「人生を変える幸せの腰痛学校」も面白かった!特にこのブログ読者におすすめです!

ちょっと思うところあって、普段はあまり読まない日本語の本を前回のブログで紹介した「腰痛探検家」につづき、以前購入してパラパラとめくったまま放置してあったこの「人生を変える幸せの腰痛学校」を腰を据えて読んでみました。

この本は鍼灸師の伊藤かよこ氏が認知行動療法に基づき、その具体的な方法を小説形式で紹介しています。まず、その点が面白かった反面、腰痛を治す「方法論」を求めてきた読者には印象付けることが難しかったのでは?と感じました。というのは、そういう読者ははっきりと「腰痛には◯◯が効く」のような”リスト”を求めてた可能性が高いような気がしているので。

この本の中の”腰痛教室”で紹介されたいくつかの「腰痛対処法」は過去のブログ「痛みの治療に役立つ71ナゲット」の中でも紹介されていることです。また表現の形を変えて情報を知ることは、もしかしたら印象に残るかもしれないので、ぜひ参照してみてください(リンク)。 ちなみにその「痛みの治療に役立つ71ナゲット」はこの有料ブログにも含まれているので、有料ブログ読者は改めて購入する必要はありません

もしかしたら伊藤さんの本を購入された患者さん側の人で、「71ナゲット」を知りたいけど、見ず知らずのお前なんかに500円も払いたくないわい!って言う人も多くいるかもしれません。ですので、下にいくつか紹介しておきます。ブログでは、画像とともにちょっとした説明が加わっています。私としては以下のようなインフォグラフィックをスマホか何かに保存しておいて、時々ちらちら見ることで痛みについて簡単に、気軽に学べるのでは、と考えています。(DIMs、SIMsについては過去のブログを参照してみてください)


ここからはその他、この本の中から私がいくつか印象深かったことをあげていきます。(以下は患者さん側の人にとっては難しいかもしれません。主に治療家向けです。)

1,治療家の不意な言葉がDIMsになる
例えば、医師の「あなたの腰痛は椎間板ヘルニアのせいだ」とか、徒手療法家なら「あなたの腰痛は骨盤・背骨が歪んでいるからだ」などと言う事です。他にも、ふとした一言で患者さんを恐怖に陥れてしまうであろう、ということを過去のブログ「患者さんの比喩的表現に気をつけろ」で紹介しています(リンク)

2,「腰痛を治したければ、腰痛を治してはいけない」という言葉
これは腰に注意を向けすぎてはいけないという事と、Disembodimentということに繋がります(Disembodimentとは、超大雑把にいうと体と魂が一体となっていないということです)。Disembodimentについては過去のブログ(リンク)で紹介してあるとともに、そこでセルフマッサージの是非についても考察しています。

3,”腰痛学校”の先生の「花粉症を”治した”」というエピソード
本の中の”腰痛学校”の先生が「花粉は敵じゃない(と思え!)」と伝え、それで花粉症の症状が楽になったというエピソードを紹介しています。でも実際は「症状は楽にはなったが、抗原抗体反応は体の中で起こっている」ですが。これは非常に重要な示唆で、その人の信念が症状を引き起こす(悪化)させるという例の一つだと思いました。そしてもう一つ重要な示唆が、「治った」と「良くなった」の違いをしっかりと認識しておかないと大変なことになるよ!ということ。なぜなら花粉症の症状が良くなったのに、花粉に対して抗原抗体反応が起こっているということは、花粉症は「治ってはいない」ということになるからです。これを花粉症ではなく、喘息と捉えてみましょう。そうすると徒手療法家の治療を受けて「良くなった」と「治った」では大きく意味が違うということに気づくのと、時には非常に危険だ、ということを理解しておくべきです。特に色々な「内臓疾患」を”治療”していると称する治療家は肝に銘じておくべきことだと思いました。詳しくは過去のブログ「SBMを勉強してみた」で紹介していますので、参照してみてください。

ところで今思い出したのですが、前回日本に帰った時、某鍼灸治療法の治療体験に行ってきました。その治療法のセミナーは募集と同時にすぐに締め切るという超人気の治療法で、私の知人の鍼灸師もそれにハマっているようです。そういうのは普段は気に留めないのですが、その知人鍼灸師は深鍼治療信者だったのが、どうしてかその軽い刺激系治療にハマってしまったので、その理由をずっと知りたかったというのがありました。

その治療院の待合室には、「花粉症が治った」という患者さんの声が冊子にしてあり、パラパラと眺めていました。その時気づいたのは、全ての患者さんが「◯◯先生は私の話をよく聞いてくれて」とか、「ちゃんとしっかり説明してくれながら治療してもらった」とか書いてありました。多分、その鍼灸院で花粉症が「良くなった」(治ったではありません)のはそういうところが良かったのでしょう。

4,(これは直接、本の内容ではないですが)アマゾンのカスタマーレビューの低評価が非常に興味深い
特に徒手療法家の方々がその低評価レビューを読むと、なぜその人の腰痛がよくならなかったのか、がよく分かると思います。それとともに、そういう”タイプ”の患者さんと接することがあったら、どうすればいいのか今から考える訓練になると思います。

他にも認知行動療法で骨格筋痛を治す系の本の低評価レビューも参考になると思いますので、以下の本もアマゾンでチェックしてみるといいかもです。


「ヒーリング・バックペイン」が発売された時は私はたしか鍼灸学校の3年生で、買って読んだ時は「何、アホなこと抜かしとんねん!」「カウンセリングだけで治るわけないやろ!」って思っていました(笑)

患者さん側の方々のみならず、我々治療家も各自「信念」を持っていると思います。でもその「信念」が事実やエビデンスに基づくことなのかを時には考えてみる必要があるのでは、と思っています。

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