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月と森のサブマリン 21      巨神兵で地球を掘るの巻


…。
20トンバックホー巨神兵購入により、
土建屋でも始めるつもりか?。
と言われつつ、
地球を掘る。
ゴリゴリ。
…。
巨神兵を購入して、
まず、
このバケモノを飲み込む戦に入った。
ドドン。
なんだ?、
巨神兵を飲み込む?。
そんな事できる訳ないだろう。
当然だ。
それは物理的な意味ではない。
精神的な意味だ。
5トンユンボを購入した時も、
その鉄の固まりを目の前にして、
こいつを操る事ができるのか?。
どのような構造なのか?。
はたして、
俺に操縦できのるか?。
そんな疑問が、
ムクムクと湧き上がり、
背筋が冷えた。
…。
そして、
今度は5トンの比では無い。
総重量20トンのバケモノだ。
生まれてこのかた間近で見た事も無い。
まさに、
未知との遭遇。
ピボパ。
…。
バケット幅1.1m。
全長8.7m。
幅 2.9m。
高さ 3.0m
腕の長さ10.0m。
その腕を動かす油圧シリンダーの直径12㎝。
…。
前に立ち仰ぎ見れば、
その巨体に、
心臓が高鳴り、
呼吸不全に陥る。
ドキドキ、
ゼイゼイ。
く、クソ、負けるか。
…。
だが、
一歩間違えれば、
踏みつけられ、
肉汁と化す。
…。
そうだ。
負けん。
あのナウシカの世界で、
遥か地平線を覆うように襲い来るオームの群れ。
その怒濤の如く怒りに満ちたオームの群れを前に、
毅然と立つクシャナ姫。
その背後に、
砂丘をはい登る巨神兵。
クシャナは吠える。
薙(な)ぎ払え-。
その命に従おうと、
巨神兵は口を開けた…だが…腐った巨神兵の気力は無く…。
そこでクシャナはさらに叫ぶ。
それでもお前は世界でもっとも邪悪な一族の末裔か----。
薙(な)ぎ払え--------。
その命に、
懸命に口を開け、
巨神兵の最後の一撃、
口からプロトンビームが放たれた。
ドコーン。
地平線が赤く膨らみ、
爆風で、
オオムの群れが宙に舞う。
…。
こ、
これだ。
クシャナは巨神兵を完全に自分の支配下に置いていた。
…。
俺もやる。
ヨッコラショ、
ドッコイショ、
と巨神兵のコックピットによじ登り、
イスに座り込む。
おお~。
視線が高い。
左のドアを閉め、
右側から後方に視線を回すと、
その巨大さに、
心の臓がカタカタと音をたて、
キンタマが縮み、
背中を冷や汗が流れてゆく。
ク、
負けるか!。
前を向くと、
イスの左右に巨大な腕を動かすレバー。
前方に2本のキャタピラ駆動のレバー。
足元に予備油圧のフットレバー。
右側に様々なスイッチやランプ。
ムム。
いくぞ。
やおら俺はキーを差し込み、
息を止め回した。
すると、
クイン、クインとセルモーターの回転音。
そして次の瞬間、
身を震わせ、
7000㏄ターボディゼルエンジンが目覚めた。
ブボボボボボボ…。
と同時に、
エンジンに直結された油圧ポンプが回転。
巨神兵の全身に、
高圧の作動油が血液の様に駆け巡った。
目覚めたのだ。
巨神兵-----。
動け---。
俺の叫びと共にコックピット前方の二本バーを押した。
ゴゴゴゴゴ。
鉄製の幅70㎝、
重さ2トン、
一周13mのキャタピラ二本が回りだす。
ゴゴゴゴ-。
大地を踏みつけ、
岩を砕き、
石をめり込ませ、…。
真っ直ぐに前進してゆく。
ゴリゴリGoRi…。
…。
俺は叫ぶ。
起き上がれ~。
右レバーを握り後ろに引いた。
途端に、
全身を回る高圧の作動油が、
2本の直径12㎝の油圧ピストンに流入、
巨神兵の長さ10m、重さ5トンのアームが、
油圧シリンダーに押され、
ゆっくり上がってゆく。
ゴゴゴゴ。
…。
俺は笑う。
引きつりながら笑う。
アハハハハハ。
うっははハハハ葉波HAHaha…。
お前は俺の仲間だ---。
巨神兵----。
あははハハHaHa波歯葉葉。
…。 
というわけで、
巨神兵を従えたのだ。
大変であった。
Fu~。
…。
どちらがボスかの戦いの末、
俺は奴に餌を食わせる。
ゴボゴボ。
軽油だ。
さらに、
ラジエターに新品のクーラントを奢り、
エンジンオイルのゲージを引き抜き、
適正なオイル量にディーゼル用エンジンオイルを注ぐ。
どうだ、美味いか…。
そうか、美味いか~。
ムフフフフ。
これからが本番だ。
いいか。
俺は森の奥を指さした。
そう、
5トンユンボでは埒があかなかった、
岩だらけの建築予定地を。
…。
行くぞ。
巨神兵。
・オッケーボス、行きます。
ゴリゴリ。
というわけで、
建築予定地を堀り始めたのだ。

次々と掘り出される岩、
大岩。
小惑星。
スゴイ数だ。
それをゴリゴリと文句も言わず、
巨神兵は掘る。
やがて、
なんとピクリとも動かなかった大岩を、
奴は掘り出した。
さらに、
この大岩を抱え込み運ぶ。

この岩のサイズから岩の重量は5~6トン。
腕を伸ばして掴んでも持ち上げられない重量なのだ。
だから、
巨神兵の懐に抱き抱え運ぶ。
その度に、
できるのか?。
出来ないのか?と、
イチイチストレスで心の臓がカタカタと音を立てる。
そして、
背中に冷や汗が流れてゆく…。
だが、
文句も言わず、
奴は働いた。
さすがだ。
…。
というわけで、
森の一画に直径9mの穴が開いた。

この穴が、
半地下兼基礎となる部分だ。
…。
つづく。
…。

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