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連載2 愛情に貴賤ありやなしや?

第2話Pick Up! 「higher loveという言葉はヨーロッパでも使うよ。あんまり意味はっきりしないけど…日本語は愛の言葉すくないな」                     
                       
〈前回あらすじ〉
愛染明王の修理のために東京へ
東京の工房で、いざ前打ち合わせ


とうきょ〜 とうきょ〜

おこんばんわー
 
うわっ東京の工房は外人さんばっかりやな
噂以上やで、ほんま
「はじめまして、日本語大丈夫デズ」
 
はじめまして、フランスのお人やな
話聞いてるで、愛染明王の担当さんやろ
 
「ん〜フランスでもいいけどイタリアのほうが長い」
そっか
ほいで、修理依頼の愛染明王はんは、
どちらにあれませんのん?
って、あれ? お不動さんやん?

「不動明王なんだけど、ちょっとワケアリ」
もしかして改造依頼なん?
観音さん→孔雀明王はやったことありますけども
 
「っていうか、これは既に改造されちゃってる。元に戻してほしいという依頼。ほんとは不動明王じゃなかった。背中に腕を減らした跡も見つかる」
 
なんや、いい加減な仕事やな~
これが噂の大江戸の仕事かいな
大胆にもほどがあるなぁ
「お客さんの住職さんが記録を見つけて、江戸時代に不動明王に改装されたことがわかった。当時の檀家さんの大名さんの信仰や宗派チェンジあった」
 
宗派チェンジぃかいな〜
はえ〜
そいで元に戻すとして
愛染明王が元なんか?
確かなんか?
記録あったんか?
 
「まだ〜正直わかんないけどお客さんは愛染明王で良いと言ってる」
「私も愛染明王、勉強してみたい」
 
人の都合かいな
新造したほうがええんちゃうか?
なんか残欠(部品)ないのん?
 
弓とか獅子冠とか蓮華座とか
 
「全部ありそう。壊れてるけど」

そっか。
どれどれ
たしかにサイズはあいそうやな
材も古さも似てるな
まあ、とりあえず愛染明王さんかもって線で調査はしまひょ
せやかて
創作はアカンで!
いつどこでコワイ学者さん達にツッコまれるかわからんしな
文化財の破壊よばわりされたらオシマイやからな
修理は修理やで。
用心やで
「大丈夫デス。東京の親方も同じ話してます。お客さんも同意。」
「東京の親方も言ってた」
 1 江戸はめちゃくちゃな修理が多い時代だったんだよ。
 2 そういうの正すのが今回のおまえさんの忍務

そっか
ところで忍務ちゃうやろ
任務や
まぁ、江戸から続いてるお客さん(お寺さん)なら無茶言わんやろな
レポート出すん?
 
「そう。私、レポート書けないから、あなたにお願いする」
りょ~かいや
後世のツッコみに耐えれるよう
水も漏らさぬ修理レポートかいたるわ
ただし、
嘘はかけへん
軍荼利さんか降三世はんかって可能性あるかもしれへんし
とりあえず、寺の縁起やら
お客さんに聞いてみよ
 明日な
 
その前にぃや
一緒に仕事するんや、自分の話聞こか!
愛染さんに、興味あるん?
 
「愛染明王はなぜ赤い? 考えてる」
なんでやろなぁ、魔除けの赤かなぁ(←違います)
相方はってる不動明王はんは黒いけどな
浅草寺さんの話やな
センターは観音さん、マイナーな組み合わせかもしれへんな
(↑センターが大日如来ならメジャー)
 
「赤と黒! もっと興味ある。フランスの古典小説「赤と黒」思い出す」
聞いたことあるな、十大小説?
何の話やったっけ、恋愛?
あとな不動明王さんがセンターのときは赤、黄色、青いろいろや
覚えとき
 
「殺人未遂の裁判記録。赤は軍人の色、黒は聖職者、でも他の意味ある」
思い出してきよったで、ルーレットの赤黒やろ
「ん〜それもあるけど(主人公はかなりギャンブラー)僕は他の意味あると思う」
なんやろ、まあ確かに伝統的というかユニバーサルな色組みや~と思うけどな、赤と黒
 
「赤は愛情、黒は憎しみの色。男女が激しく愛し合って憎み合って」
「赤は黒へ、黒は赤へ、なんども変わる。そんなストーリー」
なるほどな~
誰やったか言ってたな
愛情の反対語は無関心って
ほな憎悪は類義語かい
 
せやかてな
赤から黒へ、黒から赤へ、またまた黒へ、いつまでもいつまでも
生生流転してたら、お釈迦さん、どうすんの? どこに置いたらええの?
出口わぁ? そんなマイルストーンが仏像やら三種の神器アートや
そこは、商売上譲れませんけど

「赤と黒の主人公は尊厳死を選んだよ」
なんや、死んでおわりかい
「違う。
尊厳。貴族よりも貴族らしい態度で死刑を受け入れる。
もう黒になりたくない。赤のまま逝く。
黒かった過去に自己嫌悪。
だけど、生きている限り、赤(愛)→黒(憎)に変わる。
また赤へ、赤黒赤黒赤黒、だから赤い時に死ぬ。
平民が尊厳を示した話。
このすぐあと市民革命。市民社会幕開け」
 
ちょっとツッコミにくい話になってきたなぁ
政治の話は工房でご法度や
けど、まあ、読んだことはあるよ。
なんかすごい大事なんやろ、市民社会のエンジンみたいな精神
個人主義やったかな?
夏目漱石さんを胃潰瘍にしたカルチャーギャップ?
 
どうなんやろ、愛染明王さんの話につながるんかいな?
低レベルの情念を高位の愛に引き上げる功徳なんて言われてますけど
明王さんで唯一、菩薩と同位の蓮華座にましますー、憤怒やけど
 
「higher loveという言葉はチャーチでも使うよ。あんまり意味はっきりしないけど。愛染明王の愛はナンデスカ? 慈?恋?好? 日本語は愛についての言葉は少ないナ」
どうやろな、
あんまり深く考えたことないけども
 
まあ、たしかに自分の国
あもーれ、あむーる
ケーレメムーチョ
いろんな愛があるんやろ
 
「それはスペイン語。でもオモシロイでしょ。ケーレメは命令形の愛情表現。アイ・ラブ・ユーは告白の表現」
命令形の愛って、さすがスペイン語
世界征服しただけあるな
ユニークや 
「それはちょっと笑わないで。スペイン人のDNAは世界一広まってる。スゴイというより異常」
せ、せやな
徹底的やったんやな
よく考えたらコワイわ
少数精鋭なのに、世界中に種蒔くってエラい、、、怖すぎるわ
断種しつつってことか、、、鬼や
 
「英語だとloving you、現在進行形の愛の言葉が定着した。新しく増えてく愛情表現。日本語はどう?」
 
どやろな
四百年くらい前、戦国時代終わりに
「愛」って前立つけはった武将(直江さん)が現れたんが
言葉のメジャーデビューかな
とはいえ
孔子さんの
敬天愛人からきてる言葉だとすると
同音異語ならぬ
同字異語やな
こちらの武将さんのご本尊が愛染明王さんだった可能性もあるけども
愛宕権現さんの愛やなかったかな?
 
仏教だと
愛は執着や
別離への怖れ
あんまり良いイメージないな、、、
 
とはいえ、愛染明王さんは密教の仏様やろ
大日如来さんは、全肯定やからなぁ
人の愛慾も清らかやで~
って考え方や
ムツカシイナ
 
「今夜は月が綺麗ですね」
おー
漱石さんのアイ・ラブ・ユーやな
「中国の人たち、この話びっくりする。」
せやかて
日本人も、あんまり知らんネタやけど
 
→ほな 明日
 
 
目次(予定)
 
釈迦入滅千年の発明と西遊記
ネットの海を漂う僧
迦葉座にます

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