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烈夏空 西域の旅 鮮やかに

 『烈夏空』と書いて『れっかぞら』と無理矢理読む。ヤンキーが詠んだ句みたいだ。ヤンキー俳句と勝手に名付けようかな。

 『VIVANT』というドラマにはまってます。モンゴルと双子みたいな『バルカ共和国』という架空の国が主な舞台だ。
 このドラマと相まって、連日の烈火のごとき暑さとペンキで塗り込めたような青空に、やたらと学生時代の中国大陸の旅を思い出す。
バルカ共和国は、東はモンゴル、北はロシア、南は中国、西はキルギスと国境を接し、モンゴルとの国境の東南部に死の砂漠と呼ばれる広大なアド砂漠がある。このアド砂漠のモデルは、明らかにタクラマカン砂漠である。おそらくロケ地もそうかもしれない。
 北京から列車に乗って中国語で石砂漠という意味のゴビ砂漠を抜け、まさしく「砂」漠であるタクラマカン砂漠の入り口にある列車の当時終点のウルムチまで行った。火炎山をどうしても見たかったので、そこから東へ若干戻りトルファンに行った。そして時間的制約が許せば、最西端の国境の町カシュガルに行きたかった。当時は、そこまで列車が通ってなかったから、バスで移動するしかなかった。高地を行く天山北路かタクラマカン砂漠の南端を沿って行く天山南路か。物心付く頃から妙に砂漠に恋焦がれていたから、できれば南路を行きたかった。だが、事情があって時間の制約があったから果たせなかった。残念無念であったが、もし、何の制約もなかったら、ズルズルと旅を続けて社会からドロップアウトしてしまっていたかもしれない。その境界線で危うく旅をしている人たちを見かけたし、中にはもう完全にドロップアウトしていると思われる人たちも見かけた。
 だから、ドラマの風景を見ていて、主人公たちの砂漠の逃避行を見ていて、否応なしに当時のことを思い出してしまう。セピアに枯れてきた記憶を鮮やかな色彩で頭の中に蘇らせてくる。
そういうわけで湧いて出てきたタイトル句である。

 『VIVANT』の砂漠映像で別に思い出したのが、昔々にあった『マルコ・ポーロの冒険』というアニメと実写を融合させたNHKの番組だ。
その主題歌の歌詞に《夜になおざわめくものよ 魔法使いよ 悪魔よ あるいは闇の天使よ》という部分があるが、それは正しくタクラマカン砂漠を思わせる。作詞作曲をした小椋佳は、曲を創るにあたって、現地を旅したという。曲の最後の言葉は《希望でわたしを蹴って起こせ》であるが、彼が非凡であると感ずるのは、《希望「で」》と書いたところいあると私は勝手に思っている。普通だったら《希望よ》とかやっちまいそうだが、「で」であることによって、自分の中から蹴り起こしている感じがするのである。「よ」だったら、自分の外からの外力で起こしてくださいという他力本願のイメージが付く。あるいは神仏を拝むようなイメージ。神仏に「祈る」ではなく、「拝む」。現地を旅して得た感覚と天賦の才が「で」を生じさせたのだろう。凄い。

(余談 その1)
 私は、TVがないので、ドラマは見逃し配信で見ている。便利だよね見逃し配信。都合の良いときに視聴できて。CMが入るのを不満がる人もいるけれど、それはTVでリアルタイム視聴しているのと同じだから文句はない。無料だしね。

(余談 その2)
 『マルコ・ポーロの冒険』は、アニメの発色も美しく――なにせ一番最初に画面に登場したアニメのベネチアの鐘塔のなんとも言えない深いブルーに一発で私は心を掴まれた――アニメから実写に移っていく墓地のシーンとかの演出、脚本も『天山の少女』(だったっけか?)チェンヨといなどもその話のヒロインの描き方が型切り通りではなく素晴らしかった本当に素晴らしい番組であったが、現在フィルムが残っていない。なぜなら、NHKがそのフィルムを上書き使用しちゃったからだそうだ。熱烈な某アニメファンの知人がレザーディスク、DVDと媒体を変える度にコレクションしていたのを見て、きっとそのうち『マルコ・ポーロの冒険』も出るに違いないとずぅーっと待っていたがちっとも音沙汰がない。あるときその理由を知って愕然とした。(NHK、憎し)とNHKに憎悪までたぎらせちゃったよ。
……って書いていたら、こんな記事を発見

くそぉぉぉ……‼ 知らなかった。知っていたら、這ってでも行ったのにっ!
ここで放映されたビデオは、どっから出たのかと不思議に思って探ったらあっさりとウィキペディアにあった。

なんと、視聴者からの提供らしい。ファン魂恐るべし。当時ビデオデッキを持っていたということは、富裕層の方々か。あるいは映像マニア。一般家庭にはあの時代なかったぜ。富裕層も映像マニアも、私には今も昔も遠い存在で縁の無い人たちだと思っていたが(若干冷ややかな視線を心の中で送っていたりもした)、今は「有り難や」と手を合わせて拝みたい気分。

※なぜ、余談が長ったらしくなるのか。本文より下手したら長い。本末転倒。本文余談転倒。マジで脳構造が自分、オカシイんちゃうと疑ってしまう。


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