、サウンドに関しては今聴くと両耳へリズムマシンがピコピコするわドラムはガンガン鳴るわ非常に陳腐なものになっちゃってるんです。
なんなら2枚組といったもんだからかなりの集中力を要するしちゃうんですよね。よって他の軽快な作品に比べ、相対的に聴く回数が少なくなってしまうのが致命傷。まあ当時からすると、すごい革新的だったんだろうけどね。

7位 NUDE MAN (5th,1982)


ここに来て出ました、初期の傑作。
サザンの代名詞である『夏』をテーマにしっかり世界観がまとまった作品です。
今回は自分たちからどうしても抜けない『垢抜けなさ』を恥じずに、むしろ歌謡曲に振り切った。そうすることで逆にいつ聴いても懐かしさがある普遍性を持った訳だ。

「いとしのエリー」以降あまり振るわなかったセールスも「チェコの海岸物語」といった強靭なシングルでヒットを飛ばしたことも作用し復活。
正直、当時の時点では彼らが時代の最先端を走れるようなセンスは磨けてないですもんね。この判断は賢明だったと思います。

ただその代わりアルバムに対して真摯に向き合う姿勢が功を奏し全体の流れがすごく洗練されています。特に中盤に「PLASTIC super star」で超絶盛り上がってから「Oh!クラウディア」に入る瞬間はすごく儚い気持ちになってしまいます。
他にも、原によるのどかな演歌調の曲「流れる雲を追いかけて」、ラテン歌謡の傑作「匂艶 THE NIGHT CLUB」など楽曲の強度もそれぞれ高いです。
とはいえ「猫」や「逢いたさ見たさ 病める my mind」など素朴な作品も聴ける可愛い一枚だ。

6位 Keisuke Kuwata(ソロ 1st 1988)

プロデューサーに新たに小林武史を迎えた、第二期サザンにつながる貴重な過渡期の作品。
出だしの「悲しみのプリズナー」こそキックの音が時代を感じさせるが、続く「今でも君を愛してる」ではリズムマシンの音は鳴りを潜め温もり溢れるシンセの音で飾られている、普遍的なJPOPサウンドを確立している。少なくともバブル真っ最中だったあの時代にこんな意欲作を放り込んでる辺りが素晴らしい。
しかも静と動を見事に使い分けたアルバム構成は早くも小林と桑田の連携が取れていて新たなケミストリーを生み出しつつある証拠だろう。
それに後半で名曲「just a man in love」がひっそりかかるのも本作の見所。

5位 キラーストリート(14th,2005)


アビーロードを模したジャケットが象徴するように、円熟期に入ったバンドが最後の創作意欲を振り絞るかのように出し切ったのがこの作品ですね。
後追い世代の僕からすると、ようやく自分の知ってるサザン像になってきたなと、ここまでアルバムを一から聴いてきたこともあってか、なんだか感慨深い気持ちになります。

というのも桑田はTSUNAMI以降、ようやく憑き物が取れたのか日本語ロックの第一人者としての役目を終え、普遍的なポップスを体現しだすんですよ。
んで肝心の体現の仕方なんですが、なんと7年のブランクを開けてたというのもあってか、なんと2枚組30曲の大作に笑
…だがここは老舗ブランド・サザン。
絶妙なアレンジと構成力で2時間も聴いてるのにしんどさが一つも出てこないんですよ。
軽快で洗練されている、まさにJPOPサウンドのお手本となるべき曲がたくさん詰まってるんじゃないでしょうか。
バンドアンサンブルもしっかり安定感がありバランスが非常に良いですしね。ただ、先ほど言ったとおり30曲の大容量なので、何度も聴き返すような作品じゃないことは確かなんですよ。なので例えば、ふと川のせせらぎをとぼとぼ散歩する際なんかに最適な一枚だと思います。

年輪を重ねた彼にしか作れないほど多幸感あふれる「彩~Aja~」「涙の海で抱かれたい」も入っている割には、Gファンク!?かと思えばR&Bになってたりな「DOLL」、原由子がR&Bで新境地を見せる「リボンの騎士」、ハロウィン感満載の珍しい曲「愛と死の舞踊」、オールドスクールっぽくもありニュージャックスウィングっぽくもある「karaage soba」、8分間もじっくり聴かせる大作バラード「FRIENDS」など、芳醇な音楽要素で構成された「もはやそれオルタナティブだろ曲」がてんこ盛り。
良心的かと思えば全然一筋縄ではいかない、そんな作品。

4位 タイニイ・バブルス (3rd,1980)  

勝手に『NUDE MAN』に至るまでの過渡期的な作品かと舐めてたが、蓋を開けてみれば、あらまあ名盤じゃないの と驚きを隠せない。
初期のサザンは桑田頼りではなく大学の音楽サークルの雰囲気から脱出しプロとしての意識を強める事が、ある種至上命題だったと思う。

そんな中、今作はレコーディングに専念するためにメディア露出を控える。バンドとしての結束力を高め、さらには曲の緩急をつけアルバムとしての完成度を高めようと自覚的に取り組んでたとこがわかる。
結果うまい具合にメンバーの肩の力が抜け、温もり溢れるサウンドプロダクションになっていて聴きごたえ満載といったところ。

初っ端から大森さんのエネルギッシュなギターが楽しめる「二人だけのパーティー」、隠れ名曲製造機である松田さんが初めてボーカルを録った「松田の子守唄」、そして生理について歌った攻めっ攻めの歌詞「恋するマンスリー・デイ」やメディア露出に対しての葛藤を曝け出した「働けロックバンド」など楽曲はポップでも精神はロックだなと思う瞬間が多々見えますね。

3位 孤独の太陽 (ソロ 2nd,1994)

サザンで出来ないことをソロで発散させる癖があるが、ここではフォークやブルースに舵を切った異色作だ。いずれにせよ桑田佳祐のパブリックイメージからはかけ離れているサウンドとなっている。確かに一辺倒で捻りがないようにも聴こえるがアコギ中心にまとめられた簡素なサウンドは桑田がいかに優れたボーカリストか分かるので俺は大好きな作品だ。問題作「すべての歌に懺悔しな!!」も含め露骨に怒りとシリアスさを抱えた楽曲が多い。あとなにげに桜井和彦に影響を与えているアルバムでもある。2位  人気者で行こう(7th,1984)

初期から地道に高めていった総合力がついに結実した大名盤!
出だしの「ジャパネゲエ」を聞けば分かる通り、本作をもって、桑田が独自に追求してきた日本語と洋楽の折衷はひとつの到達点を迎えている。

説明不要の大名曲「ミスブランニューデイ」、サザン流AORの頂点「海」、煌びやかなシンセで飾られた「あっという間の夢のTONIGHT」などアルバムのコンセプトやバンドアンサンブルも含めて、過去一連帯感がある作品となっております。

それにこの時代、どうしてもシンセサイザーの過度な装飾が古臭いサウンドだと指摘されがちだがその産業ロック的な雰囲気がかえってノスタルジーを感じさせるため、ヴェイパーウェーブの文脈とかから見ても再評価されるべき作品なんじゃないかとずっと考えてる。

1位 世に万葉の花が咲くなり(11th,1992) 

70分16曲と大容量にもかかわらず、聴き手の耳を一秒たりとも飽きさせず駆け抜ける。まさにモンスターバンド・サザン としての威光を示すかのような圧倒される名盤だ。
次々と飛び出す音のギミックはJPOPサウンドの雛形がようやく確立し始めた当時、そのさらにネクストレベルを見据えた音作りとなってます。
制作当時、桑田が「万葉集」をインスピレーションとしていたエピソードからも分かる通り、日本語の独自の情緒や語感をいつも以上に意識していて、そこに更に打ち込みによる作業も加わったのでサザンの全アルバムを通してもひときわ異彩を放つ作品に。

初っ端からテンションぶち上がり待ったなしなブラス・ロック「BOON BOON BOON~OUR LOVE」で幕を開け、ニュージャックスイングをうまく歌謡に落とし込んだ「シュラバ★ラ★バンバ」、マッドチェスターを再現しつつフォークやブルースの要素も取り入れた「ニッポンのヒール」と一癖二癖もある曲を挟みつつ、「涙のキッス」でしっかりJPOPの持つ旨味を存分に使ったバラードも収録。他にも思わずロリ疑惑が出てしまいそうな「DING DONG」、まんまブルースジャムですけど何か?とでも言いたげな「亀が泳ぐ街」などバラエティー豊富な曲がぎゅうぎゅう詰まっています。なにげにすごいのがサザンにありがちな古臭い洋ロックのオマージュばかりでもなく、小林武史が幅を利かせているわけでもない所なんですよね。時代を微塵も感じさせないとにかくロックでとにかくポップな素晴らしい一枚です。


いかがでしたでしょうか?一般論としてのサザンの最高傑作が「KAMAKURA」なので少し捻くれた順位になってしまったかもしれません。あとこれからサザンに興味を持った方は、この記事が役立てればと思ってます。では。

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