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キューバの児童書ブックリスト🇨🇺📚&報告書完成🖋✨

おしごとのはなし。

敬愛する図書館「国立国会図書館国際子ども図書館」様にご依頼いただき、共に1年かけて取り組んだプロジェクト「キューバの児童書ブックリスト作成&キューバの児童文学調査報告書」が2月末に完成し、この度正式に発表されました🙏🏼✨以下のページからPDF形式にてご覧いただけます。

当プロジェクトは、


”国際子ども図書館が子どもの本の資料情報センターとして、海外の児童書を広く収集することによりコレクションの充実を図るための海外の児童書に関する調査”

として、2009年からほぼ毎年1〜2カ国を対象に実施されています。そして、2020年度の対象国がキューバ🇨🇺に決まり、担当としてご依頼いただきました。

キューバという国を、これまでほとんど顧みられることのなかった”児童文学”という視点で捉え直す作業は本当に興味深く、面白い作業でした。

もともとキューバを好きな方にも、何か新しい魅力を見つけてもらえるきっかけになれば嬉しいですし、児童文学は大好きだけどキューバのことは全然知らない、という方がキューバという国に興味をもってくださるきっかけになれば、それまた光栄ですし✨🌈キューバと日本を繋ぐ新しい橋渡しの一つとして、広く皆さまにご高覧いただければ幸いです✨🌈🇯🇵🇨🇺

【キューバの児童書ブックリスト】とは、

国際子ども図書館が今後どのようなキューバ児童書を集めていけば良いか、参考として私からの推薦書を190冊提案しているリストです。
(↓タイトル未設定となっていますが、ブックリストにリンクしてます♩)

この資料の素敵なところは、数行ながら全ての作品にあらすじがついているところです。ほんの数行です、が、しかし、190冊です。ここを読んでいただくだけでもキューバの児童文学にどういったジャンルがあるのか、どんな傾向があるのか、などなど、触りを感じていただけるかと思います😊書籍流通が滞っているキューバの状況から、気になる児童書の全てを取り寄せて読み込むことはできませんでしたが、本文に目を通せなかった書籍に関しても、ホセマルティ国立図書館が所有する情報や、書籍の写しや写真、プロによる書評等、あらゆる資料を参考にして作成いています。
なお、今回のプロジェクトの趣旨とは違うものの、今もキューバ在住であれば、現在中高年代の人が幼少の頃読んでいた児童書について、とか、現在子育て真っ最中の家庭で人気の作品は何か、など片っ端から聞いて調べたかったです。私自身は幼少期をキューバで過ごしてはおらず、子育てもしていないので、肌感覚での児童書の存在を描きけなかったという想いが唯一心に残っています。これはこれで、面白いライフワークになりそうです。

今回調べた約300冊の中で、私がダントツで惚れてしまったのが、当ブログ冒頭に写真を載せている『Akeké y la Jutía アケケとフティア』Miguel Barnet(ミゲル・バルネット)です。ホセ・マルティ国立図書館で見せてもらって一目惚れでした。残念なことに貸出は不可とのことで、その場で2時間ほどかけて一気読みしました。

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民俗学者ミゲル・バルネットが収集したアフロクーバの民話集である本作は、新書や文庫など様々なバージョンが出ていますが、エンリケ・マルティネス・ブランコの挿絵が素晴らしい本書こそ、国際子ども図書館様に是非収集していただきたい一押しの書籍です✨

【キューバの児童文学調査報告書】とは、

正式には”キューバの児童書選書にかかわる調査報告書”と申しまして、上記のブックリストを作成する際に調査した結果全般の報告書です。内容は、作品や作家の研究ではなく、キューバの児童文学を取り巻く社会的背景や環境調査が中心です。
(↓タイトル未設定となっていますが、報告書にリンクしてます♩)

私の執筆人生でもっとも堅く真面目な文章になること間違いなし、という文面ではありますが、こちらも日本語では未だ記事になっていない児童書関連の情報を色々載せておりますのでご興味ある方は是非ご覧くださいませ。

国際子ども図書館で読むことのできるキューバ人作家の作品
(2020年4月現在)

初期のブックリストに含めていたものの、すでに国際子ども図書館に所蔵されている本が10冊ありました。これらは"収集の為のブックリスト"という目的に沿わない為リストからは除外しましたが、どれもお勧めなので、こちらに記載します。なお、邦題は私がリスト用に訳したものであり、所蔵書籍は全て原語のスペイン語版です。国際子ども図書館でお探しの際は、原題をご使用ください。

①『Juan Ligero y el Gallo Encantado フアン・リヘロと不思議な雄鶏』
 Dora Alonso(ドーラ・アロンソ)
キューバ児童文学作家として最も有名なドーラ・アロンソの代表作。人間と動物が、友情と勇気に結ばれて冒険をする物語。

②『Los Chichiricú del Charco de la Jícara ヒカラの水の精チチリク』
 Julia Calzadilla(フリア・カルサディージャ)
陽気でいたずら好きな水の精チチリクの夫婦が主人公。キューバを舞台に、アフロキューバやカリブの神話、民話を巧みに取り込んで描かれる冒険ファンタジー。

③『Cartas al cielo 天国への手紙』
 Teresa Cárdenas Angulo(テレサ・カルデナス・アングロ)
アフリカ系キューバ人としての自身のルーツをテーマにした作品で非常に高い評価を得ているテレサ・カルデナス・アングロの初期代表作。

④『Cuentos de Guane グアネの物語』
 Nersys Felipe(ネルシス・フェリペ)
キューバ児童文学作家・詩人であるネルシス・フェリペの代表作。
グアネ村のおじいちゃんの家にはいつもたくさんのお客さんがやってきて、誰しもが楽しく笑って過ごしていた。しかし、あの日だけは違っていた…。

⑤『Román Elé ロマン・エレ』
 Nersys Felipe(ネルシス・フェリペ)
キューバ児童文学作家・詩人であるネルシス・フェリペの代表作。
昔のキューバの田舎を舞台に、孤児となり農園で使用人をする少年ロマン・エレの視点を通じて人の尊厳とは何かを優しく問う物語。

⑥『Caballito blanco 白い仔馬』
 Onelio Jorge Cardoso
キューバ随一の短編小説家オネリオ・ホルヘ・カルドソの児童文学代表作。 キューバらしい動植物が主人公となる6篇の短編集。

⑦『Negrita ネグリータ』
 Onelio Jorge Cardoso
キューバ随一の短編小説家オネリオ・ホルヘ・カルドソの児童文学代表作。大地主に捨てられた犬が、動物好きの一家に拾われて、かけがえのない存在へと変容していく物語。キューバの田舎が舞台。

⑧『La princesa del retrato y el dragón-rey肖像のお姫様と竜の王』
 Ileana Prieto(イレアナ・プリエト)
森に住む竜の王は昔会ったお姫様の肖像画を今も見つめながら、いつかもう一度会いたいと願っていた。そんなある日、肖像画そっくりの女の子が森にやってきて始まるファンタジー。

⑨『Los cuentos del mago y el mago del cuento魔法使いのおはなしと、おはなしのなかの魔法使い』Joel Franz Rosell(ホエル・フランス・ロセル)
自分の王国を覆ってしまうほど大きな影を持つ王様、空飛ぶ家、消える砂の城など様々な不思議が登場する11編のファンタジー短編集

⑩『El pájaro libro本の鳥』Joel Franz Rosell(ホエル・フランス・ロセル)図書館で何年も読まれずに埃をかぶっていた一冊の本が、本棚をなんども飛び出すうちに、鳥たちが集う窓の外まで飛んでいけるようになることから始まる心温まるファンタジー。

後記

日本語での資料がほとんど存在しないキューバの児童文学ですが、スペイン語で情報を探してみても、掘れば掘るほどなんの収穫もなく深みにハマる、まるで蟻地獄に飲み込まれるような状況が幾度もありました。同時に、インターネットの普及が未だ制限されているキューバの、しかも児童文学というマイナーなジャンルの情報は、ネット検索でとっかかりを掴むことすら難しい状態で、想定していた以上に難航しました。
しかし、こうして呆然と立ちつくす私に、惜しまず助力を注いでくれたキューバ人作家の親友マルセル、ISA大学教授のイボン先生、ホセマルティ国立図書館児童文学担当のオデットさん、キューバ児童文学作家の大御所オルガ・マルタさん、そして、ひたすら私の質問や泣き言にお付き合いいただいたキューバ人の友人知人の皆さまのおかげで、最終的にはこれほど愛おしい資料を生み出すことができました。感謝感激雨あられでございます。

また、これほど大量のスペイン語を真剣に精読した1年間は過去なかったんではなかろうか(爆)という程、ひたすら調べ物にあけくれる1年間でした。しかも、細かい資料作成にはほとほと向いていない性質で、いくら真剣に読んでも間違えを繰り返し、情報根拠の改正・修正・校正等が大量に発生いたしましたが、天才的な編集能力をお持ちの担当者様に尽力いただきまして、文面の堅さのわりには読みやすく、内容の精度も上がり、充実した資料として完成させることができたと自負しております。というより、誇らしく自負せざるを得ないほど、担当者さんに助けてもらいました🙏✨
ご依頼、ご尽力いただいた国際子ども図書館の担当者様、担当課の皆さまに心から感謝申し上げます。

世界中が苦境を抱える現在、
国際子ども図書館も臨時休業が続いています。
事態の快方を真に願うとともに、
皆さまが心地よく上野公園を散策されます姿を心に描きながら、
再開した図書館にもお立ち寄りいただける喜びを先取りしつつ、
以上の報告を申し上げます。

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キューバのこともたくさん書きだめしているものの、
ついクロアチアの報告ばかりが続いてしまいましたが、
やっぱりキューバ面白い!ということで、
こうした時期ではありますが、
今後も
世界体当たり記事を
続々アップしていく所存です。
✨🌈



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