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ハニーボーイ

あらすじ
ハリウッドの若手人気スターのオーティスはアルコールに依存し、飲酒をした状態で交通事故を起こし逮捕される

リハビリ施設に入所したオーティスは彼の抱えている問題は過去に起因するPTSDではないかと示唆される
最初は否定したオーティスだったが自身の子供時代の記憶を遡るにつれてハリウッドの人気子役として活躍していた頃、父親ジェームズとの暮らしの中で感じた痛みを徐々に思い出していく

アルコール依存症でオーティスのステージパパだったジェームズ 彼の予測出来ない感情の爆発に振り回されつつもジェームズから普通の父親のように愛されたいと願っていた幼いオーティスの姿だった

(物語の重要な箇所と結末に触れています)

人が自身の辛い体験と向き合おうとする時は様々な手段があると思います
この映画の脚本を書き主人公オーティスのモデルにもなっているシャイアラブーフ氏は彼のトラウマの源になっていた父親を演じるという選択をしていますが、これは非常にリスキーな行為でもあり、まずは彼の勇気を賞賛したいと僕は思います

ハリウッドの大作映画に主演していたシャイアラブーフ氏が私生活での言動ばかり注目されるようになり、実際に彼もこの映画のオーティスのように飲酒運動で事故を起こして指を2本切断する大怪我を負っています

問題児扱いされていた彼がこの映画で自身の抱えてきた記憶を吐き出した事がターニングポイントになったのは間違いなく、現在は実力派俳優の道を順調に歩んでいるようです ただこの映画の中に登場するオーティスに対して保護観察員が始まったばかりだと言ったように、この映画が公開され絶賛された後にこの映画の内容の一部を否定する発言をした事がかえってこの映画で描かれている事が真実でありシャイアラブーフ氏の内面の複雑さを象徴していると思いました

映画に登場するオーティスの父親ジェームズは彼自身もアルコール依存症の親の子供であり、断酒会に定期的に足を運んでいます
ジェームズは周りから見てわかりやすい身体的暴力や性的虐待をオーティスに対して行ってはいませんし、彼は世間から逸脱した倫理観とは言えオーティスに対して彼なりの愛情を持っているようにも見えます
だからこそオーティスは苦しみ成人した後もそれは彼を苦しめている 父親から愛されたいと願いながらも前科があり無職である父親を幼いオーティスが経済的にも支えていかなくてはいけないという現実 優しい父親が突然豹変するのを予測しようと身構えながらも父親の理解者であろうとするオーティス
これらはオーティスの心を引き裂いてしまった

人気スターとなり自身の問題がPTSDと指摘されて驚くオーティス 彼にとってPTSDは兵士に起こるものだという認識くらいしかありませんでした

彼はそこに向き合おうとします

映画のラストで彼は子供時代を過ごした場所へと向かい父親と対話します この場面はオーティス自身の中にある自身の原点に立ち返る為の心の旅であり、彼はそこで過去と、そして父親と折り合いをつけようとします この幻想的な場面は非常に感動的であり自身の中に押し込めて抑え込んでしまった子供時代の自分との再会でもあります

人は白か黒かはっきりしようとさせますが、それだからこそ苦しむ事になります 白の中にも黒が 黒の中にも白が またその白や黒の中にも黒や白があると考える方が自然だと思うし僕自身もそれで随分と生きるのが楽になりました

映画の中のオーティスや現実のシャイアラブーフ氏の人生もまだまだこれからであり回復は一直線ではなく螺旋状に少しずつ少しずつ進んでいくのでしょう

この映画は家族との関係で苦しむ子供を自身の中に抱える大人にとっての映画だと言えると思います

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