ジョニィとラフランス
珠玉の歌声の余韻と、宝石箱をひっくり返したようなイルミネーションに包まれながら、「あーあ繁忙期のお出ましだァ!」と腹をくくった。
今年のライブ納め(たぶん、きっと、おそらく、でも隙あらば)は東京国際フォーラム。
ペドロ&カプリシャスの「ジョニィへの伝言」のカバーで幕があがった。
幼い頃、父が運転する車の中でよくかかっていたので、こういうかたちでこの曲に再会したのは感慨深い。
カバー曲、ソロ曲、エレカシのナンバーと、セットリストは多岐に渡った。
宮本さんが「老若男女ベイベー!」と叫んだとおり、客層も幅広い。
あと、老若男女をよどみなく発音できるのがすごい。
ロックにアレンジされた岩崎宏美さんの「ロマンス」が始まった途端、それまで座っていた人たちも勢いよく総立ちになった。
小鳥のような軽やかなステップと、天までとどろくような力強い声量をたずさえて「あなたお願いよ~ 席を立たないで~」と歌が始まる。
全員が真剣に歌を聴いているのだが、全員が完全にお願いを聞いていないという、歌詞内容との矛盾。
こういう無粋な楽しみ方を、そろそろ直そうかなと思う(直らない)。
歌声の余韻はCDやDVDで楽しむとして、宝石箱の続きはこちらで味わわせてもらおう。
黒いパッケージが、ちょっと異質で目を引く。
箔押しの商品名と、ラ・フランスっぽい色の宝石のイラストが、ネックレスのように散りばめられている。
少しレトロな感じがレモンスカッシュの缶デザインに似ているなと思ったら、メーカーが同じだった。
22日がショートケーキの日なのは、カレンダーの22日の上は必ず15日だからである。
ショートケーキは、うえにイチゴ(15)が載っていることが多いから、その形態を当てはめたというわけだ。
お菓子に限らず、パッケージには、中身をイメージした画像やイラストが用いられていることが多い。
だいたい、すみっこに「画像はイメージです」という但し書きが添えられている。
誤認をふせぐために必要な表記ではあるものの、いささかそっけない感じもする。
たまには「画像は目標です」とか「画像でそこのところうまく伝えてます」とか、主観な感じでもいい。
あと、むしろそのイメージに掲げられているそのものが食べたい、と元も子もないことを思ってしまうことがある。
このショートケーキ、店頭に並んでいたら間違いなく買う。
ラ・フランスがごろごろ入っている。たっぷりの生クリームと一緒にほおばりたい。
黒い函をあけると、金色の個包装がキラキラと輝く。
コーティングはチョコレートなのだが、ラ・フランスの芳香がはなやかに力強く広がるため、一瞬その存在を忘れる。
果汁入りのクリームはくちどけがふんわりやわらかく、生クリームのイメージに近い。
つぶつぶ食感はおそらくクッキー生地で、生の果実を食べたときのざらざら感を連想させる。
中心にある果汁入りゼリーは少し弾力があって、より濃厚なラ・フランスの味が流れ込んでくる。
ケーキ、というより、とにかくラ・フランス。ラ・フランスの宝石箱。
そういえば、パイの実もラ・フランス味が出ていた。
最近、この果物を使った菓子をスーパーやコンビニでもよく見かける。
わたしがラ・フランスに出会ったのは、それこそ父の車の中で「ジョニィへの伝言」を繰り返し聞いていた頃である。
その曲を車中で聴きながら、山形県まで旅行するのが毎夏の恒例行事だった。
当時はまだラ・フランスがあまり流通しておらず、名産地の山形県に行ったらラ・フランスの菓子やジャムを調達していたように思う。
わたしは特別な果実を知っている、と子供心になぞの優越感に浸っていたものだ。
そのラ・フランスには、時を経てコンビニで出会えるようになった。
こういうかたちでの再会も感慨深い。
21時を過ぎた有楽町は、イルミネーションと、十六夜の月と、ビルの明かりでキラキラしていた。
定時に上がってライブに行ったため、この日の月のごとく、業務がいざよっている。
そろそろ、わたしも夜のビルの明かりを灯す季節だ。
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