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野良学芸員が「江口寿史展」に行きました②

書こう書こうと思いつつ①を書いた11月から随分時間がたってしまいました。ダメな野良です…すみません。

ほんとダメ…

世田谷文学館の江口寿史展、大盛況のうちに終了だったようでおめでとうございます(ありまさのお客様が最終日の様子を報告してくださいました)。
私も1度ではありましたが出かけられて良かったです。


さて、前回の最後に私が感じた私的な疑問
「江口寿史の絵はどうして真似したくなるのか?」
なのですが、私が大きくうなずいたのは江口先生が「なりたかった人」が誰なのか…
この展覧会でそれを知って、本当に、心から、納得してしまったのです。

憧れは、ちばてつや先生、だったのですね。
この☝の漫画にもありますが、ちば先生って本当に包容力があって、細やかでいて深みがあり、優しいけれど豪快で…まさに日本漫画界のお母さん的存在。
そしてそんなちば的なるものに憧れて漫画界に入った江口先生…。
恐れ多いと思いつつも、なんだか真似しても許して下さいそうな、そんな気がしてしまうのです…。

文芸の世界で言うと、ものすごい超絶の高等技術を使っていて本来真似すること自体が不可能な太宰治に、時代を超えてフォロワーやチルドレンが絶えないのと似ているような気がします。

これはもう太宰…。
自分の「面倒くさ可愛い」ところを自虐して笑いをとりつつも、同時に寂しく笑ってみせて時にはモテたりもするという、選ばれた人にしか許されない悪行アート(褒めてます)。
自分に酔っている風に見せかけつつ、意外と醒めた視線で内省している(だからしんどい)あたりも共通しています。
ちば先生の芸風とは異なりますが、人間の弱さまでも抱擁して描き切るという点では明らかにそちらの系譜なんだなあ…と。

今回撮影は許可されていませんでしたが、某漫画家さんとの私信のやりとりにも、そんなお人柄がじんわりと…。

人生の翳を愛する躓きの美学。
手塚先生はそれを「理解」はしていらしたと思いますが、体質というか、作風とは相いれなかったと思います(エログロで下手をしたら最後まで読み通すことすらしんどいモチーフの「奇子」が、良くも悪くも読みやすいのは手塚先生のこの体質ゆえかと…)。

ちなみにおじさん漫画家達がキャアキャア「ちばてつやリスペクト」を語りあうだけの動画もよろしければ…。
MCの山田玲司先生も「ちばてつや賞」デビュー。山田先生の絵も真似したくなるぬくもりがあります。

もちろん日本漫画界で手塚先生に影響を受けていない漫画家さんなんていらっしゃらないわけで、江口先生も手塚先生をリスペクトしているわけですが…

今の若い方はどのキャラがどの作品か、作者はどなたか判るかしら…?

などなどいろいろと考えていると、もう会場中をぐるぐると歩き回ってしまい、世田谷文学館から出ていけなくなってしまう…。
まさに幸福なラビリンス。
撮影は不可でしたが昔の仕事場再現のコーナーもあり、ファンは定住したくなるでしょうね…。

江口先生はパロディもすごい
怪獣ものも
SFも
グルメも…(カレー愛を語った作品も面白かったです!)

ミュージアムショップには素敵なポスターが…

絵ハガキが欲しかったのですが、私達が行ったときは欠品が多い日で(残念~)
コーヒーを買いました。

後ろ髪をひきずる思いで会場を出ると、もう陽は落ちていました。

左は帰ろうとした頃にやっと到着したBくん。遅いよ…(笑)
世田谷文学館名物・鯉にご挨拶
「素晴らしい展示でした。また来ます!」

マンガの展示って本当に楽しいですね(≧▽≦)!!
夫は
「思ってたより面白かったな。漫画も買っちゃったよ。
しかし音跳びがな~。せっかく江口寿史がセレクトした80年代音楽が流れてるのに、音跳びがひどくて集中できなかった…。文学館だからそのあたりあんまり配慮してないのかな?」

さすがDJ…そこでしたか。
私はあまり気になりませんでしたが、もしかしたら何かの参考になるかもしれませんし、書いておきます(ダメ出しみたいに感じられたら申し訳ないです…ご参考までに…)。

展示は本当にいろいろな感想がありますね。
でもまとめると
「本当に大満足!!」
想像の何倍も贅沢な時間、空間でした。

江口寿史先生、世田谷文学館の皆様、素晴らしい展示を本当にありがとうございました。

さて野良犬…じゃない野良学芸員、次はどこに行きましょうか…?

ちなみにこの後都庁に行き…
みんなで展望台に上りました
お土産の美人画でまた江口先生のイラストを思い出したりしつつ…
2023年10月15日の東京の夜

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