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月と森のサブマリン ⑬                          設計アイデア編1                            

■たったひとりの建築冒険物語■
…。
さて、
家を造ると決め、
ひとり熱くなって突っ走り始めた。
…。
木を切る。
中古ユンボ購入。
鋼材入手。
製材機作り。
赤松の板作り。
…。
どれも精神的にも、
肉体的にも、
相当ハードだ。
正直キツイ。
家にいても、
職場にいても、
家造りが頭の中を飛んでいる。
ブ~ン。
赤松林の現場に行けない時は、
ノートに妄想の家を描く。
こんな家はどうだろう?。
…。
八角形の二階屋にとんがり家根の屋根裏部屋。
壁には森と一体になれるように沢山の窓。
一階の周りにぐるりと木製テラス。
このテラスに佇むと、
鳥の声やサワサワと木々の葉が風に揺れる音が聞こえる。
テラスを歩き西側の手作りドアを開けると一階。
そこは明るいキッチン、
テーブルとイスが並ぶダイニング。
北側にバスと洋式トイレ。
一旦外に出て、
テラスを左側に歩いて行くと、
二階に上がる外階段につながる。
コツコツと上がると二階に続くドア。
ノブを回してギギーと開ける。
そこは木製の机やソファーがある二階リビング。
八方につけられた窓から、
森の木々やリスや飛ぶ小鳥。
机の上にはクッキーと紅茶。
ボリボリ、
コグリ。
なかなか美味しい。
ふと家の中央にある柱を見ると、
厚い板が螺旋状に打ち込まれている。
屋根裏部屋に続くまわり階段だ。
手摺りにつかまり上がって行くと、
勾配のある家根裏部屋。
左右に真っ白なシーツのベッド。
寝室だ。
ゴロンと横になると柔らかい。
このまま寝てしまいそうだ。
そのまま上を見ると、
中央の柱の横に木製ハシゴ。
ん?。
立ち上がり、
足をかけハシゴをよじ登る。
天井に真鍮の把っ手。
お?。
回しながら押し上げると、
ギギーと戸が開いた。
青い空が…。
アハハ-。
そこは家根上の見張り台だ-。
…。


船長。
何だ?。
南に船が見えます。
なに?。
首からぶら下げていた双眼鏡を持ち上げ見た。
や、ヤバいぞ、海賊船だ。
戦闘準備しろ-。
バタバタと部下の船員が走り回る。
玉を大砲に詰めろ-。
アイアイサー。
船長。
何だ?。
迫ってきました。
よし、打ち方始め-。
一階、二階の窓が開き、
大砲が顔を出すと。
ド-ン。
ドド-ンと鉄の玉が放物線を描いて飛んで行く。
ヒュ-ン。
ドボォーン。
海に水柱が次々とあがり、
やがて、
敵の海賊キッドの船体にドスンと穴。
ギャー。
悲鳴と共に煙。
逃げろー。
海賊船は面舵を切って、
南に逃げてゆく。
髭面の海賊キッドは、
義手の手に握られた刀を振り回し、
おぼえとけ-ヨ-。
と怒鳴る。
アハハまた来い…
何時でも相手になってやる-。
…。
去って行く海賊船を見ながら、
ふと西の山々を見た。
山頂に残雪。
その山を駆け上る風に乗り飛ぶトンビ。
いいな~。
…。


見張り台を満喫すると、
二階のリビングに降りた。
ふと壁を見ると、戸。
こんな所に戸が…。
窓から覗くと、
お!。
木製の空中回廊が森の奥に続いている。
ドアを開け空中の廊下に足を踏み出した。
何処にに続くのか?。
ドキドキ。
…。
つづく。

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