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2022年 上半期 個人的に気になるアルバム10選

iPod Tuchもついに生産終了をむかえ、128GBで容量ギリギリで戦った身としては次はiPhoneの買い替え時に500GB台のノートPC以上のスペックの購入を検討する2022年。サブスクのおかげで、新しい楽曲は一旦は気にせず次々にぶち込んで聴いてます。そんな中、アルバム単位で気になったものを10点選んでみました。

Blue Lab Beats / Motherland Journey

洗練された音の極み。ロンドンの次世代ビートメイカーデュオの最新作。JAZZをベースにしながら最新鋭のエレクトロ、CLUB、R&B、HIPHOPなどの美味しい音を見事に調味料としてブレンドしながら独自のサウンドを展開する。ブルーノートにも契約しているし、本格的なJAZZのプロ集団にも認められるから本物であることに間違いはない。サンダーキャット、カマシ・ワシントン、トム・ミッシュなど参加メンツを見ても、その界隈で注目されているのが証明されている。
どこを切り取ってもオシャレで都会的。ハイクオリティでありながら、POPな路線からも外れない。文句のつけようのない名盤ですね。前作よりもJAZZの本格的なアプローチが増えたにも関わらず、カテゴリの幅も超越した音のエッセンスたちが全く飽きのこないテイストを醸し出しています。上半期ではベスト3に入る名作。


Mara Sattei / UNIVERSO

全くもって情報がないのですが、適当にAppleミュージックでワールドミュージックを漁っていたら出くわした女性シンガー。英語で歌ってないことはわかりますが、調べるとイタリアみたいですね。本国では有名なのかも知れませんが、ジャンルとしてはPOPSとR&Bの中間ぐらいのちょうどいい満足感。
とにかく一貫しているメロディの芳醇さに、イタリア語独特の言語リズムが心地よい。本格的な攻めなトラックで展開する楽曲もあれば(低音ベースが特徴の5曲目が秀逸)、シリアスなバラードもあり、振れ幅も楽しめる。何よりどんな楽曲にも順応する安定感のある表情豊かなボーカルがいいですね。純粋に1枚のPOPSアルバムとして聴きごたえのある作品です。


Fickle Friends / Are We Gonna Be Alright?

実は1stアルバムを知らずに結構聴いていて、全英でTOP10に入る実力者。前作の印象は80年代のダンスミュージックを今風におしゃれに、キャッチーにアレンジしたエレクトロサウンドといった感じ。その流れは踏襲しつつも、サウンドの幅が広がったというか、どこか骨太なファンキーさやロックの雰囲気も匂わせる。
デジタルに頼りすぎず、生音も随所に披露しているところがこのバンドの底力なんでしょうかね。少々イマドキの甘美なエレクトロバンドと侮ってましたが、今回のアルバムで私にはオルタナティブなバンドにイメチェンされました。前作の路線も好きですけどね。

David Benoit / A Midnight Rendezvous

正直なところど真ん中のJAZZはそこまで聴きません。。。超メジャーなJohn Coltraneの「バラード」はパッと思い浮かぶ名作ですが、それ以外は色々落として聴いてはいるものの、アルバム単位でこれだという作品は、自分自身まだその域には到達していないのが現状。そんな中で出会った名作がこの2022年に現れました。まずは1曲の尺がちょうどいい!(褒めるとこおかしいですが)
JAZZのアルバムでのあるあるですが、1曲が長い場合が多い。その点このアルバムの収録曲はまず6分いかない。ピアノベースですが、とにかく前編通して上品かつ、絶妙な陽のテイストが心地よい。まさにジャケットで表現しているような深夜の月明かりのような赤みがかったオレンジ。とはいえ夜にしっぽりリスニングでもなく、朝に聴いても清々しい気持ちになれそうな楽曲が多い。実はドラムもいい仕事してます。

Mitski / LAUREL HELL

日系アメリカ人ミツキの6枚目アルバム。インディー界隈でちょいちょい名前は聞いたことあるものの、アルバム単位で落としたのはこの新作が初でしょうか。いい意味で独特のインディー感がありつつも、ダークでPOPというオリジナリティで耳にとまりました。程よいエレクトロなアレンジと、毒っ気があるような歌声。
すこぶるハッピーな曲調もあれば、80年代風ダンスっぽいのもあり、色んな側面を見せるも、一本芯の通った世界観も崩さない。調べると今作は3年ぐらいかけて作られた作品のようで、緻密なアレンジなど彼女のディテールへのこだわりが感じられていいですね。


Diplo / Diplo

クラブミュージックの理想の音を追求したらきっとこんな音にまとまるのでしょうと思ってしまうぐらい好みのサウンド。世界的にも超有名なDJ、クラブ界隈のレジェンドですが、アルバム名に自身の名前をつけてしまうほどに本人も認める自信作なんでしょうか。
印象としてはM.I.A.やサンティゴールドをプロデュースしているのもあり、レゲエ、ダブ寄りの音を得意にしていると思ってましたが、今作はベーシックなテクノ、ハウスを踏襲しつつも、彼なりのチャラくならない、大人のワンランク上なEDMを披露している。その辺りは膨大なサウンドストックやアイデアで一味違う手腕がうなる。本気を出せばどこまでも求める音が構築できるような気概すら感じられましたね。


秋山黄色 / ONE MORE SHABON

まず名前がずるいですね。何かクリエイティブで気になってしまうネーミングにまず心掴まれました。前作はロック色が強いイメージでしたが、今作でさらに幅を広げ、表情豊かで、より真っ直ぐな力強いボーカルが印象的。中でもドラマ主題歌になった「見て呉れ」が秀逸。複雑な展開で転調するメロディしながら、サビで一気に突き刺すような破壊力を見せる。
ロックワルツのような尖った楽曲や直球のバラードのようなスロウテンポもあり、引き出しの多さは25歳の青年とは思えないサウンドメイク術。歌詞は繊細で、音はダイナミック。聴きどころが多すぎです。


Rex Orange County / WHO CARES?

前作が音楽誌で軒並み高評価を得ていた新世代ポップ・シンガーの4作目。肩の力が抜けたリラックスムードが全編で漂っていて、とにかく聴きやすい。効果的に入るストリングスも絶妙で、ポップさがぼやけない心地よい入り具合。何よりメロディセンスが抜群です。
晴れた日に散歩しながらヘッドフォンで聴いていたい。どこかにオシャレさも感じるのは、ベニー・シングスが共作しているようで納得。その点が前作とは大きく違う新しいエッセンスとなって私の耳をとらえました。


Kavinsky / Reborn

ダフトパンクよりもダフトパンク。アーティストにはすこぶる失礼な言い方ですが、フレンチ・エレクトロの世界観を一番継承し、輝きを放っている一番手のアーティストであるのは間違いない。ドラマティックで耽美なムードをキープしつつ、ダンスミュージックであることを忘れないサウンド展開は見事。
夜の街を疾走するような、でも軽くならず重みある独特のシンセ音は一聴してカヴィンスキーとわかる並外れたオリジナリティ。ジャケにある黒と赤が楽曲のイメージがよりわかりやすくガイドしてくれてますね。Morgan Phalenを迎えた6曲目「Plasma」のサビっぽいところの空き抜け具合が尋常じゃない。

坂本慎太郎 / 物語のように

元ゆらゆら帝国という枕詞ももはや必要ないぐらい、シンガーソングライターとしての地位を築いた坂本慎太郎の4作目。少しばかりの狂気とふんわりしつつも図太い芯を持つ歌声。この人にしか出せない不思議な世界観のロックという武器は、やはり誰にも勝てないですね。なんでしょうね、このアルバムを聴いてると色んなことがどーでもいいやと思わせる説得力がある。
ジャズのようなムード歌謡風もあれば、ビーチボーイズのようなサマーソング的なアレンジもあり実は音楽的な素養の広さもしっかり出している。ただそれも打ち消すボーカルの存在感。真似したくてもできない3大ボーカリストとして、忌野清志郎、ハナレグミ、そしてこの坂本慎太郎にその称号を与えたい。


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