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ミラノ第6週 スポーツマーケティング入門からJリーグの存在価値を語り合い、バルサ対ヘタフェ戦のチケットが6割引だった理由も考察

今週はひたすらスポーツマーケティング尽くしで、週末はクラスメイトとバルセロナへ行きました。実際にスタジアムへ行ったからこそ思えたこともあったり、百聞は一見に如かずなバルセロナ旅行でした。

時代は変われど基礎は変わらず

10年以上も前に私は大学でスポーツマーケティングの講義を受講しましたが、良い意味でFIFAマスターの授業内容は当時と共通点が多かったです。それはつまり、スポーツマーケティングとは「需要を生み出し、供給し、かつ収益を最大化させる」こと。

とはいえその手法は10年以上も経てば変わるもので、ソーシャルメディアの発達により「直接の口コミ」だけでなく「ネット上の口コミ」が大きな役割を担うようになりました。私の大学時代にはミクシィが唯一と言っても良いほどで、今ではインスタ、ツイッター、フェイスブックなどなど手法は様々。また、通信環境の進化によってYoutubeやTikTokをはじめとした動画メディアを活用して「ファンとの接点」を多く設けることが可能になった(=求められる)時代です。

時代の変化によってスポーツ界のマーケティング事情がどのように変わったのかというと、メジャーな団体やビッグクラブは営業範囲が劇的に広がりました。例えば欧州メガクラブはシーズンオフに北米やアジア諸国へのツアーだけでなく、自前のアプリなどを用いて日常的に試合以外の情報(映像)を簡単に届けられるようになり、かつ世界中のファンの個人情報や嗜好を蓄積して効果的な情報発信とマネタイズが促進されました。

それではマイナー競技や小規模クラブはどうなのかというと、「うちは資金も人材も不足しているので・・・」が許されなくなったとのこと。例えばスマホ1台で試合の舞台裏を撮影して発信できるようになり、試合会場の来場者だけでなく自分たちの存在を認知していない人にも格安もしくは無料でアンケート調査ができるツールも発明されています。

より効率的、効果的な情報発信や分析が可能な時代になったため、これらの活動に意欲的に取り組んでいる団体やチームと、そうでない団体やチームとの「営業力」や「認知」の差はさらに広がるとのこと。

そして私の大学時代の恩師である原田宗彦教授が仰っていた「What business are you in?」を思い出しました。FIFAマスターの講義でも航空会社は乗客をA地点からB地点へ移動させるだけでなく、自社のサービスを選んでもらった理由(値段、サービスの質、予約までのクリック数、搭乗のしやすさ、専用アプリの使いやすさ、)を細かく分析しないと、既に取り組んでいる競合に乗客を奪われてしまうとの実例が紹介されました。また、他の航空会社と乗客を奪い合うだけでなく、バスや電車など他の移動手段ではなく飛行機を選んでもらう、航空業界のパイを広げるところまで意識しないと生き残れない時代とのこと。

フィリピン人の同級生から見たJリーグ

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ミラノには日本食もしくは日本風レストランがあちこちにあり、FIFAマスターがミラノの拠点にしているボッコーニ大学から徒歩5分ほどにあるレストランがあります。ここでは2,000円ほどで食べ放題が提供されているので、2週に一度クラスメイトと夕飯も兼ねてランチに大食いしています。

今週はボツワナ人、韓国人、フィリピン人のクラスメイトと訪れた際に、いかにして日本のサッカーはJリーグを通じて人気スポーツになったのかという質問を受けました。私は彼にJリーグ開幕時に初代チェアマンの川淵三郎氏が「スポーツを愛する」方々へ述べた言葉が全てだと伝えました。詳細は以下リンクをご参照ください。

娯楽が溢れる日本では「サッカーファン」だけをターゲットにするのではなく、Jリーグを通じていかに人々の暮らしを豊かにできるかを考えないとファン・サポーターを増やすことは困難です。だからこそ「試合内容が面白いです」だけではなく、スタジアムでどのような経験を提供できるかも重要です。コアなサッカーファンには競技レベルの高い試合を、そうでない方には美味しい食事や楽しいイベントなども提供することでようやく「週末はスタジアムへ行こう」と思ってもらえます。

では美味しい食事や楽しいイベントだと何でも良いのかというと、そういうわけでもありません。なぜなら日本には美味しい食事や楽しいイベントはスタジアムに行かなくてもショッピングモールなどで経験できます。だからこそ顧客の嗜好を分析し、最適な休日の過ごし方としてスタジアムを選択してもらう必要があるのでは、という話をしました。

これぞまさに「言うは易し行うは難し」であり、フィリピン人のクラスメイトからは「フィリピンはやるべきことがたくさんあるけれど、サッカー大国ではない日本が実現できたように、おれも頑張るからよろしくな!」と熱い言葉をもらいました。そして前職がサッカークラブや競技団体だったクラスメイトたちからもその経験談を多く聞かせてもらい、日本でも日々奮闘されている方々のリアルな経験談やサッカークラブの魅力がnoteをはじめ、より多くの方々に届けられる「情報共有の時代」の便利さの凄さを実感しました。

駆け足でバルセロナ観光

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週末はボツワナ人、韓国人、パレスチナ人のクラスメイトとバルセロナへ行きました。1番の目的はバルサ戦の観戦だったのですが、バルセロナで観光をしないわけには行かないので、限られた時間内にて駆け足で街を巡りました。宿泊先はサグラダファミリアから徒歩5分のアパートメントホテル。ハイシーズンでなかったからかもしれませんが、4人でシェアしたので1人3,200円ほどでした。

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初日は徒歩のみで3万歩近く歩いてヘトヘトになったので、2日目は4時間で1,300円ほどのレンタサイクルを借りて街を駆け巡りました。私たちが訪れたサグラダファミリア周辺地域は道が平坦かつ自転車専用レーンが整備されていたものの、さすがは大都市、交通量と信号が多かったのでGoogleマップが提示してくれた以上に移動時間がかかったので参考にされる方はご留意ください。

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まさか2月にビーチでのんびりできるとは想像しておらず、ムンジュイックの丘をキャンセルしてしまうほど洋服のままビーチで寝そべってのんびり日光浴を満喫しました。

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移動の途中では人工芝のグラウンドで少年サッカー大会が開催されており、大都会の真ん中に立派なグラウンドがあることに「さすがサッカー大国スペインはすげー!とはいえおれたちの国もこうありたいよね」と言う言葉を交わしたり。何よりも自転車で移動中にこのグラウンドを見つけて誰もが「ちょっと見て行こうぜ」と迷いなく同意したことにいかにクラスメイトに恵まれたかを実感しました。

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ちょうど今週末はポブレノウ地区で「光の祭典」が開催されており、月のモニュメントやプロジェクションマッピングなどが展示されていておしゃれでした。

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また、バルセロナはどこか私の地元である横浜のみなとみらい地区や関内周辺に雰囲気が似ており懐かしい気分になり、思わず高校時代のようにクラスメイトと座ってのんびり語らいました。

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初日の夜は知人に教えてもらったレストランやクラスメイトがリストアップしていたレストランが満員だったためバーガーキングだったのですが、歩きまくった後のビールは最高でした。そして2杯目の元気は残っておらず、部屋に戻って数分で寝落ちしました。

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2日目の夜も知人に教えてもらったバルやレストランは満員だったものの、クラスメイトがリストアップしていたバルは待ち時間なしで入店できて海の幸を満喫。バルセロナは天気も食事も最高で、海もあるので観光を満喫するには最低でも1週間は必要との結論にたどり着きました。

カンプノウの雰囲気にゾクゾクできなかった

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イギリス人のクラスメイトとカンプノウで合流しました。実はこのヘタフェ戦の観戦チケット、一部の座席が3枚〜6枚のグループで購入すると6割引になるため今週末にバルセロナを訪れました。

ではなぜバルセロナは複数枚を購入すれば60%もの割引価格を提供していたのかをクラスメイトたちと話していたのですが、「年間シート保持者のリセールが多いから」と言う仮説にたどり着きました。

そしてネットで「Barcelona ticket resale」と検索すると2018年7月の英字記事ですが、試合20日前までに年間シート保持者はリセール申請をすると一定の特典を受けられるとのこと。

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99,000人もの収容人数を誇るカンプノウを満員にするには複数枚で販売する方が効率的です。そして「リセールに出すのが年間シート保持者=熱狂的なファン」とし、「そうでない層=複数人で訪れる家族」と仮定するのであれば今回のキャンペーンは「ファミリー向け」と謳っていることが納得できました。

実際にカンプノウを訪れ、同キャンペーンでチケットを購入した私たちの座席エリアは4〜5人の家族連れが多かったです。試合中のスタジアムの雰囲気も先週のミラノダービーやプレミアリーグなど男性9割ぐらいの鳥肌が立つようなゾクゾクする熱狂的な応援よりも、子供や女性の歓声も多く聞こえて「想定外」でした。

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「いやー、カンプノウって静かな家族連れや写真撮影に勤しむ(自分たちのような)観光客ばかりで”本場のサッカースタジアム”って感じがしないよな」と切り捨てるのは簡単ですが、それでは話が発展しません。そしてゴール裏の応援団長らしき方々試合中に何度もマイクを片手にスタジアム全体に応援を煽っていたように、客席から生まれるスタジアムの”熱狂”に変化が生じていることを感じましたが、これからバルセロナはどうなるのかを試合を見ながら話し合いました。

そして試合後、韓国人のクラスメイトが夕食時に「世界最高峰のFCバルセロナの試合会場が男性ばかりの殺伐とした雰囲気ではなくて、家族でも訪れやすい雰囲気なのは良いことなのでは」との言葉にピンと来ました。まさに冒頭のマーケティングの講義について述べた通り「需要を生み出す」必要があり、それはまさに「年間シート保持者への需要が低い(リセールが大量発生)ならば、別の層にアプローチしなければいけない」ことであり、FCバルセロナは当然のことをしているのではないでしょうか。

メッシ後のバルサはいかに集客するのか

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ではそれはなぜなのか。私たちは「チャンピオンズリーグの重要性が増したり、国内リーグでのチーム間格差が拡大したことで国内リーグの価値が相対的に下がっているのでは」と仮定しました。バルセロナが次週もホームで対戦する国内リーグのエイバル戦でまたもや60%引きの大セールを実施しているのは、やはり国内リーグは注目度が低くてチケットが売れていない、もしくは年間シート保持者のリセールが大量発生しているからなのではないでしょうか。

そう考えると戦力の均等化は大会の魅力を維持することに本当に重要なのではないでしょうか。日本でもプロ野球やJリーグでは注目試合はダイナミック・プライシング(航空券やホテルと同じく需要が高いほど値段が高騰、逆もまた然り)が導入されていますが、これは戦力の均等化がある程度されていないと注目度が低い試合のチケット販売は相当に困難なのではと今回のカンプノウ訪問で思いました。

そして今のバルセロナならば大量のリセールが発生しても、メッシの存在がある限りは今回のようなセールを実施してスタジアムを埋めることはできるかもしれません。ただし、いずれ訪れるであろうメッシ退団後はいかにして今回の私たちのような「観光客」や「家族連れ」などのライト層を惹きつけるのか注目です。

ちなみに試合前にはスタジアム外にて以下動画のようなマーチング部隊(?)や、楽天社が催すキックターゲットなどのイベントブースも見受けられました。これらは昨年9月に渡欧してから訪れたイングランドとイタリアのスタジアム観戦時に見たり、友人の話を総合してもユベントスやバルサなどのメガクラブでしか今のところ発見できていないので、今後もより多くのスタジアムを訪れてその傾向を確かめたいです。

そして何よりも、今回のバルセロナ訪問で考えた仮説を先日のFCバルセロナから来られたゲストスピーカーの講義前に調べておいて本人に質問すべきだったと物凄く反省しております。

とはいえバルセロナ

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それでも世界最高の歴史と実績と人気を誇り、大観光都市を本拠地とするFCバルセロナ。サクラダファミリアの隣にグッズショップが併設された小規模ながらミュージアムがあり、街中にもグッズショップが多くあるなど至る所でFCバルセロナの存在を感じました。

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そしてFCバルセロナでさえ6割引の大盤振る舞いをしなければならない程チケット販売に苦戦していることを学ぶことができたり、2月なのにビーチでのんびりしたり、まさに「百聞は一見に如かず」な旅でした。

一度は行きたかったバルセロナ

最後になりますが、バルセロナは私が何度か当noteで述べていた大学時代に見て海外留学に憧れを抱いた映画「スパニッシュ・アパートメント」の舞台です。今回の旅でも駆け足でしたがロケ地を訪問しては「ああ、ついにここに辿り着けた!」と感慨深くなりました。

そしてFIFAマスターはバルセロナを舞台とはしていませんが、世界中からサッカー好きが集まり、価値観の違いから時に衝突したり、お互いの国のサッカー事情を学び合えたり、まさにこの映画のような環境です。

入学前はただただ「スパニッシュ・アパートメント」の世界に憧れを抱き続けていましたが、入学後はこの映画の世界に入り込んだかのようであり、しかもそれがサッカーの世界であると言う私にとっては刺激と充実感に満ちた環境です。

来年以降も多くの方がFIFAマスターに興味を持って頂き、それが日本サッカーの発展につながるよう、引き続きガンバります!

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