鉱山開発(2)
1 以前、同名のタイトルで「テクニックを覚えるには打ち込みをしなければならない」という内容の記事を書いた。
また、その裏返しになるが、「スパーリングの中で、何となくテクニックを試しながら覚えようとするのは、非常に効率が悪い(練習法だ)」とも述べている。
さて、打ち込み(=テクニックドリル)をするには、当然ながらパートナーが必要になる。
道場によっては、正規クラス外で打ち込みをする時間そのものが取れないかもしれないし、仮に打ち込みの時間を確保できたとしても、良質のパートナーに巡り合えるか否かは運による所が大きい。
したがって、自分の通っている道場にきちんとしたカリキュラムがあるならば、読者の方は何よりもまずそれを一番大事にして欲しい。
その上で、打ち込みをする時間とパートナーを見付けられた方のために、テクニックドリルをより実りのあるモノとすべく、私が思うところを本稿では述べてみたい。
2 私が以前稽古していた古流柔術では、一日の稽古メニューは大要次の順序で行われていた。
柔軟体操や(呼吸法を含む)身体作りに始まり、受身の練習(20分以上みっちりやった)を経て、合気の稽古をする。
2時間のうち、(柔術)型の稽古は、最後の30~40分程度に過ぎない。
型の稽古は、門人二人がペアになって、「捕り」と「受け」を交代しつつ、同じ型を繰り返す。
私の会派では、「一技30回」と言われ、1日に2本の型をひたすら繰り返し稽古した。
稽古する型は月単位で変わるが、月に稽古する型の本数は多くて5本程度なので、ひとつの型を毎月数百回は繰り返していたはずである。
このような型稽古のやり方は、学習メソッドとして非常に優れている。
ひとつには、あるひとつの型を比較的短期間の内に数多く繰り返す事で、その型を再現するのに必要な身体操法がマッスルメモリーに記憶される。
また、型稽古は「受け」「捕り」双方が力を抜いて行う(=あえて相手の動きに逆らわない・順対)のが原則だが、それでも身体の使い方に誤りがあれば、型は形をなさない。
「捕り」と「受け」に人を得れば、お互いに「ああでもない」「こうでもない」と言って、正しい身体の使い方や理合を模索するようになる。
つまり、自分の頭で考えて稽古する姿勢が自然と身に付くようになるのである。
3 ブラジリアン柔術(BJJ)における打ち込みにも、古流の型稽古のメソッドは応用可能だろう。
その際、テクニックドリルの効果を高める上で重要なのは、①二人で同じテクニックの打ち込みをし、②それを少なくとも1週間(7日間)は続ける事だ。
自分の経験からも言えるが、せっかく二人で打ち込みをしても、お互いのやるテクニックがバラバラだと、テクニックの理合について「ああでもない」「こうでもない」と意見交換し、自分の頭で考える機会が失われてしまう。
同じテクニックを二人一緒に打ち込みする事で、お互いが単なる受け子(=ダミー人形)になるのではなく、主体的に打ち込みに取り組むようになり、テクニックに対する理解度が(めいめい好きなテクニックを打ち込む場合と比べて)より一層深まるだろう。
さらに、テクニックドリルは、ある程度数をこなしてその身体の使い方をマッスルメモリーに記憶させなければ(スパーリングや試合で使い物にならないから)意味がない。
ただし、一度マッスルメモリーにそのテクニックが記憶されてしまえば、それ以上はドリルの効用が逓減して、練度が上がらなくなってくるので、打ち込みの本数をある程度こなしたら次のテクニックのドリルに移行した方がいい。
とりあえずの目安として、1週間(7日間)と書いたが、それはあくまでも参考例であって、その日数は一月でも構わない。
同じテクニックの打ち込みを続けてもいずれ飽きが来てしまうので、打ち込みの能率を下げないためにも、期限を切って他のテクニックに切り替えた方がいいだろう(古流の型稽古のメニューが月単位で変わっていたのも、ひとつの型を習得するのに十分な回数をこなしつつ、門人に稽古を飽きさせないための工夫だったと思っている)。
本稿の内容をまとめると、打ち込みの効果を上げるために重要なのは、「二人で同じテクニックを」「繰り返し」ドリルする事である。
誰にとってもベストな教則は存在しない。
私にとってはジョン・ダナハーがベストだが、ダナハーの教則には「モダン柔術」のテクニックがひとつも収録されていないし、話が長すぎて(短い教則でも12時間。長いモノは24時間を超える)、最後まで見る気力が続かないという人の方が多いだろう。
だから、自分にとってベストな教則が何か?を求めるよりも、まずは二人で組んで、題材は何でもいいから打ち込みを始める事をお勧めしたい。
最初は誰かのコピーに過ぎないテクニックだったとしても、打ち込みを繰り返していれば、いつか必ず自分のモノになってくれるハズである。
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