上念司著(2022)『論破力より伝達力』扶桑社
相手が話を聞こうという気がなければ伝わらない
本書は、前半部分で、基本的に相手が話を聞こうという気が無ければ、何を話そうにも伝わらないことを力説する。つまりは話し方や目線の取り方など技巧を凝らしたところで、そもそもそれに耳を傾けることができなければ、いくら力説したところで、相手には全く理解されないわけである。
これは、世の中の数ある本で、いくら話し方を丁寧にしようが、論理的であろうが、そもそもの部分を考える必要があるということ。つまり人はその人から話を聞くためのインセンティブを意識しているということで、ダメな上司や役員のつまらない話を静かに聞いているのも、そこには金銭であったり、それを聞かないと仕事が進まなかったりするためという「何か」が裏にあるということを理解する必要があるということ。
そのうえで、伝える努力というのが必要と説いている。中でも学級崩壊のメカニズムや、相手の話の要約など、読者がこれから多くの人に言葉で伝達するためのコツのようなものにも触れられている。
議論を含め、相手に理解させるためには、論理のロジックが必要であり、そこにはエビデンスやそれを補う先行研究に目を配るなど、さながら論文を1本書き上げるような用意周到さというものが必要であることも本書から読み取れる。
上念さんの本は、このように毎回ちょっとした為になる小ネタが入っているので、その部分において説得力を持つのかも知れない。以前読んだ『高学歴社員が組織を滅ぼす』も面白かったが、本書もよくある話し方のノウハウ本とは観点が異なっており、その点が良いと思う。
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