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果肉を楽しむグレープ

その昔、部室で後輩がこう言った。

「先輩って、いちごミルクっぽいですよね!」

わたしの横にいた、同級生に向けられた言葉である。

小柄で目がくりっとしていて、穏やかな性格で持ち物が大体淡いピンク。
いちごミルクのような愛らしさ、異論はない。

となりにいるわたしにも何か言わなければ、と思ったのか、後輩は絞り出すようにこう続けた。

「先輩は…ぶどうミルク…」

たしかに、持ち物は大体濃紺だった。

果物といえば?という問いに、ぶどうが一番に出てくることはあまりない気がする。

あと、果物を並べたときに彩りとして入ることは多いけれど、端っこにいる。

要はあまり目立たない、シブい。

それならもう、いっそゴボウ茶とかにしておいてくれ、と思った。

無理にミルクであどけなさを添える必要はない。絞り出しすぎて、もはやワイン。

気をつかわせて申し訳ない。

ファミマでいつものオレンジジュースを買おうとして、そんな昔の記憶がよみがえってきた。

あざやかなオレンジ色のとなりに並ぶ、すべてを吸い込むような紫が目にはいったからだ。

このストンとしたボトルもいい

果実感あふれすぎる贅沢ジュース《スクイーズスクイーズ》に、グレープが登場していた。

ファミリーマート限定発売で、定番のオレンジに加え、グレープフルーツもある。

とにかく果肉の量が多くて、果実の味がそのまま活きているため、少々お高いがお気に入りだ。

果物なら断然柑橘が好きだし、ぶどうジュースは甘すぎてあまり好まないのだが、このシリーズならがぜん興味がわく。

昇り龍のような果汁のイラスト

□ 果肉入り
□ 香料・砂糖不使用
□ 濃縮還元

この白抜きの□を見ると、どうしてもチェックを入れたくなる性分。

紫を通り越して漆黒の闇のような色合いなので、本当に果肉が入っているかどうか、外観からはうかがえない。

福島からようこそ

原材料はぶどう、ぶどう顆粒、安定剤のみ。

アメリカ産とスペイン産の2種類のぶどうが使われている。
原材料が少ないから、字も大きめで助かる。

ということで、☑香料・砂糖不使用。

つぶつぶの渋滞

コップにあけてもその姿が確認できなかったので、スプーンですくってみたら、思いのほかたくさん入っていた。

どうすくっても、果肉がスプーンに乗る。

異論なく、☑果肉入り。超果肉入り。

一口飲むたびに、ぶどうの果肉が我先にと飛び込んでくる。
くたくたとやわらかいし、種はないので一緒に飲める。

そもそも果肉入りぶどうジュースにあまり出会ったことがないので新鮮だったが、一番衝撃だったのはその「キレのよい濃さ」である。

ぶどうジュースを少々不得手する理由に、胸焼けするような甘さと過剰な香り、がある。

最初の一口は染みわたるものの、飲み進めるとちょっとしつこくなってきて、わたしは胃もたれしてしまうのだ。

一方、スクイーズスクイーズは、濃いのにしつこくない。

さらさらつぶつぶと流れ込んでくる一口目こそしっかり濃いものの、そのあとに、身構えていた甘ったるさがついて来ない。

スッ…と消えていく。

残るのは、ぶどう果肉のやわらかな食感とみずみずしさのみ。

本当に砂糖や甘味料が使われていないのか、と思うくらいの甘みはあるのだが、大人びた自然な甘みなのだ。

これが☑濃縮還元のなせる技だろうか。

ほんのりと、本当にほんのりとだが、奥行きのある渋みも感じる。

300ml、あっという間に飲みきった。

質のよいポリフェノールを摂取した、という感じである。

スクイーズスクイーズのグレープっぽいですね!なら、まちがいなく褒め言葉だと思う。

ファミマのグレープ味のとなりには、同じメーカーが出しているいちごミルクも並んでいた。

旧友と、むかしの自分に再会した気分である。

しばらく会っていないが、彼女は今もいちごミルクのように可憐だろうか。


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