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強制プロポーズと両家顔合わせの話~後編~

婚姻届けにサインはしていないけど
(そもそも封筒に入ったまま未だ引き出しに閉じ込められているけれど)

二人に結婚の意思があることを、無事両家の親御さんに御認識頂く運びとなりました。


我が父は知らない。
一応親同士の対面会合を行う報告はしたけれど。

かつてタミオ君がはじめましてのご挨拶に行った際に、面と向かって『そういう煩わしい場には呼ばれたくない』と言われた衝撃を私は忘れていない。


一応聞いてみたけど父は来ないと言った。
『ママが嫌がるだろ。』と父は言った。

そういうことではない。
いつまでママの旦那気分なんだ、私の父として意見を述べよ。

来てほしいというお願いではなくて、そういう場を作るからねという一応ご報告に来たんだと説明した。

悪気がないとは言え、親御さんの前でも御無礼をぶちかまされる可能性を想像すると、正直なところ私自身も来て欲しいとは思えなかった。私も私で娘としてどうかとは思う。


我が母と、恋人タミオ君のご両親。
二人のお家で無事にご対面を果たして
なんだか最初はわちゃわちゃしてたけど、結果とても和やかに、男性二人がほぼ喋らず、女性陣が3人で盛り上がるという奇抜な女子会みたいになった。

サラッと対面を果たして解散する予定だったのが、ざっと3時間半ぐらい話した。ほとんど両家の母親が家族の話をし続けただけ。

本当はさみしい気持ちもあるとか そういうことを、タミオ君のお母様は『普段子供の前では言えないけど、お母さん同士だから話せるね。』なんて言いながら楽しそうに、嬉しそうに、いろんな話をしてくれた。

タミオ君のご両親の馴れ初めも、初めて聞いた。
幼馴染らしく、最初に会った頃はまだお母様がランドセルを背負っていたそうだ。

それが 何故だかいつしかそういうことになり、小さい頃から知ってくれていただけに旦那(お父様)の御両親や隣に住む親戚のおばさんにもとても可愛がってもらってありがたい環境だったとか。


我が母は後から、お母様のことを
『お姑さんで御苦労されていない方はひねくれた考え方をしないね、とても素直な感じがした。』
と言っていた。

確かにそんな感じ。
夫婦喧嘩でも、無駄に言い合いをしてもお互いが疲れるだけだから、あえて距離をとって話さないという方法でやってきたそうで
それでも、その日のうちにわだかまりは解消するようにしていると教えてくれた。

誰かを恨むとか、怒るとか怒鳴るとか、そういう事をしない。努力でしないようにもしているんだろうし、それが染みついて、そういう子育てをきっとしていて、その優しさや穏やかさが恋人タミオ君にも影響していると思う。


先週お誕生日だったお父様のお祝いも兼ねて
近所の美味しいケーキ屋さんで買ったケーキをみんなで一つずつ食べた。

実家では眠っていたコーヒーメーカーで珈琲を入れて、みんなで飲んだ。

蓄積されている大量のお菓子を選別して出したり
友達がくれた甘い高知のみかんを出したり
みんなそれを気兼ねなく食べたり飲んだりしてくれて沢山話した。

遠慮なくヨギボーに座ってくれたりもした。
還暦を超える大人三人が並んでヨギボーに沈んでいて可愛らしかった。

『御子ちゃんも座れるよ、おいで。』と 呼んでくれたタミオ君のお母様は、いつもおうちにお邪魔するときにも欠かさず言ってくれる

良いご縁があってとても嬉しい。
「俺には勿体ない」ってずっと言ってたから、てっきり諦めちゃうもんだと思ってた。
御子ちゃんが来てくれると家が明るくなる。
いつもお世話してくれてありがとう。

なんてことを母の前でも、同じように褒めちぎってくれて恐縮だった。


母は母で、妹の闘病や祖母の介護、愛犬の看護や甥っ子の誕生が重なった時期も含めて、たくさん娘(私)には迷惑をかけたし大事な時期を全部巻き込んでしまって責任を感じている と言った。

私は小さい頃からずっと【晩婚】だと、数々の鑑定士に言われてきたらしい。それを信じていたから晩婚なのはわかっていたし、晩婚だけど幸せになれることも分かっていたからこそ
今こうして幸せそうにしていて安心していると言った。

私の母も、タミオ君のお母様も
口を揃えて『子供が幸せなのが一番幸せだし、子供が楽しそうにしているのが何より嬉しい』と言った。


タミオ君は私と付き合うようになってから、明るくなったらしい。お風呂から鼻歌が聞こえてくることもあって、お母様自身も毎日嬉しかったと教えてくれた。

私はそんな話を涙目で聞きながら

今後子供ができないことや、子供がいなくても幸せに暮らしていきたいと思っているという決意を伝えようかずっと迷いながら

核心に迫る結婚や入籍の話が出なかったので、堪えた。

結果が変わることでもないし
今すぐに籍を入れるわけでもないし
今回は言わなくて大丈夫だと、タミオ君にも言われたけど

私がずっとそのことを自分の口から説明できずにモヤモヤしてしまっていることも、タミオ君はわかってくれている様子なので、もう少しおとなしく その時が来るのを待とうと思う。


***


強制プロポーズにつながった尋問前夜祭も然り
顔合わせに参戦して、楽しいひと時を過ごしてくれた母にもあとからお礼の連絡をした。

『姉ちゃんの決めたことなら大丈夫。とても印象はよかったし心地よかった。可愛がってもらえそうでよかった。』と母は言った。


今までいろんなことを自分だけで判断させてもらえなかった。
母の意見を聞かずに自分一人の意思で決められるのは、仕事だけだった。

だからこそ仕事に執着した時期もあったし、身も心も滅ぼしかねないブラックな業務形態を乗り越えようと奮闘する状況で、辛うじて自己肯定感を底辺でキープしている状態が長く続いていた。


仕事も、上司が変わったり運用が変わったり、メンバーが定着したり派遣元会社を乗り換えたりしたことで少しずつ心身ともに健康な環境に変化してきた。今あの頃に戻ったら、きっと心も体も耐えられないと思う。

半ば無理矢理決行した一人暮らし大作戦も、これが最後のチャンスかもしれないと繋ぎ止めた恋人との出会いも、2年の時を経て今の幸せで穏やかな人生に続くなんて思ってもいなかった。


一生分かり合えないとすら思っていた母との関係性も、変わってきた気がする。

タミオ君のことを隠さず話せたことも
タミオ君が母に話せるような人だったことも

親との関係性に悩む私を 親から引き離そうとせず、このままうまくいく方法を考えてくれたり、近くにいた方が逆に良好な関係を続けられると気付いて実行してくれたことも、すべてが今につながっている。


一人暮らし再開を機に
炊事洗濯を欠かさず頑張ってきたことも
信頼し合える相手を見つけて
まだ1ヶ月だけど共に二人で生活してきた姿も

近くだったからこそ見てもらえることもあったし
助けを求められるところは求める という環境も続けられた。

今でも母が 私の世話をし続けたい と思っている気持ちは変わらないようだけど、一人では何もできないと決めつけられてきた40年が これで終わったのかもしれないな、と思った。


*****

私も自分の母を、もう少しちゃんと大事にできるようになりたい。


タミオ君のご両親には【ちゃんとしたい】気持ちで、節目に御挨拶にお伺いしていたのに
自分の親に対してタミオ君からのケジメをちゃんと求めなかった自分にも非はあると思っている。同じ親なのに、軽く考えてしまっていたのは間違いない。

今回私を責めることなく自分の希望としてタミオ君の気持ちを聞きに来てくれた母には、とても感謝している。

感謝の気持ちも、お詫びも、ちゃんと伝えられて良かった。

結果良かったけど
それを良しとせず、これからも大切にできるようにしたいと思う。

お嫁に行くのであれば猶更。
今まで伝えられなかった、伝えるどころか感じる機会も少なくなってしまっていた感謝の気持ちを、ちゃんと言葉にできる娘になってから、婚姻届のサインはお願いしよう。

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