マガジンのカバー画像

Bounty Dog【14Days】

53
遠く、でもいずれ来るだろうこの世界の未来を先に走る、とある別の世界。人間達が覇権を握るその世界は、人間以外の全ての存在が滅びようとしていた。事態を重くみた人間は、『絶滅危惧種』達…
運営しているクリエイター

2021年12月の記事一覧

Bounty Dog 【14Days】 79-80

79

 激流の川に、ヒュウラは押し流されていた。水中で延々と身をグルグル回転させられる。
 視力と重力が混沌と化した水の世界に閉じ込められて、ヒュウラはどんどん流されていく。轟く水の音に聴力も役に立たず、呼吸すら真面に出来ない恐怖は、標準状態である無表情を完全に崩した。限界まで目を見開いたヒュウラは必死に水面から顔を上げようと手で水を掻く。
 泡立つ水が揺れて出来る波の隙間から顔を出して念願の酸

もっとみる

Bounty Dog 【14Days】 77-78

77

 魚の亜人の背に乗って、ヒュウラは川を渡っていた。自然の水の流れに任せてゆっくりと泳ぐ白鮎族の青年は、水から顔を上げて時々クスクスと笑う。
 無表情で跨っているヒュウラは、首輪の背面に指を掛けたまま静止している。水に冷やされた風が身を震わせると、冷たい魚がのんびりとした口調で話し掛けてきた。
「ヒュウラくん。この川は人間の遊び場として凄く人気なんだよ。僕も人間達が遊びに来てくれるのは嬉しい

もっとみる

Bounty Dog 【14Days】 75-76

75

 ヒュウラは、白鮎族の青年の背に乗って水の中に飛び込んだ。蛇道の水路を通って滝に飛び移り、滝壺に落ちて浮き上がり、渋柿の木と落葉樹が左右に並んで生い茂る谷川を渡って行く。
 亜人に乗って川下りをしながら、亜人は仏頂面で空を仰いだ。色濃くハッキリと形付いていた雲は、時の流れと共に淡く薄い雲に変わっている。
 近付いてくる冬季の訪れを感じる肌寒さを含んだ風が、水飛沫に濡れる身体に吹き当たる。あ

もっとみる

Bounty Dog 【14Days】 71-74

71

 白鮎族の青年との游泳はスムーズにされた。ヒュウラを背中から抱えた青年は水の洞窟を泳ぎ抜けて沢を渡り、先で流れ落ちる大きな滝を下った途中で岩壁に開いた大穴へと跳ね移る。
「僕も肺呼吸なんだ。家ではいっぱい息が出来るよ、安心してね」
 瞼を閉じて俯いているヒュウラに、青年は口パクで話し掛けてくる。返事も反応もせず四肢を力無く垂らしているヒュウラを抱えたまま、魚は壁の中の水路を通り、丸い形をし

もっとみる

Bounty Dog 【14Days】 68-70

68

 保護した鳥の亜人を部隊に渡して、デルタとヒュウラは山頂付近まで移動した。見事な自然の美しい景色が一望出来るその場所は、岩が水圧で削れて作られた掘の間を澄んだ清らかな水が流れていた。幅の広い川が地の殆どを這っており、水の中にさまざまな生き物達が楽園を形成している。
 川が流れるプールのように楕円形になっている広場の真ん中で、デルタはヒュウラを停止させた。川の淵に並んで立った人間と亜人のコン

もっとみる

Bounty Dog 【14Days】 66-67

どんなに水を堰き止めても川の流れは変えられない。いずれダムは壊れて、水が自然のままに流れていく。

66

 この土地で吸う空気は、支部のある丘よりも遥かに澄んでいた。木々の艶めきも、草花の鮮やかさも、水の輝きも、人間には作り出せない圧倒的な美を放っている。
 『世界生物保護連合』3班・亜人課の現場部隊は、北西大陸にある水郷地帯で保護任務を行なっていた。世界的に有名である巨大な河川から木の枝のよう

もっとみる

Bounty Dog 【14Days】 64-65

64

 ミトは首を縦に振って応答し、銃撃を開始した。大国の狩人達も意気揚々と撃ち返してくる。デルタは通信機を耳に挟んで側面のスイッチを押し、他の保護官達に連絡をした。両手で構えたショットガンが幾度と火を吹く。狩人が何人も吹き飛んで倒れる度に、リングの目が輝いた。
「こちらコルクラート。大勢の敵と応戦している!直ちにラグナルと私を援護してくれ!!」
『了解しました、リーダー!直ぐに其方に向かいます

もっとみる