見出し画像

活字とシネマ#2:2023年下半期はシャラメ沼に沈む!後編:「デューン 砂の惑星PART2」予告編

こんにちは。
映画と文学に捧げる
深海魚のひとりごとを綴るnoteです。

今回は2023年秋冬公開予定のティモシー・シャラメ主演作品「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」「デューン 砂の惑星 PART2」の予告編感想、後編です。


後編:「デューン砂の惑星part2」予告編感想
(❗ネタバレを含みます❗)

ティモシー・シャラメ主演「デューン 砂の惑星PART2」は2023年7月22日時点で2024年1月公開予定です。前編で紹介した「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」と同じワーナーブラザース配給作品で、最新の予告編映像はワーナーブラザース公式YouTubeチャンネルから2023年6月30日に公開されています。

原作は1965年フランク・ハーバート著「デューン 砂の惑星」。砂漠の惑星アラキスを舞台に主人公の次期公爵ポール・アトレイデスが宿敵ハルコンネン家と死闘を繰り広げるSF小説界の傑作で、これまでにも何度か映像化されています。最近では「メッセージ」「ブレードランナー2049」などのSF映画作品で知られるドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が小説「デューン 砂の惑星」を全二部作の構想で映画化し、2021年に第一部にあたる「DUNE/デューン 砂の惑星」が公開されました。興業収入は全世界4億ドルで、海外の批評サイト「Metacritic」(metascore 74)「Rotten Tomatoes(TOMATOMETER 83%)」などでも概ね高評価を得ていました。


以下は「デューン 砂の惑星 PART2」予告編、
「DUNE/デューン 砂の惑星」本編、
原作小説「デューン 砂の惑星」の感想です。

(❗ネタバレを含みます❗)

まず「デューン 砂の惑星」を楽しむ上で私が特に注目しているkey wordが以下の4つです。

「香料(メランジ)」・・・惑星間の貿易を独占する"ギルド"の航海士が航路予測に使用する物質。抗老化作用を持つ。産出地は惑星アラキスのみであり希少価値が高いため、しばしば紛争の誘因となる。また、修道女ベネ=ゲセリット(後述)の予知能力や演算能力者(メンタート)の論理思考力を増幅させる作用がある。
「ベネ=ゲセリット」・・・予知能力や読真術を操る異能の修道女を育成する団体。
「クウィサッツ・ハデラック」・・・ベネ=ゲセリットによる意図的な遺伝子操作により誕生する男性のベネ=ゲセリット。香料ドラッグの力で女系、男系の両方の系譜に受け継がれる記憶により過去を俯瞰し、同時に極めて高い未来予知能力を持つ。
「リサーン・アル=ガイブ」・・・惑星アラキスの砂漠の民フレメンらの言語で「外世界からの声」の意。異民族の救世主。

この4つのkey wordは主人公ポール・《ムアッディブ(フレメンからの呼称)》・アトレイデスが予知夢や現実世界の出来事から徐々に「自分が何者であるか」を悟る過程に関係するものです。「デューン 砂の惑星」には読真術を操るベネ=ゲセリットである母ジェシカや教母ガイアス・ヘレネ・モヒアム、砂漠の民フレメン、敵方のハルコンネン家、裏で陰謀の糸を引く皇帝など、ポールという存在の謎の鍵を握る多くの人物が登場します。中にはベネ=ゲセリットやフレメンのように予知能力を持つ者もいます。しかしポールの結末については誰も確証を持つことができず、物語は複雑化していきます。ポール自身が道を切り開かない限り誰も真実に辿り着くことができない筋書きになっているのです。ストーリーの大きな軸としては「アトレイデス家VSハルコンネン家」というSFアクション映画となっていますが、「ひとりの少年が自らのアイデンティティーを探求する物語である」という観点でポールの謎を突き詰めてみるのも面白いかもしれません。


次に前作からの主人公ポール・アトレイデスの変化についてです。ティモシー・シャラメが二部作の後編である本作品で2021年「DUNE/デューン 砂の惑星」に引き続きポール・アトレイデスを演じています。前作第一部では公爵家の跡継ぎとして両親の庇護下にあった少年が過酷な運命に翻弄される中で自らの存在意義を問う姿が描かれました。冒頭での公爵家の儀礼用装束に身を包んだポール(=ティモシー・シャラメ)の華奢な体躯と物憂げな眼差しは美しく儚げで、砂漠に着の身着のままで母ジェシカと放り出されるシーンでは「ポール坊っちゃん大丈夫かい!?」と不安で仕方ありませんでしたが、間一髪の生還を繰り返す中である種の悟りを開いたような表情に変化していくポールに「次期アトレイデス公爵」「クウィサッツ・ハデラック」「リサーン・アル=ガイブ」の片鱗を感じました。PART2ではハルコンネン家との戦闘やフレメンに受け入れられる過程での"試練"を通してきっと大物感が増していくであろうポール・アトレイデスをティモシー・シャラメがどのように演じていくのか楽しみです。
ところで、PART2予告編で印象的だった場面があります。常に冷静で動じないフレメンの族長スティルガーが惑星アラキスの大型生物である砂蟲《シャイ=フルード》にポールが乗っている姿を見て驚きに満ちた表情を浮かべているシーンです。おそらくポールに《リサーン・アル=ガイブ》を見出だしたのではないでしょうか。しかしこのシーン、何だか既視感があります。「風の谷のナウシカ」のラストでナウシカが王蟲たちの触手の上を歩き、長老の大ババ様が伝承の救世主とナウシカの姿を重ね合わせ「旧き言い伝えは真であった・・・!」と驚嘆の声をあげる、あのシーンです。(「その者青き衣をまといて金色の野に降り立つべし」) ご存知の方もいると思いますが「風の谷のナウシカ」は小説「デューン 砂の惑星」に影響を受けた作品と言われており、作品の設定上両者に共通点を感じるのも不思議ではありません。「スター・ウォーズ」も「デューン 砂の惑星」の影響を受けた作品の一つと言われています。宇宙と砂漠、惑星間のバトル、預言や超能力、出自の秘密など両作品の特徴を連想すると頷けますね。さまざまなSF作品の源流となった古典的名作としても小説「デューン 砂の惑星」は非常に評価の高い作品なので、ぜひ原作を読んでいただくこともお勧めします。

以上、2023年秋冬公開予定のティモシー・シャラメ主演作品予告編レビューでした。

この記事が参加している募集

#宇宙SF

5,975件

#SF小説が好き

3,065件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?