スポーツ嫌いが「SLAM DUNK」を読みました③
この記事はネタバレを含みます。
今さらではありますが…(^▽^;)
①②では「SLAM DUNK」が
スポーツ漫画だけれど実は勝ちにそれほど価値をおいておらず、むしろ内面の成長を描いていること。
キャラクターが欠点だらけだけれど魅力的で読者に刺さるポイントを沢山備えている、だから1巻から31巻までたった4か月の話で(!)、内容はほとんど「バスケットボールの試合」なのに、スポーツに興味のない人が読んでも全然飽きない…
そんな感想を書かせて頂きました。
湘北高校は県大会で優勝できず、全国大会でも3回戦負けという見ようによってはビミョーな結果。
それぞれがすごい能力を備えていはいるものの、キャプテンの赤木は体育大学の推薦から漏れ、同じ3年の三井はシューターとしてセンス抜群だし中学MVPですがそもそも推薦の話すらなく、花道は大怪我をしてリハビリ中…。
新キャプテンのリョータも冬の選抜はライバルが多くて前途多難。
大体「SLAM DUNK」というタイトルだけれど、主人公の花道は試合でスラムダンクをきちんと決めていない。
流川は全日本ジュニアに選抜されましたが…。
つまり「SLAM DUNK」は彼らがメインキャラの漫画でありながら、
他にもすごい人がいっぱいいるよ
ということをサラッと、でも厳然たる事実としてきちんと描いています。
湘北が勝てなかった海南高校も(山王戦の最後は全力で湘北を応援しているいい子達…)、インターハイで優勝できず、上には上がいる。
県大会止まりだったけれど実力では拮抗する翔陽や陵南も、努力を欠かしていない。
だから湘北は次で彼らに勝てるかすら、分からない。
あちこちに優れたチームがあり、それぞれの人生のストーリーを懸命に生きている選手がいる。
湘北の5人は紛れもないヒーローだし、いい子たちだし、「天才」だけれど、
君たちだけじゃない。
だけど、だから、目の前のやるべきことに地道に取り組み続けるしかない。
試合で勝てるかは分からないけれど…。
ただ、もし結果的に負けたとしても、
自分の人生をきちんと生きたならば確実に「克つ」ことは出来る。
井上雄彦ってすごいなあ…本当にすごい。
私はロスジェネおばさんだから覚えているのですが、「SLAM DUNK」が連載されていた90年代前半は、まだまだ日本全体がバブルの価値観を引きずっていたのです。
経済至上主義、勝たないと意味がない、お金になってナンボ…。
バブルははじけたけれど、「あのイケイケな感じよもう一度」という空気が確かにあって、負けることの価値なんて見向きもされていなかった。
敗者に冷たい…というか、敗者などいなかったことにしたい、視界にも入らない、そのくせ経済や政治のシステムが崩壊しかけている肌感覚もあり、
だから余計に暗いものを排除し、冷静に考えることを避けていた。
ここから、失われた30年がはじまります。
そんな時に作品を大ヒットさせつつ、読者をきちんと勝利に酔わせつつ、同時にこんな激渋のテーマを伝えていたんですね。
「負けたことがある」
というのが いつか 大きな財産になる(山王高校 堂本監督)
「SLAM DUNK」は読者を酔っぱらったまま放り出さない、むしろ覚醒させる…今読んでも、ある意味今だからより理解できる、すごい作品でした。
ああ…私は漫画大好きなのに、漫画の美術館で働いていたのに、漫画から漫画を渡り歩く人生を送ってきたのに、どうして「SLAM DUNK」を読んでいなかったんだろう!!
正直、ベストセラーだから舐めていた…というのもあったかもしれません。
「なぜ俺はあんなムダな時間を…」(三井寿)
今回は常連さんに救われましたが、猛省中です。
これからもちょっとした時間を見つけては、こまめに漫画を読まなくては…。
映画「THE FIRST SLAM DUNK」も見ようと思います。
映画館ではもう見られないし…どうしたらいいのかしら? 配信?
関連書も沢山あるようですね。
井上作品「楓パープル」「カメレオン ジェイル」「バカボンド」「リアル」もあるし…。
読書の秋、芸術の秋、スポーツはしない秋(笑)。
嬉しい宿題がどんどん増えていくのでした。
(おわり)
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