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発達障害者が初めて一人暮らしするのに200万かけた話

ご無沙汰しております。

発達障害にセックス依存症を診断され、もはや実家で飼い殺しのようにゴミ屋敷に埋もれていた僕でしたが、年末にようやく毒親から逃げ出すことができました。
念願の一人暮らしです。

一人暮らしを考え始めて早14年、14年ですよ。新卒で入社した会社が倒産してから就職が決まらないまま個人事業主としての選択を余儀なくされて9年、ようやく発達障害を診断されたばかりか、実は幼少期には既に精神病だったことまで判明したわけです。
そんな僕がどうやって毒親から逃げ出したのか、発達障害があるとなぜここまで実家を出るのが困難なのか、その実態の話をしたいと思います。

賃貸契約の壁

まず一番最初に立ちはだかるのが賃貸契約ですが、当然ながら審査があるわけですね。ところが発達障害者は、正規雇用に就きたくても就けないことが少なくないわけです。よしんば障害者雇用にありつけても低賃金はザラだったり。
僕の場合、転職活動で100社応募して書類通過2~3社ほど、バイトすら受からなかったので税の督促に10年苦しみました。

さて、このような状態で部屋を貸してくれるところなんてまずありませんね。そこで発達障害者にとって唯一の確実な選択肢が、UR賃貸の一時払いという方法です。

「家賃等の一時払い制度」ってなに?

家賃等の一時払い制度とは、契約時に一定期間(10年以内の年単位の期間)の家賃と共益費をまとめて支払うことができる制度です。一時払い期間に応じて、UR都市機構が定める割引率により家賃等が割引かれますので、その期間中、割引かれた家賃等でお住まいいただけます。詳しくは、URの店舗にお問合せください。

UR賃貸では、1年~10年の年単位で家賃を先払いすることにより、審査なしで入居できる制度があります。これは収入の安定しない傾向のある発達障害者にはとても有利な制度です。しかしながら、この制度の唯一にして最大のネックが初期費用になるわけです。

家賃が5万円だとすれば、1年分でまず60万必要です。それだけでなく、敷金が2ヶ月ぶんと共益費(2~3000円程度)が1年分で、概ね家賃15か月ぶんがかかります。
一般の賃貸と違って礼金がないとはいえ、場所にもよりますが60~80万円は最初にかかってしまうわけです。

知人から聞いた話ですが、これは一般の賃貸の相場よりも、同じ家賃の場合で1.5倍~2倍ほどになるようです。この大金を用意するのは障害者にとって酷なことです。

初期費用の壁

住居が決まったら次は家具と家電ですが、発達障害者は本当に家事ができるのかどうかを自分の特性から見極めなければなりません。
まず自分の特性を受容できるかという壁がありますが、いずれにせよ発達障害に共通していることは、工数が多いほど生きづらさが増すということ。そこで工数を減らすための家具と家電選びが重要になるのです。

工数を減らすために役に立つ家電といえば、
・ドラム式洗濯機
・ロボット掃除機
・食洗機
・オーブンレンジ
・自動調理鍋(ホットクック等)
あたりでしょうか。これがあるのとないのでは大きな差があります。当然それなりの値段がするわけですが、全部揃えれば普通の家電より数十万円も高くなりますね。

家電は一度買ったら買い換えるのは困難です。これが家電のハードルを高くしています。
慎重に選ぼうと言いたいところですが、これは最初からこれらの家電を揃えることがやはり正解でしょう。妥協は許されません。

収納の壁

発達障害にとって最大の壁は収納です。おそらく大半の一人暮らしの発達障害者がここでつまずいていることでしょう。ですがこれは、考え方を変えればある意味一番楽な壁かもしれません。

家具を買うということは、そのこと自体が収納に制約をかけるということです。たとえば、タンスを買えばそのタンス以上の容量の服は入りません。服が増えても、タンスという収納単位が大きいので簡単には増やせません。結果、収納できない服が増えて部屋に散乱していきます。そして断捨離が難しい特性を持つ人が少なくないので収納を詰んでしまうのです。

これには解決方法があります。収納単位が最小の家具を大量に買うのです。本が増えたら最小単位の本棚を増やせばいいのです。服が増えたら1段のボックスを買い足せばいいのです。
たとえばこんなカラーボックスがあります。

こういうやつは複数積み重ねて使うことを想定しています。レイアウトが自由にでき、収納を増やしたいだけ増やせます。組み合わせ次第で完全無欠の収納も夢ではありません。

しかしこれも弱点があります。商品が絶版になるとあとから収納が拡張できなくなります。なので同じ規格の他社の商品を探す等の工夫が必要になります。
大事なのは規格です。同じ規格のものだから積み重ね(スタッキング)ができて収納の自由度が上がるのです。この方法は規格を揃えることが生命線ですが、これが難しいのです。
特に新商品が続々と登場する100均は鬼門です。いま使うぶん以上をストックし続けないと気がつけば絶版、規格変更はしょっちゅう。ロングセラーを探さなければなりません。同一規格のものを集め続けるのは小さいものほど難しいです。

決まった規格のものを揃えるのにもある程度の予算が必要で、小物だけでも万単位になります。そして最小単位の家具も数が多ければ組み立てに相当な手間を要します。作業的にもハードルは高いです。

障害者の生活に妥協は許されない

一人暮らしをするにあたって、発達障害者は特性をクリアしなくてはならないので費用が高額になりがちです。
ただひとつ、特性に対する無力を認めて、電気など文明の力に頼ることが発達障害者に必要なことです。そのための道具が便利な調理家電や新型の家電だったりするのです。

この考え方は依存症治療の12ステッププログラムのステップ1・2に基づくものです。すなわち

1. 私たちは依存症に対して無力であり、思い通りに生きていけなくなったことを認めた
2. 自分を超えた大きな力が私たちを健康に戻してくれると信じるようになった

これを頭に入れておくだけで随分な差が出ます。なによりも自分ができないことを発達障害のせいにしていい、いやむしろするべきだというところからすべてが楽になるわけですから。逆に言えば、いま苦しんでいることがあるなら、それは何かのせいにできていないということです。

妥協しないということは、いろいろなことを諦めるということです。恋愛依存症の自助グループでは、この諦めるということを「敗北宣言」と表現していますが、ある意味すべてを投げやりにするということが近道になりそうです。

最後の壁はやはり予算

これらのことを14年間、実家のキッチンとゴミ屋敷化した自室で悟った僕は、心構えだけは完璧でした。しかし如何せん予算が問題です。

そこにコロナの影響で、降って沸いたように持続化給付金が棚ボタのように落ちてきました。まず軍資金100万円ゲットです。
そして次は自治体の給付金と文化庁の補助金です。計34万入手しました。これで軍資金144万円です。

しかし結果的にはそれでも足りませんでした。既に見切り発車で物件を契約していたことで、実家から解放されて精神的に安定したので良かったのですが、やはりそこはADHD。収納に3ヶ月かかりました。
主因は軍資金が途中で尽きて収納用具を買えなくなったことです。仕方ないので片付くまでは結局実家に住んでましたが、そこからは必要なものが揃ってない状態で一人暮らしをスタート、そして障害年金の受給が決まったことにより、どうにか最近必要なものがそろったというわけです。

かかった額は概算で以下の通り。

実際には娯楽でSwitchとPS2を買い足してるのでほぼ200万です。これでようやく思った通りの一人暮らしになりました。文字数の関係で省略してますが、調理家電を中心に中古がだいぶ含まれています。それでも200万に膨れ上がってしまうのです。

発達障害者の人権確保には金がかかる、これは当事者の共通認識なのかもしれません。障害者の生活力を奪う毒親の業は根が深いのです。

コロナの影響による起死回生の救い

コロナは未曾有の国難ではありますが、この国難に救われた人がいるのも事実で、僕もその一人です。
そもそも平時が発達障害者にとって生きづらい社会だったのであり、これが未曾有の災害によって壊されていく様はむしろ美しくすらあります。生きづらい社会を一旦リセットし、生きやすい社会が再構築されるのならこれほどのチャンスはないでしょう。コロナは福祉です。
そこで持ちこたえられなかった人は、言い方は悪いですが地球の自浄作用に適応できなかっただけなのでしょう。健常者と障害者の立場が逆転する日は近いのかもしれません。

コロナだけでなく、3.11や数々の地震や台風など、そのすべてがこの生きづらい社会をリセット仕組みだと考えると、障害者にとって契機がそこらじゅうにあるかもしれません。毒親育ちの皆さん、脱出するなら今しかないのではないでしょうか。

毒親脱出を考えている人の参考になれば幸いです。

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