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東京出身 韓国在住。ユーチューブ(fanam channel)運営。執筆。日韓交流活動。noteでは小説や文化論などを載せます。

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    • 連載小説「光と影」第2幕 米国へ

      主人公富雄は韓国の生活を終え、知人の紹介でアメリカに向かう。そこでは、彼の予想をはるかに超えた経験が待っていた。そして、9・11テロに出会う。激動のアメリカが彼を待っていた。そんな中、ユナがアメリカに来るという。

    • 連載小説「光と影」韓国へ渡る(静かな訪れ、出会い)

      小説「光と影」を連載したものです。第一部は富雄の大学生活と韓国人との出会いを描きます。マンネリ化した大学生活。そんな富雄は日本を旅することを思い立つ。

    • ファナム韓国の旅

      日本、韓国、米国を旅した記録をここに残す。日々大切にしているのは旅と散歩での時間。

      • 連載小説「光と影」第2幕 米国へ

      • 連載小説「光と影」韓国へ渡る(静かな訪れ、出会い)

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    連載小説「光と影」第3章 韓国生活:ひとり暮らし

    富雄はソウルから少し離れた水原(スウォン)という街を選んだ。そこはソウルから1時間ほどのところだった。ソウルは家賃がかなり高かった。 アメリカから持ってきた資金では到底継続して払うことのできないほどであった。大学の周辺にある、安い宿を見つけた。 老夫婦が住んでいるその一軒家に、学生が寝泊まりしていた。食事はどこかで買ってくるか、外食であった。お互いほとんど話すことはなかった。富雄も生活のことが精一杯で学生と言葉を交わす余裕はなかった。 街の中はどこかさびしかった。それは

      • 【韓国生活体験】教師生活 協力(韓国語でヒョプチョ:共助)

        協力し合う学生  韓国の学生を見て、たいへん興味ぶかいことが一つあります。それは、お互いに協力し合うという姿です。その一つのエピソードとして挙げられるのが、授業中の発言の時です。  順々にタスクをさせながら指名していくと、ある学生が答えられないときがあります。大抵は仲のいい学生が固まって座っていることが多いのです。もし指名された学生がその質問に答えられなければ、たいていは黙っています。  そうこうするうちに、その傍から、低い小さい声が聞こえてきます。耳元でささやくような

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        • 【韓国生活体験】教師生活 先生への礼儀

           さて、私が教師として、学生の前に立つたびに思うことがあります。それは、みな不思議そうに、私を見ているその視線です。もちろん、最初の講義では、みな緊張して臨んでいるとは間違いないのですが、毎回学期のはじめは、そのことを感じ取るのです。  彼ら学生にとっては、もしかしたら、外国人を間近でみるのが初めての人もいるのでしょう。テレビやドラマなどで、もうすでに日本の映像などはすぐに見れる時代。韓国の学生も、はじめはそのような映像媒体で、日本人に接するわけなのです。  日本人は果た

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          • 【韓国生活体験】教師生活 雑談と疎通について

             私は韓国の大学で教鞭をとるようになりました。大学で教鞭をとる中で、中々慣れないことが一つありました。それは、学生の「雑談」です。  彼らにしてみれば、それが普通なのかもしれないのですが、私が見る限り、雑談でしかなかったのです。  私が、当初教団に立って話しているときに、授業とは全く関係ない話をしだしたり、ふざけ合ったりしているのを見るたびに、不快に気持ちになりました。先生を無視している、ばかにしている、といった気持ちになるのです。  そんな授業の雰囲気で、学生を授業に集

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            連載小説「光と影」第3章 韓国生活:職探し

             ユナを追うように、富雄もアメリカでの生活を整理し始めた。  富雄にとってはどこか未練の残る時間となっていた。そして韓国に身寄りがあるわけではなかった。さらに、仕事もまだ決まっていなかった。  アメリカに来た当時はすでに仕事は決まっていた。身寄りはなかったといえども、仕事を探がすという無駄な手間を省くことができた。しかし、今回は状況が違った。  まず、結婚生活を始めるために資金そして仕事、さらにはユナの両親への承諾が必要であった。実際行動を始めると、多くの問題が山積みされ

            連載小説「光と影」第3章 韓国生活:寂しい土地

             ユナは韓国行きを予約した。日にちは決まっていた。韓国行きはトントン拍子に事が運んでいった。富雄はその成り行きを不安に思うことがあった。  アメリカでの生活は何ら不自由がなかった。このままの生活で充分満足できていたからだ。アメリカを離れる理由は彼にはなかった。むしろ韓国へ行くことの不安がどこかにあった。  彼にとってはどちらも異国である。日本から近い韓国。日本から遠いアメリカ。しかし。韓国は日本とは近いとはいえ、彼の知らないことが多かった。留学や旅行とは異なる。まさに、そ

            連載小説「光と影」第2章 米国へ:19急旋回

             二人にとってアメリカは縁のない、身寄りのない静かなところであった。  富雄はだれにも干渉されないそんな他国のアメリカが気に入っていた。  富雄にとって家族とは、人生全般に干渉してくる存在であった。距離をある程度置くことが必要と考えていた。  それに反して、ユナは異なっていた。  家族は彼女にとってもっとも頼りになる、掛け替えのない存在であった。

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            連載小説「光と影」第2章 米国へ:18岐路

            ドライブは三日目を迎えていた。二人は真剣に今後のことを考えなければならなかった。その一つがどこで一緒に住むか、であり、二つ目が結婚の承諾である。  付き合うことにはそれほど無理はなかった。しかし、それ以上の関係を周囲はどう見るかが、大きな壁として行方を遮っているように感じれられていた。  富雄はアメリカに残ってもいいと思っていた。日本に帰るだけで、冷たい視線が待ち受けているようであったからである。そして、富雄はここ数か月ですでにアメリカの生活に慣れてしまっていた。

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            連載小説「光と影」第2章 米国へ:17二人の時間

            ユナはアメリカの生活に慣れていた。もともと英語が話せた彼女は、適応することは一瞬であった。 富雄も毎日の生活と仕事に追われるだけであった。特別ユナを恋人のように接することはなかった。ユナもそれ以上を望むことはなかった。  それでも、アパートの一室で、そして職場で常に共に寝泊りしているにも関わらず、二人の関係はそれほど近くならなかった。

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            連載小説「光と影」第2章 米国へ:16 二人の生活

             アメリカでの新たな生活が始まった。今まで一人で生きてきた富雄の生活は一変していた。  同じアパートに異性がいる。ユナが韓国でも日本でもない、このアメリカに来ることは、想定していなかった。富雄にもそれを解釈することに、相当な時間がかかった。急激な展開にある面、たじろいでいた。  富雄は初めて女性を知った。彼の知っている女性は母と五つ年上の姉。そして祖母であった。交際した経験もない彼には、女性と常に一緒に行動することは、不慣れでもあった。

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            連載小説「光と影」第2章 米国へ:15 空港からの電話

             富雄は気分がよかった。毎日がどこか希望に満ちていて、幸せであった。  ユナの手紙の中の聖書の引用文がそうさせたのか、それともユナの米国行きがそうさせたのか、彼自身には判別しなかった。  単純に言えることは、雲がかかっていた闇から解放された気分であるということである。  富雄は生まれて初めて、自分が価値ある人間でると認められたようでもあった。

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            連載小説「光と影」第2章 米国へ:14 あなたは光

             富雄は鳥のさえずりで目を覚ました。  カーテンを開けると、日差しはやさしかった。そして、窓の隙間から冷たい風が入ってくるのを感じた。  アメリカの生活で彼の心を慰めてくれるものの一つに鳥のさえずりがあった。鳥の種類も多かった。  そんな鳥のさえずりが、どこか希望を運んでくれる幸福の鳩のようにさえ感じた。

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            連載小説「光と影」第2章 米国へ:13 理想の国の光と影

             富雄はサンフランシスコでしばらく様子を見つつ、同僚の無事を確認した後で、どうするかを決めることにした。数日後ようやく連絡はつながった。同僚はみな無事であった。本社がワシントンにあり、ワシントンで過ごしていた彼らは、幸運にもテロの被害は逃れていた。  しかし、彼らだけでなく、アメリカ全土は悲しみに暮れていた。それは、ワールドトレードセンターやハイジャックの飛行機で犠牲になった犠牲者とその家族はかなりの数に上ったからだった。さらにワールドトレードセンターで救助作業していた消防

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            連載小説「光と影」第2章 米国へ 12:同時多発テロの勃発

             富雄はラスベガスに着いた。街はどこかひっそりとしていた。  すぐに彼はネットのつながるカフェに入った。そこではすでに人だかりがあった。テレビの前にみなそのニュースにくぎ付けになっていた。  ある者は叫び声をあげ、そこから立ち去るものがいれば、ある者は茫然とその場に立ちすくんでいた。

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            連載小説「光と影」第2章 米国へ 11:自然への畏敬

             セントルイス、カンザスシティーに寄り、数日を過ごした。そこから西へと高速道路70をひたすら走り続けた。  当面はラスベガスを目的地としていた。  ラスベガスに入る前に、グランドキャニオンに寄るという計画を立てた。道なりにとにかく走りつづける時間と日々が続いた。  周囲の景色は当面はかわらなかったが、徐々にごつごつとした岩や砂漠に変わっていた。見たことのない景色が目の前に現れては消えた。周りは一瞬にしてピンク色と化している。  何事が起ったのか彼は目を疑った。

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            連載小説「光と影」第2章 米国へ 10:発砲事件

             当面の目的地であったシカゴへ向かっていた。富雄はシカゴで観光の時間を費やそうと思っていた。  ドライブ中に彼はラジオを付けたり、音楽を流すことが多かった。ラジオは彼にとって唯一の情報源でもあったからだ。  シカゴを目の前にしたときであった。ラジオのニュースに恐怖を覚えた。  シカゴで連続無差別発砲が起こっているということである。  アメリカにきて初めて銃の発砲事件を目の前にしているのである。それ以前にもアメリカでは各地で無差別の発砲事件が起きていた。

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