寝つけない夜

何か
怒りとも虚しさとも
悲しみともわからない
もやもやとした気持ちのなかにあって
寝つけずにいる

そこかしこに散らばった
エッセイを遮二無二
読み散らかして
なんとしてもこの
もやもやを晴らして
寝つきたかった

変な一節に出会い
さらに怒りやら
不平不満やらが増して
「違う、違うんだ!」
と床に叩きつけ
ページをむしり破る
そんな妄想もまた
もやもやのひとつで

だんだんと夜もふけて
まったく晴れないもやもやを
朝まで連れていく決心をする
「もう潔く散ろう」
死んだつもりで目をつぶると
腹立だしい断片がよみがえって
不快な寝心地に苦しむ

苦しめ
苦しめ
品性下劣な貧乏神が
天井裏からほくそ笑んでいる
しめしめ
しめしめ
この青首をしめようとして
のしかかる女の幽霊の向こうで

苦の上に眠れ
神は非情だ
苦の上に眠れと
言葉の枕と
言葉のふとん
苦しみのベッドが
小刻みに揺れる
遠くでサイレンが鳴る
「地震だ!逃げろ!」

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