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手に取りたい文鳥羊羹

「うちは箱屋じゃないんだから、可食部で勝負したい」

と、生産部門のえらいひとがこぼしていた。

中も外も、両方勝負しないのかい?と間接部門のえらそうなわたしは思う。
原価のことはさておき。

人気キャラクターとコラボした商品や、パッケージデザインにこだわった商品は、自社でも年々増えている。

SNSでの拡散という追い風で、予定数はあっという間に完売御礼した。

パケ買いでもいい、某転売サイトに出されなければ。
まずはお手に取って、存在だけでも知っていただけたら。記憶の片隅に居座れたら。

ところで、最近のパケ買いはこれである。

高島屋の紙袋からみつめる文鳥
文鳥、うしろうしろ!
手のり文鳥たち

嘘みたいだろ、羊羹なんだぜ、これ。

むかし、どこからか迷い込んできた白文鳥を保護し、そのまま我が家で飼っていた。
 
くちばしのハッとするような赤さや、先端にかけてうっすら白くなるグラデーションの再現度が高くて驚く。

手のひらにすっぽりとおさまってしまうサイズ感がなつかしい。

ジャスト文鳥サイズ

金沢の老舗和菓子屋《清香室町》が手がける、文鳥羊羹。

これだけパッケージが愛らしければ、羊羹そのものがよくある黒一色タイプだとしても、じゅうぶん手に取りたくなる。

ところがこの文鳥羊羹、白文鳥は白い珈琲味、グレーの桜文鳥は加賀紅茶味、セピア色のシナモン文鳥は加賀棒茶味だという。

地元の特産品や、洋菓子にも使われる素材を組み合わせた、変わりダネの羊羹だった。

白い珈琲味 

羊羹 × 珈琲 × 能登大納言小豆
香り高い珈琲のほのかな苦味と「かのこ豆」のまろやな甘味がクセになる、新時代の"白い"羊羹。

加賀紅茶味

羊羹 × 加賀紅茶 × ドライフルーツ
グルメな文鳥のお気に入りは、紅茶とドライフルーツが入った全く新しい味わいの羊羹。

加賀棒茶味

羊羹 × 加賀棒茶 × ナッツ
上品に香る加賀棒茶と、香ばしいナッツのザクザク食感が楽しめる風味豊かな羊羹。

https://www.seika-muromachi.com/kanazawabunchou/

おいしいものを探してさすらう旅の文鳥が、ある日金沢に降り立ち、金沢に魅せられて旅をやめ、金沢文鳥になった、というストーリー。

開封したらこいのぼりみたい
切ってびっくり

原材料名を眺めているだけでも楽しかった。

《白い珈琲味》
原材料名:砂糖(国内製造)、白いんげん豆、能登大納言小豆、コーヒーエ
キス(コーヒー豆100%(アラビカ種))、水飴、寒天/トレハロース

白いんげん豆、能登大納言小豆、コーヒー豆。豆だらけの一品。

花ぐもりの空のような乳白色の中に、かのこ豆がぷかぷかと浮かぶ。

大福のようにも見え、つるっとしているのにどこかやさしげな雰囲気だ。

その乳白色からは想像がつかないほど、ふわりと香り立つコーヒーの味。

蜜漬けのかのこ豆がほろほろと崩れて、コーヒーのほのかな苦みをすくいとってくれた。これは、羊羹・コーヒーいずれかが苦手でもきっと大丈夫。

《加賀紅茶味》
原材料名:砂糖(国内製造)、白いんげん豆、いちじく、レーズン、ブルーベリー、クランベリー、水飴、加賀紅茶、寒天、植物油脂/トレハロース
※石川県産こだわり紅茶葉を使用。

いちじく、レーズン、ブルーベリー、クランベリー。

心おどる魅惑的なフレーズがならぶ。まるで歌詞カードを読んでいるかのよう。

切ると、鮮やかなドライフルーツがぱっと現れた。夜空を彩る花火のように華やかでキラキラしていて、どこか幻想的。

クランベリーとブルーベリーの酸味と、いちじくとレーズンの熟成された甘みが弾ける。
そして、加賀紅茶の香りが最後に余韻を残す。

羊羹特有のねっとりとした食感に、ドライフルーツのプチプチ感がアクセントになっていて楽しい。

《加賀棒茶味》
原材料名:砂糖(国内製造)、白いんげん豆、アーモンド、ピスタチオ、水飴、加賀棒茶、寒天、食塩/トレハロース
※丸八製茶場の加賀棒茶を使用。

いまはやりのピスタチオと、定番アーモンドの最強タッグである。

夜の水面にたゆたう、月明かりに照らされた木の葉のようなナッツたち。

口に含むと、思いのほかナッツの存在感が強くて食べ応えがある。香ばしさのあとに、棒茶の香りが夏の夜風のように心地よく吹き抜ける。

こちらも、羊羹の濃厚感と、ナッツのザクザク感の対比が楽しい。

加賀棒茶をつかった食品あるあるなのか、改行の都合で「加賀棒/ほうじ茶」と記載されているのをよく見かける。

ただしくは「加賀/棒ほうじ茶」。

加賀棒、ってどんな棒だ。振り回したら百万石か。

これもだった、加賀棒

ちなみに、パッケージの構造はこうなっている。

ワイヤー入りのひもを置いて
先端を谷折り
両端をワイヤーと一緒に三角に折りこんで
ワイヤーをねじってとめる

複雑なようでいて、実はシンプル。発想がすごい。しっかり意匠登録もされている。

紙風船状態

無事、3羽とも元の姿に戻せた。
ちょっとげっそりした気もするが。

食べるところがかわいいと、口に放り込んでかみ砕くのに躊躇する。
でも、これはパッケージそのものがかわいいし、元に戻せるのがいい。

それにしても、パッケージ以上に、味のこだわりと複雑さに尻尾をまいた羊羹だった。

やはり中も外も両方勝負したい、えらいひと。

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