黄色いブンタン弾けた
母が真っ赤なiPhone13を手に入れた。
8年使った黄色いiPhone5Cは、OSが古すぎてCOCOAも入れられないし、LINEも開くまでに一瞬時が止まるし、何よりバッテリーがフル充電してもすぐ減るという。
「よろしくゥ~」
「おまかせェ~」
IKKOさんと化した母に負け、オンラインショップでの購入・変更手続きからデータ移行まで、すべて請け負った。どうせ変えるなら、最新機種で。
かくいうわたしはアンドロイドである。
こう書くと、ニンゲン ニ ナリタイ・・・的な切なさがつきまとい、大変ややこしい。6年モノのアンドロイドスマホを使う、哺乳類である。
会社でiPhoneを使っていたからなんとなく勝手は分かるものの、OSが古いせいでクイックスタートが使えないし、iCloudは容量が足りないので、地道にiTunesにバックアップを取った。
と言われたが、何とかすべてのデータ移行を無事に完了させた。
それと引き換えに、土佐文旦を手に入れた。
母の知り合いに高知出身の方がおり、毎年この時期になると大玉の土佐文旦をおすそ分け頂く。
高知の柑橘といえば柚子のほうが有名かもしれないが、土佐文旦はどっしり大きくて、なんだか特別な感じがする。
華やかながら派手すぎない黄色はずっと見ていたいし、置いておくだけでも洗練されたさわやかな香りが漂う。
見た目だけではグレープフルーツと見分ける自信がないが、香りで判断できると思う。
あと、黄色い皮の内側にある白い緩衝材みたいな部分がモッコモコで分厚いので、切ればわかる。これを剥く作業が不得手なため、iPhoneのデータ移行と引き換えにすべて母に任せた。適材適所。
プリプリの黄色い実がはじける。
まだ酸味のほうが強いが、重たい胃がすうっと軽くなってシャキッとした。もう少し追熟すれば、はちみつのような穏やかな甘さが感じられるだろう。
でも柑橘は、目が覚めるような酸味が醍醐味でもあるなあと思う。
ところでブンタン、響きがニックネームみたいでかわいい。和名はザボン。
文旦の名前の由来は諸説あるようだが、人の名前にまつわることは間違いなさそうだ。道理で、ニックネーム的なかわいらしさがあるわけだ。
「旦」という字は、京劇において女性の役柄を示すらしい。
一方、漢字の成り立ちをみると、太陽が地平線から昇る様子をかたどった象形文字で、「あした、あさ、あけがた」という意味がある。
奇しくも、文旦の黄色い大きな実は太陽のようでもある。熟す前の酸味は、朝に食べればパッチリ目が覚めそうだ。
あと、この字、なんとなく既視感がある。
旦
旦
旦
ああ、わかった。
文旦の旦には、そのまるまるとした果実を手のひらにのせた様子、も由来に追加していいんじゃないだろうか。
翌朝、iPhone13ユーザーとなった母から「目覚ましのアラーム、いつもの音楽じゃなくてびっくりして目が覚めた」とクレームが入った。アラーム設定までは引き継げていなかったらしい。
パッチリ目が覚めてよかったじゃない。
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