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Fieldism必聴新曲リスト August 2023 (Part.2)


前回の新曲特集はこちらから↓


9/30(土) ''Buried Alive III'' 日程近づいてきました。予約はお早めに!
(各バンドからでも取り置きできます)


 BLOODAXE FESTIVAL, SUMMER BASHと毎年恒例のハードコア強化月間始まりましたね。残念ながらBAXEがタイ出張とバッティングしており不参加ですが、SUMMER BASHは何とか時間作って行こうかなとは思ってます。いつもお世話になっております、Ryotaです。

 先週は中国絡みで仕事でいろいろあったので、厄払いもかねてVesper the Aerial主催のメロデスリフ搭載イベント「イエテボリ神社」第一回例大祭に遊びに行ってきました。ライブレポはVo. Kiske氏が上げたのでそちらをご覧いただければと思いますが、筆者としても久々のメタルイベントだったんでずっとメロイックサイン掲げっぱなしでした。

 今回のラインナップは「メタル・メロデスリフ」を軸にしつつも、その振れ幅と一貫性のバランスがオーディエンスからしても絶妙だったなと感じております。これはKiske氏もアピールポイントとして言及していましたが、4組目のメロディックパワーメタルValhallaからの5組目のメタル x ハードコアのRuns In Bone Marrow、あそこの転換点は流石だと戦慄しました。可憐で壮大な世界観を提示するライブの余韻もつかの間、一気に男臭いタフな現場主義のライブパフォーマンスに違和感なく空気を換えていてとんでもなかったです。

 語りたいことはあと10000字くらいありますが、気が向いたら久々にライブレポ上げようか迷いますね。



前置きはこれくらいにして、今回も行きましょう。


リストアップの条件ですが、下記2点です。
1. 8/18~8/31にフィジカル/ストリーミング/DL販売/MVのいずれかが解禁された作品(基本的により多くの人にアクセスできる手段を優先します)。
2. フルアルバム or EPのリリース時期がある程度明確にアナウンスされている作品の先行シングル、および既存楽曲のリマスターやカバー等は選出対象外。ただしアルバムのデラックス盤のみetc.に収録予定の楽曲は選出対象。


Movements - RUCKUS!

アルバム (8/18)

 アメリカ・カリフォルニア州オレンジカウンティを拠点に活動しているエモ/オルタナティブ・ロック / ポストハードコアバンドバンドの最新アルバム。たった1回のショーで現在所属しているFearless Recordsとの契約を勝ち取り、筆者も卒業旅行でSenses Failのサポートアクトとしてトッパーで出演していた彼らのライブを観たことがあるのですが、Basement, Citizen, Title Fightあたりから影響を受けたサウンドとVo. Patrick Mirandaの静と動を引き出した表現力豊かなボーカル~スポークンワードが織り合わさり、初見&予習なしにもかかわらず鳥肌が立ったのを今でも覚えています。

 TURNSTILEHOLLOW SUNSの作品にも手掛けた実績があり、グラミー賞にノミネートされたWill Yipプロデュースによる3枚目のアルバム ''RUCKUS!'' は、GorillazThe Strokesなどの様々な影響を取り入れた意欲的な作品に。それまでの作品と比べポジティブで明るい雰囲気や自由な精神とアティチュードが伺えます。子供たちの合唱から入るイントロが印象的なTr.1 ''You're One Of Us Now'' からそのエネルギー溢れるオルタナティブロックを提示しているとこから「今回はどこか違うぞ」と身構えさせてくれます。バンドとして新路線となるのは純粋なラブストーリーを描いたポップなTr.4 ''Heaven Sent'' とピアノを取り入れよりPatrickのボーカルの成長が顕著に表れているTr.5 ''Tightrope'' でしょう。

 今回は振れ幅も広くアプローチもより多彩になりましたが、初期のエネルギッシュなスタイルは健在でTr.6 ''I Hope You Choke!'' やTr.9 ''Dance With Death'' あたりもお勧めです。



Tapestry - The Pain You Desire, The Love You Deserve

EP (8/18)

 オーストラリア・ダーウィン出身、現在はメルボルンで活動しているポストハードコア/メロディックハードコアバンドの最新アルバム。いくつかのシングルを経て2018年にリリースされたEP ''Ghost of Me'' から個人的に追いかけているのですが、近年のCaseyThe Plot In Youを彷彿とさせるエモーショナルなメロディやドラマ性を重視した作風、Vo. Tom Devine-Hurrisonの伸びやかで滑らかなクリーンボーカルと、感情に訴えかけてくるアプローチに富んでいるバンドの印象。2020年 ''Never Felt The Same'' 以来沈黙を保っていましたが、今年の春に ''Hutchison Terrace'' を引っ提げて活動を再開、音源のリリースが期待されていました。

 キャリア初のフルアルバムとなる ''The Pain You Desire, The Love You Deserve'' は、前作で確立させたTapestryの作風を多彩かつコンセプチュアルな方向に発展させた作品に仕上がっており、Thousand Belowをもう少しオーストラリアの空気に寄せたかのような雰囲気があります。また、その耽美さ溢れるアートワークは近年のThornhillを彷彿とさせるものがありますが、それに違わずTr. 6 ''Marionette'' や Tr.10 ''Violent Pictures'' では幻惑的な世界観を違和感なくブレンド。ただ、メロディックハードコアの要素も捨てておらず、Tr.8 ''Descent'' では同じオーストラリアのBloomからVo. Jono Hawkeyがfeat。Jonoの悲痛なシャウトが疾走感あふれる曲調とTomのクリーンにマッチしています。

 Tr.7 ''Rive'' ではシンセ主体のサウンドを、アルバムを締めくくるTr.12 ''Lonely, Lonely'' ではソフトなアコースティック主体なんですがそれもこの作品の振れ幅を持たせており、コンセプトにも溶け込んでいます。



Creak - Depth Perception

アルバム (8/18)

 イギリス・ニューカッスルを拠点に活動しているニューメタルコアバンドの最新アルバム。Lotus EaterGraphic Natureなど、イギリスには定期的にニューメタル要素の強いユニークなバンドが定期的に出てきている印象ですが、このバンドはVein.FM156/Silenceあたりを彷彿とさせる(いい意味で)「カオティック」「粗雑」ということが似合う印象を持ちながらも、バンドがFFO: Vein.FM, Alpha Wolf, Oceans Ate Alaskaと語る通り荒々しい音像と目まぐるしい展開の中にもモダンなエッセンスも取り入れており、そのバランスが絶妙です。

 アメリカのメタルレーベルProsthetic Recordsとの契約を果たし、Ex. LOATHEのGt. Connor Sweeneyプロデュースによってリリースされたデビューアルバム今作 ''Depth Perception'' は、アートワークからも想像できる通り自己嫌悪や罪悪感や喪失などネガティブで混沌としたエネルギーを爆発させた作品。目まぐるしい展開とヘヴィなリフが目立ちますが決してそれ一辺倒ではなく、Tr.5 ''Restless Dreams'' やTr.10 ''Cold Shoulder'' ではDeftonesをはじめとしたオルタナティブでセンチメンタルなVo. Jack Dunnのクリーンボーカルも搭載。また、ところどころ挟まれる不穏なSEもアルバムのダークな世界観を効果的に演出しています。

 あとアンビエント要素が随所に挟まれる部分も聴いてて面白いです。Tr.6 ''Harrow'' の中盤からTr.7 ''Left To Heaven'' とシームレスにメロウなパートが続いているのもアルバムの曲順として正解です。


Invert Hourglass - Peacebreak

シングル (8/19)

 新潟を拠点に活動している、メタルコアバンドの最新シングル。昨年12月の盟友Laikaとのスプリット ''Search for Hope, In this Chaos'' を経て、4月にリリースされた現名義として初のEP ''Leaving, And Beginning'' は、前名義Curse of my handsから続くこのバンドの歴史の集大成としてリリース。その中でも前名義を曲名にした楽曲は「忌まわしき過去との決別」の決意表明として国内のリスナーの間で一気に注目を集めただけでなく、a crown of rebellionのワンマン公演のオープニングアクトにも抜擢されました。

 そんなキャリアとして一区切りついたInvert Hourglassがリリースした今作 ''Peacebreak'' は、タイトル通り自分たちの中にある「当たり前」を破壊し、既存の楽曲とはまた新しい方向性を提示する一曲に。筆者は音源リリース前に一度ライブで観ているのですが、最大のポイントはEDMの四つ打ちを取り入れたアップテンポな作風やピアノサウンドを大々的に取り入れたアレンジ。ただそこにピコリーモのようなチャラや安直さはなく、今まで積み上げてきたソリッドでシリアスな世界観を違和感なく織り交ぜているのが特徴的です。また、チューニングも下げたことでより重厚感と浮遊感のコントラストを鮮やかにしているのもポイント。

 先日特集をあげた通り、今月末のBuried Alive IIIで初大阪上陸が控えているInvert Hourglassですが、この曲もセットリストに入ると思いますのでフロアで踊れる人は集まりましょう。


Gate of Hopeless & Whispers - A Split Document

スプリットEP (8/23)
フィジカルのみ。下記からお買い求めください↓

 大阪を拠点に活動しているフューリーエッジ・ニュースクールハードコアバンドGates of Hopeless。ハードコアのアグレッションとメタルからの様式美を感じる単音リフやドラマ性を感じるリードは膝付き必至で、2021年にリリースされたデビューアルバム ''In The Twilight Of Nocturne'' は全国各地でニュースクールの熱を一気に燃え滾らせたことも記憶に新しいです。対するWhispersはタイのメタリックハードコアバンド、KickbackHatebreed影響下の単音リフとモッシュグルーブがウリで昨年はXIBALBAとBLOODAXE FESTIVALにて初来日が実現。今年も同フェスへの出演が決定しています。そんな前回ツアーで親交を深めた盟友がタッグを組んでスプリットEPをリリースしました。

 Gates of Hopelessは兼ねてからライブで演奏されていた新曲、''Burning Season'' ''Other Side of the Truth'' と、伝説的なフューリーエッジxREPRISALxの ''abyss'' カバーの3曲を収録。特にTr.2 ''Other Side of the Truth'' はex-Crystal Lake/現IndicationのVo. Veronが友情ゲストで出演。特にTr.1はこれまで以上にFURYな単音リフと刻みで思わず笑顔で膝付き、最後の最後まで気が抜けないスリリングな展開は必聴です。

 Whispersは新曲 ''Chains of Hate'' ''The Ugly Irony'' の新曲2曲と、彼らが世界で最もリスペクトしている伝説のニュースクールハードコアState Craftの名曲 ''Unity and Fight'' をカバー。微笑みの国タイのそれとは思えないボーカリストのブチギレシャウトと紙やすりのような音像のメタリックサウンドには圧倒されます。個人的には先行でMVが出ている ''Chains of Hate'' の単音リフが一番のハイライトです。


UNMASK aLIVE - 故郷

シングル (8/23)

 京都・福知山出身ポップパンクバンドの最新シングル。昨年も話題に事欠かない1年を慌ただしく過ごした彼らですが、今年も年始からアクセル全開。配信限定シングル ''Moon Bride'' の実質的なレコ発としてGt. テツヤとVo. KDがそれぞれ個人企画、さらに5月にはDr. タバタ脱退前最後のライブとして新神楽で ''Based In The Basement'' を開催。筆者は別公演とハシゴしながら観に行きましたがどう考えてもキャパシティ超えてるだろってくらいパンパンのライブで狂いましたね(フルセット上がっているのでURL貼っておきます)。

 タバタの後任としてex-mogari after euphoriaのねぎが加入し、新体制初の音源リリースとなる ''故郷'' は、タイトル通り地元福知山を離れ、大阪へ移住し感じた気持ちの変化を赤裸々に綴った歌詞が特徴の一曲。KDが高らかに歌うヴァース一文一文が刺さるんですが、「住む街も音楽も何もかも変わっても 僕達はそのままでいよう」に全てが詰まっていると思います。音源のアートワークが彼らがレコーディングでお世話になっているMD Records/食堂大江山の宮木猛氏の家(?)の壁なのも故郷への愛がひしひしと伝わります(ちなみに最近まで筆者はKDとテツヤはまだ福知山在住と思ってたのはここだけの話)。

 11/25には昨年大盛況に終わったONE & ONLY FESTIVALを再び大阪赤レンガ倉庫で開催することが決定しているUNMASK aLIVE、この日は各地被ってますが筆者は発表された直後に脳死でチケットを取りました。間違いなくこの曲やると思うので早く全力シンガロングしたいです。



HIKAGE - 初期衝動

EP (8/23)

 札幌を拠点に活動しているラウドロック/ポストハードコアバンドの最新EP。The Webs We Weavesunsetinfallなどで活躍していたメンバー達が集結しており、メタルコアやハードコアを基盤とした概念に捉われず様々な要素を織りまぜた楽曲、Vo.GENのキャッチーなボーカルメロディ~喉がはち切れんばかりの激情的なシャウト、そして情熱的なライブパフォーマンスで多くの話題を呼んでおり、今年に入ってcoldrain主催のBLARE FESTSlipknot主催のKNOTFEST JAPANにも出演、大きなステージで観る機会も増えてきています。そんな熱が冷めやらぬ状況の中で、バンドのイメージを最も体現している作品がリリースされました。

 2021年 ''Light My Wounds'' 以来1年半以上ぶりのEPとなる今作 ''初期衝動'' は、バンドが始動当時から持っている爆発しそうなエネルギーを余すことなく閉じ込めた作品。BeartoothWhile She Sleepsのエッセンスを感じさせる疾走感とアグレッシブさを感じる曲の中にキャッチーなサビメロディを入れ込んだTr.1の表題曲、日本詩を交えてリスナーや自分に「グダグダ言わずにやることやれ」と喝を入れていくTr.2 ''NO WAY'' 、ミクスチャー感あふれるイントロとタテノリのモッシーなグルーヴがフロアを熱くすること請け合いのTr.4 ''SiCK''など全5曲を収録。背中に自分のバンドの名前のタトゥーを掘ったGENがあおむけに横たわる姿をジャケットにしているのもシンプルながらインパクトがあります。

 今作を引っ提げて全国5カ所を巡る「初期衝動-TOUR2023-」の開催を発表しているHIKAGE、大阪編は火影なんですが筆者は速攻でチケット取りました。まだ観たことないので楽しみです。


Holding Absence - The Noble Art Of Self Destruction

アルバム (8/25)

 ウェールズを拠点に活動しているポストハードコアバンドの最新シングル。2021年には名盤2ndアルバム ''The Greatest Mistake of My Life''をリリースし、鮮やかで温かみのある色調と壮大なスケール感と温もりあふれるメロディはまさにその年を代表するポストハードコアの作品の一つとして話題になり、その後4月にはシングル ''A Crooked Melody'' をリリース。1stのモノクロ、2ndの暖色を基調とした雰囲気とは一転、青と白と金を基調としたイメージカラーで新たな世界観を提示しました。

 通算3枚目のアルバムとなる今作 ''The Noble Art Of Self Disaster'' は、バンドがこれまでに制作した作品の中で最も没入感のある感情的なストーリーテリング、日本の陶芸である金継ぎやミケランジェロの有名な彫刻であるダヴィッド・トゥなどさまざまな比喩を用いて表現しているのが最大の特徴です。アンセミックで高揚感がある美しいメロディは現在のシーンでも一級品ですが、キャッチーなフックを高らかに歌い上げるVo. Lucas Woodlandの圧倒的な存在感もさすがの一言。その中でも Tr.7 ''Her Wings''は不気味でおどろおどろしい雰囲気も醸し出して異質な印象ではありますが、それでもどこか光を感じます。また、Tr.8 ''These New Dreams'' は1stのころとは対照的に希望に満ち溢れたリリックとなっており、それはアルバム3部作の終わりの訪れにふさわしい一曲として完成されています。

 Tr10 ''The Angel in the Marble'' で出てくる前述の美術作品を用いたインスピレーションは、このアルバム全体のメタファーであり、人生を「パズルであり、絵画であり、制作中の芸術作品」と例える部分はおそらく2023年の作品でも一番素晴らしいヴァースだと思います。


The Word Alive - Hard Reset 

アルバム (8/25)

 アメリカ・アリゾナ州フェニックスを拠点に活動するエクスペリメンタルメタルコアバンドの最新シングル。筆者個人にとっても初めてライブ目的で東京遠征に行くきっかけになった印象深いバンドです。アルバムリリースの度にその方向性を変えながらも進化しており、初期はテクニカルなギターワークやアグレッションが前面に出ていたものの、近年はクリーン/スクリームを兼任するフロントマンTyler ''Telle'' Smithのボーカルメロディを主軸とした大きさと深みのある世界観を活かした楽曲を出しているイメージが強いです。

 Thriller Recordsに移籍して初のアルバムとなる今作 ''Hard Reset'' は、メロディや実験的要素などすべてを詰め込みながらもThe Word Aliveの新しい始まりを表明している作品。Tr.1 ''The Word Alive is Dead…'' の壮大なイントロに始まり、Tr.2の表題曲は近年のリリースではあまり表に出さなかったアグレッシブな一面をニューメタルのエッセンスを交えながら提示してきます。新しい旅立ちの門出を祝うべく豪華ゲストも参加しており、Tr.4 ''One Of Us'' はBad OmensのNoah Sebastianの柔和なボーカルがインダストリアルなエッセンスを取り入れた楽曲にマッチしており、Tr.8 ''Fade Away'' では初期Vo.であり現Escape The FateのCraig Mabbittも参加したことで新旧Vo.のコラボも実現しています。

 最近の作品はあまり追えていなかったんですが、アルバム通して聴いてみるとTelleのクリーンメロディは昔も今も変わらず一級品なのを再認識させられました。それが如実に表れているのはバラード調のTr.7 ''Slow Burn'' かなと思います。



Sable Hills - A New Chapter

シングル (8/25)

 日本から世界に向けて挑戦を続けている東京発メタルコアバンドの最新シングル。昨年に引き続き今年も目を見張るほどの活動が話題になっており、Unearth来日公演のサポートアクトや川崎Club Citta''FRONTLINE FESTIVAL 2023''を開催。6月の代官山UNITでのワンマン以降も2度目のヨーロッパツアー、先月にはRyo Kinoshita率いるKnosis & アメリカからLike Moths To Flamesを連れて凱旋ヘッドラインツアー ''CHAOS JP'' を敢行。''CHAOS JP'' は筆者も大阪編に遊びに行きましたが、尋常じゃない熱気を感じて楽しかったです。

 6月のワンマンから新メンバーWataru (Wavesでも並行して活動中)を加えた新体制初のリリースとなる今作 ''A New Chapter'' は、彼らがより大きな舞台へと駆け上がっていくことを確信できる新しいアンセム。一番の目玉はWavesでもウリとなっている熱量溢れるクリーンボーカル、Gt/Vo. Rictのそれとはまた違うベクトルで明確に差別化が図られています。また、Rict曰く「今回はTexas In JulyあたりのPAメタルコアのブレイクダウンを意識した」とPodcastで語っており、クレジット欄を見ればサウンドエンジニアリングは実際にAugust Burns RedやTexas In Julyの音源にも携わっているAtrium Audio。ちなみに筆者はPodcast聴くまでそのエッセンスを感じ取れませんでした(恥ずかしい)。

 今月は伝説的メロディックデスメタルバンドDarkest Hourの来日公演に2日間ともサポートアクトとしての出演が決定しているSable Hills、しかしプロモーターのEverlasting Fireって誰のことなのか気になりますね。


toro - TORO

アルバム (8/26)

 2023年結成、“ロックの復権”をコンセプトに神奈川で活動しているオルタナティブ・ニューウェイブバンドのデビューアルバム。Winter Wakes, NITRODAY, ABLAZE IN VEINSなど三者それぞれ違う方向性のバンドで活躍している(or していた)メンバー達が集まって結成され、今年の4月に ''HONNE'' をリリースして以来そのグランジ・オルタナなどを吸収したサウンドと遊び心/皮肉に満ちたリリックで中毒者が続出。筆者もゲリラで行われた配信ライブを一度観ていますが、「カッコいい」以外の感想が思い浮かびませんでした。

 満を持してリリースされたデビューアルバム ''toro'' は、懐かしいかと新しいか、理性的と野性的かなど「相反するものは絶対的ではない」という人間の本質を表現した作品。無駄をそぎ落とした本質的なかっこよさを追求し、ドラムやギターはじめ一音一音丁寧に詰め込まれたソリッドなバンドサウンドや、Vo. 梅田シュウヤの日本語/英詩を自由に行き来するどこか気だるげなヴォーカルメロディが癖になる会心の一作。一番気に入ってるのは先行でMVが公開されているTr.4 ''EUPHORIA''、退廃的なサウンドとは対照的に多幸感と陶酔感に包まれたリリックは今作が提示するテーマにもマッチしています。言葉遊びで言えばTr.5 ''1999'' も痛快で面白かったです。

 現在ライブはサポートGt.Kimura (LIKE A KID)を加えた4人体制で活動しているtoroですが、来週末9/16には今作のリリースパーティーの開催が控えています。共演もdownt, Jam Fuzz Kid, Bearwearと考えに考えたラインナップとお伺いしているので遊びに行きましょう。


WAILING ARIES - Novels

EP (8/31)

 東京を拠点に活動しているエモーショナルロックバンドの最新EP。アニソン、劇判音楽からポストハードコア/スクリーモ、Djent、フュージョンまで多種多様な音楽を取り入れており、思わず口ずさんでしまうようなメロディと本格技巧派な演奏をうまく融合させた独自のサウンドを展開しております。筆者はコロナ禍前に何度か観に行っており、その度にそのタイトかつキャッチーなライブパフォーマンスに魅了されてきました。ここ2年程は各個人のプロジェクトやバンドで多忙だったのか沈黙を保っていましたが、昨年の暮れあたりからライブ活動を再開、そして突如最新EPがドロップされました。

 音源としては ''after the rain'' 以来約2年半 & EPとしては ''gleam'' 約4年ぶりとなる今作 ''Novels'' は、これまでもいろいろなジャンルを消化していたバンドのアプローチをさらに押し拡げた作品となっており、さらに奥行きをました幻想的な世界観へ招き入れるイントロTr.1 ''仮初の夢を反芻する''からもうただならぬ気配を感じます。8弦ギターを用いながらもあくまでもvo. Kurumiのキャッチーで儚いボーカルを強調したTr.2 ''Re write''、今作では最も過去作に近く退廃的&シニカルな世界観とどこかトライバルなリフワーク/シンセが鮮やかなTr.3 ''コラプション''、最もポップ寄りでフュージョン/ネオソウルのリフワークと弾むようなリズムが心地いいTr.4 ''オミット''、そしてアルバムを締めくくるリードトラックTr.5 ''NOVEL'' と捨て曲が一切ありません。

 実は3年前のStay Nerd/Stay Emotionalでも誘っていたんですが当時はコロナ禍で動きにくかったのもあって実現しなかったんで、来年あたりリベンジマッチしたいな~とかぼんやり考えています。



HONORABLE MENSIONS

PARAMENA - OBLIVISION
シングル (8/18)

 東京を拠点に活動しているプログレッシブメタルコア/Djentバンドの最新シングル。今年の春先まではBURN WOUNDとして活動していましたが、新体制での活動を機に現名義に改名しています。8弦ギタリスト x 3人 + 6弦ベーシスト = 4人で30弦という国内最低チューニングを地で行くバンドで、近年のReflections直系慈悲のないThall開放弦リフの嵐は今は亡きELYSIUM(Gt/Vo. 皇は多大な影響を受けています)が受けたコメント「0刻んでるだけやん・・・」に値する最大級の賛辞モノ。またスピーカーのグリルが吹っ飛びますね。


makeshift - In This Moment
シングル (8/18)

 千葉を拠点に活動しているメロディックハードコアバンドの最新シングル。今年の初めにVo. Naoki & Ba. Ryota (どちらも現HERWIT)が脱退し、しばらくはサポートメンバーを加えて活動していましたが、先日DHS, HEARTPLACEの元メンバーであるKeiがフロントマンとして正規加入。新体制初となるシングルもCounterpartsはじめ海外志向あふれるタフなメロディックハードコア、涙腺を刺激するリードギターのメロディとところどころ3拍子や疾走パートを織り交ぜたドラマティックな展開など間違いないものになっています。今週末アンチノックで行われる彼らのレコ発に遊びに行くので楽しみです。→行けんくなりました、無念。


FROSTBITE - Ill Blood 
シングル (8/18)

 福岡を拠点に活動している新鋭ニューメタルコアの最新シングル。Evilgloomとも親交があり、デビューシングル ''Flo's Scales'' も知人のYona氏がヴィジュアライザーに携わっていて個人的にもチェックしていました。2ndシングルとなる今作 ''Ill Blood'' は、ワーミーを織り交ぜたギターの不協和音とSFホラー映画染みたインダストリアル要素から不穏で、そこにDealerやAlpha Wolf影響下のモダンニューメタルコアサウンドで容易にモッシュです。もっと注目が集まったタイミングでBuried Aliveに呼びたいなと画策しております(いつ実行するかは別として)。


Seditionist  - Dear Life
EP (8/18)

 アメリカ・カリフォルニア州ウエストコビーナを拠点に活動しているメタルコア/モッシュコアバンドの最新EP。Barrier, Adaliahなど2010年代に流行していたFacedown/Mediaskare直系のダウンチューニングメタルコアで、2年に1回くらいSNSで何度か「これが最後のシングルだ」という言及を繰り返していましたが、なんとEPがリリース。抒情的なコードとローチューニングのバウンシーリフが交互に顔を出す作風はまさに現代から10年くらい逆行したサウンドでおっさん懐古モノ。特にTr.3 ''Photographs'' はそこに哀愁溢れるクリーンパートからブラストビートまで織り交ぜており、この手のジャンルがまだ死んでいないことを証明してくれます。


Downswing - Bound To Misery
シングル (8/18)

 ''East Coast Trash'' を標榜している、アメリカ・ニューヨーク州オルバニーを拠点に活動しているメタリックハードコアバンドの最新シングル。ハードコア直系の骨太なモッシュグルーヴとVo. Harrison Seanorのエネルギッシュなクリーンメロディがキャッチーなバンドですが、EP ''New Lows'' リリース後初となる新曲はシアトルのロックバンドAVOIDのVo. Benny Schollがfeat(ただMVには出てこないのでどのあたりで出てきているのかわかりませんでした…)。Beartoothやメロディックハードコア期のBlood Youthが好きなリスナーなら刺さるのでもっと広まってほしいですね。



Being As An Ocean - Death Can Wait
シングル (8/25)

 アメリカ・カリフォルニア州アルパインを拠点に活動しているメロディックハードコア/ポストハードコアバンド。2021年にVo. Joel QuartuccioとGt/Vo. Michael McGoughのデュオになってから ''Lost'' をリリースして以来、約2年ぶりの新曲となります。''Lost'' では初期の叙情ハードコアスタイルに映画のようなスケール感を増大させたスタイルでしたが、今作も初期のアグレッションと抒情性、直近のアルバム2作のエレクトロサウンドをブレンドさせた作風でファンも納得の仕上がり。エレクトロサウンドの入れ方は近年のCapsizeUnderoathにも通ずるものがあると思います。


Woe, is Me - Red
シングル (8/25)

 アメリカ・ジョージア州アトランタを拠点に活動しているメタルコアバンドの最新シングル。昨年再結成し今年4月に ''Ghost'' を引っ提げてカムバック。モダンにアップデートされた歌ものポストハードコアの印象が強かった前作と違い、今作 ''Red'' は「ファンのことを思って書いた曲」とあってイントロからカッチリとしたソリッドなチャグで攻め立てていきます。しかしクリーンVo. Hance Alligoodの突き抜けるようなボーカルメロディは今回も健在。後半には殺〇的なブレイクダウンもしっかり搭載していて、今回はしっかりオールドファンの期待にも応えたんじゃないかなと思います。


recess - Sandbox
シングル (8/30)

大阪を拠点に活動するポップパンクバンドの最新シングル。筆者も以前から名前は聞いていたんですが、先述の5月のUNMASK aLIVEの企画 ''Based in the Basement'' でやっと彼らのライブを観ました。今作 ''Sandbox''はコンポーザー曰く「この曲でみんなで宇宙(そら)まで行くんや...」と意気込んでおり、星空の下で聴きたいエネルギッシュさと哀愁が同居するポップパンクチューン。 最近Kings and QueensやWinter Wakesの企画で東京でもライブする機会が出てきたので、All is WellやAll I Clacksなど同世代と一緒に関西のポップパンクシーン盛り上げてくれることを期待しています。



Recollect The Nostalgia - Twilight
シングル (8/30)

 神奈川を拠点に活動しているニュースクール/メロディックハードコアバンドの最新シングル。昨年の年末に彗星のごとく現れデビューEP ''Reprise'' をリリース。ニュースクール x 00'sメタルコアを基軸にしたリフワークに激情・叙情要素をセンス良く加えていくハイブリッドな展開は瞬く間にリスナーを魅了しました。1stシングルとなる今作は初ライブから演奏されていた曲で、前半猪突猛進ブラストと単音リフで攻め立てていくと思いきや、楽曲の後半でキーが変わり天を駆けるようなジブリ要素を押し出していく展開の押し引きは今作も健在。今回も並々ならぬ満足感を提供してくれます。



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