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フランクはイヤな奴だけど友達はいっぱいいるよ




 ネットフリックスのドラマ「ハウスオブカード」を見る。

 怖いドラマである。
 アメリカ政府の下院議員のフランク・アンダーウッドが、大統領になることを目指して謀略を巡らせていく。フランクは権力欲にとり憑かれた男で、そのために現職の大統領も操って失脚させ、自分が大統領になろうとする。部下を犠牲にすることも、マスコミに機密をリークすることも厭わない。全ては自分が大統領になるためだ。

シーズン1では、主人公フランクは最初は一人の下院議員でしかない。それがシーズンを重ねつつ、大統領まで登り詰めていく為に散々と悪事をするというのはさっき書いた通りだ。そして、彼がすることは周りの人間を利用することばかりだった。
  フランクは色んな場所で色んな人に不吉に声をかけて味方の立場に引きずりこんでいく。そして利用する。マスコミ内に息のかかった人間を置いて故意に情報をリークし、敵対している政治家のスキャンダルを書かせる。自分の傀儡になってくれる議員をいじめて支配下に置く……。色んなところに自分の思い通りになる駒を置いていく。

 そして気づいたときには誰もフランクに逆らえなくなっている。その時には相手はアメリカ合衆国の大統領になっているのだから。少数の逆らう人はみんな闇に葬られていく。上昇していくフランクと、破滅していく他の人々がコントラストを描いている。見ていてヒリヒリするドラマだ。


 それにしても、敵と戦う為にもまず根回しから始めるのが政治ドラマなのかなぁと思う。フランクにとって、駒の数は多いほうがいい。そうでないと自分に投票してくれる議員が少なくて、つくった法案が可決しなかったり、不正を行いたいときにアリバイを偽装してくれる人がいなくて困る。

 ここでいきなりフィクション論みたいな話で悪いなとは思うのだけど、これを見ていて僕は「ドラマでもストーリーの基本は、主人公が自分にとって都合の良い人を集めていくことなんだな」と思ってしまった。
ゲーム・オブ・スローンズやワンピースや、広い意味での探偵小説なんかも「自分を助けてくれる人を探す」という点では同じなんじゃないかと思う。
 
 他人は裏切ったり、自分より偉かったり、そもそも胡散臭い奴だったりするかも知れないけど、自分にはない何かを持っている。フランクにとっては自分に投票してくれる議員だったり、利用できるジャーナリストだったりする。探偵にとっては事件の第一発見者だったり、海賊にとっては航海士だったりするのだろう。性格や目的の良し悪しはあるけど、その何かをあてにして行動していくのが主人公なのではないかなと思った。

でもドラマを見て分析するのはいいけれど、なんでもかんでも創作論に結び付けちゃうのってよくないよねぇ。ごめんね、フランク。

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