ブランドパーパスでなぜビジネスは成長するのか。元P&G ジム・ステンゲル著『GROW』から考える
こんにちは。FICCのBXクリエイティブ事業部の小林です。
海外ではすでにマーケティング戦略を考える軸として、一般化の兆しも見えつつある「ブランドパーパス」。その有用性はさまざまな場面で発揮されるため、ブランドパーパスが一体どんなものか捉えにくくなっているのかもしれません。
そこで、今回は、「ブランドパーパス」がマーケティング業界で注目されるきっかけの一つとなった元P&Gグローバルマーケティング責任者、ジム・ステンゲル著の『GROW 本当のブランド理念について語ろう 「志の高さ」を成長に変えた世界のトップ企業50』を読み解き、
・ブランドパーパスがビジネスを成長させるメカニズム
・ブランドパーパスが有用性を発揮する企業課題
の2つを再確認していきたいと思います。
*本記事は、独自の解釈が入っているため、ジム・ステンゲル氏の考えをそのまま示すものではありません。
ブランドパーパスがビジネスを成長させるメカニズム
ジム・ステンゲル氏は、『GROW』の中でブランドパーパスに基づいてビジネスを行っている企業は、同業のライバルの4倍もの投資利益率(ROI)を実現しているという研究結果を発表しました。
では、なぜブランドパーパスは、ビジネスの成長エンジンになるのか。
その根幹にあるメカニズムは、ブランドパーパスに人々が共感し、目的や価値観を共有できるようになることで、コミュニケーションの質が高まるからではないかと、私は本書を通して考えています。
メカニズムについて、ジム・ステンゲル氏は3つの点から解説しています。
一つ目は、「ビジネスの本質は、人間関係づくりにある」ということ。すなわち、人間関係を深められれば、人と人とのコミュニケーションの質が高まり、ビジネスの成長は促進されるというわけです。
二つ目は、「優れたブランドパーパスは、人間なら誰もがもっている普遍的な本能、希望、価値に関わるものだ」ということ。ブランドパーパスはこうした側面をもっているからこそ、人々は心から共感し合い、目的と価値観を共有しすることができ、質の高いコミュニケーションができる人間関係の土台を築けると語ります。
そして最後に、優れたブランドパーパスによって、ブランドは絶えず新しいビジネスチャンスを発見し続けられると、ジム・ステンゲル氏は語っています。社員は、自社のブランド理念が人々の基本的価値観と願望にどう結びついているかを深く理解していくことで、次に取るべき行動がはっきり見えてくるのです。
ブランドパーパスが有用性を発揮する企業課題
このようにしてブランドパーパスは企業のマーケティング活動の軸となり、あらゆる側面でビジネスの成長を促進していきます。
では具体的にブランドパーパスにはどのような有用性があるのでしょうか? ブランドの未来にとって重要なステークホルダーを以下の3つに分けて考えてみたいと思います。
1.ブランドパーパスは、消費者との絆をより深める
……解決できる課題:顧客流出、顧客体験向上
ジム・ステンゲル氏は、ブランドがブランドパーパスを掲げ、製品やサービスを通してその想いを消費者に伝えようとすればするほど、消費者はビジネスの忠実な支持者になってくれると語っています。
ブランドパーパスによって、消費者とブランドは、サービスの受け手と提供者という関係性ではなく、目的の達成を目指して協力しあうパートナーのような関係性をつくることができるのではないかと感じます。
2.ブランドパーパスは、社員の主体的な行動を誘発する
……解決できる課題:社員の自主性の欠如、社内の求心力低下、部署間連携
ジム・ステンゲル氏は、ブランドパーパスを社員に対して前面に押し出すことのメリットの一つは、チームのリーダーがそれにより明確な戦略を示せること。そして、戦略が明確になることで、社員の主体的な行動が促され、意見交換が活発に起こることだと語っています。
ブランドパーパスによって目的と価値観を共有することで、すべての社員は鼓舞され、ブランドパーパスが掲げる理想の世界の実現にむけて、自主的な行動が活性化されていきます。
『GROW』内では、そのようなプロセスを経て、部署間連携の活性化や、社員同士の足の引っ張り合いといった組織体質の変革に有効だったという話が、氏のP&Gでの経験と共に語られていました。
3.ブランドパーパスは、社会全体との質の高いコミュニケーションを可能にする
……解決できる課題:社会全体との接続不良(=企業の社会性の必要性)
ジム・ステンゲル氏は、ソーシャルメディアが登場したことで、ブランドは消費者と社員だけでなく社会全体と丁寧なコミュニケーションを行う必要性がでてきたと指摘しています。
特に本書内で紹介されていたジム・ステンゲル氏の以下の例えは、これから企業が向き合わなければならない状況をわかりやすく説明しています。
この文章が意味するのは、ソーシャルメディアによって多くの情報が人々の間で交換されるようになり、「隣人」があなたの家を内情を知っているくらい、人々は企業の情報を知っていると考えた方がよいということです。
だからこそ、ビジネスはあらゆる側面で高い水準を維持し、嘘偽りのないものではなくてはならないとジム・ステンゲル氏は語っています。これから企業は、自らの顧客だけではなく、ブランドの未来にとって重要なすべての人たち=社会全体に対して質の高いコミュニケーションをする意識をさらに強める必要性がありそうです。
そうしたとき、人間なら誰もがもっている普遍的な本能、希望、価値を通じて、ほかの人たちと結びつくための土台としてブランドパーパスは有効性を発揮するのではないでしょうか。
まとめ:パーパスによってブランドは新しい成長因子を発見する
今回、ジム・ステンゲル氏の『GROW』を通して再確認したブランドパーパスについての情報は次の通り。
こうしてまとめてみると、大分ブランドパーパスの輪郭が見えてくるように感じます。
『GROW』は、2013年に発行された書籍ですが、今なおブランドパーパスの活用方法についてさまざまな気づきを与えてくれる本です。気になった方はぜひ読んでみてください!
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