ドンファンの誘い
宿泊先のホテルで、以前からたまに会うドンファンと言う男がいる。
彼は長距離ドライバーをしている様子で、例えばマリアママの息子さん達もドンファンが乗せてきて、帰りも送って行ったりした。
どうやらバウレスにいる時に、この宿を利用しているようだ。
そして彼が宿にいるときは、大抵食事も皆と共にしている。
みんなが親戚のような小さな町だから、もちろんドンファンもエルマンやマリアとも親しくしている。
僕も宿でチョコレートを作ったりしているので、顔を合わせると「オサキーチョコある?」と気軽に声をかけてくれる。
ある時は食事中にしたパッションフルーツが好きだという話を彼は覚えていてくれて、
他の町へ行った際に、パッションフルーツを土産に持ってきてくれたりした。
優しいおじさんといった印象だ。
ある日の昼食、そのドンファンがエルマンとマリアに携帯電話の写真を見せていた。
オサキも見てというから、彼の携帯電話を覗き込んでみた。
そこには「金」の写真が何枚も保存されていた。
「見て、金!」「ほら、金!」とドンファンは少し興奮気味だ。
金といえば、だいぶ昔に純金の延べ棒を持ったとき、その重さには驚かされた記憶がある。
彼の写真は、鉱脈から取り出した直後の金であったが、それもドキュメンタリー番組で見覚えがあったので、特に印象的でもなかった。
そして同時にドンファンの友人達の写真もみせてくれた。
そこには、何かの記念撮影のように規則正しく並んだ男達、背後には森の木々が写っている。
その写真をエルマン達に見せながら、その金がある場所へ行くための道を皆で作っているんだと、ドンファンがなにやら話しているのが聞こえた。
ほぉ、そんなこともしているのか。
ボリビアは資源が豊かな国だという話は、例えば経営者の人などから、これまで何度か聞いたことがあった。
たしか日本企業もどこか鉱山に入っているはずだ。
しかしドンファンが金とはね。
そしてあまり身近でないと、興味も対して湧かないものなのだと改めて思った。
強いて言えば、構造的にはチョコレートも鉱物と同じように結晶構造なので、似て非なる部分があり、テンパリングやエイジングはとても興味深かったりする。
とにかく諸外国が、しょっちゅう利権争いをしているくらいボリビアの資源は豊富だ。
今度一緒に山に行こうとドンファンは言った。
あぁ、そうだねと軽く答えた。
数日後、まさかその場所に一緒に居ることになろうとは。。
そして、いよいよアマゾンらしい体験をすることとなる。
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