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同棲したら、喧嘩はそりゃ増えるけど。

突然惚気で申し訳ないが、私の彼氏はとても優しい。
平日は仕事をしながら一通りの家事をこなし、土日には手の込んだ手料理を私のために作ってくれる。

体調を崩しやすい私を配慮して、デート中は常に私が無理をしてないか気を配り、私が疲れたな、と思うタイミングで「俺が休憩したいから」と噓をつき、カフェに向かう。

何より、彼の人と向き合う姿勢が、優しくて私は大好きだ。

彼は、いい意味で相手に期待しない。
伝えなければ、心の中を理解してもらえないことをわかっているから、自分の感情や気持ちを伝えるのを惜しまない。
「わかってよ」という自分勝手なコミュニケーションを取らずに、私が理解できるまで自分の思いを話してくれる。これはとても、優しくて、尊いことだと思っている。

そんな彼に。先日とても腹が立つことがあった。
内容はとてもくだらないものなのだけれど、二人の今までと違う二人の空気や喧嘩の仕方に、同棲という慣れの怖さを感じた。

どちらが悪いでもなく、お互いが起こした小さなすれ違い。

喧嘩の内容は本当にくだらないのだけれど、何だか忘れてはいけないことのような気がして、記録のためにもその日のことを綴っておく。

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ある平日の夕ご飯のこと。

我が家では、平日は私が料理を担当し、土日は彼氏が作っている。

実は私、料理があまり好きではない。
かつ基本的に食に興味のない私は、同棲する前はお茶漬けだったり「なんじゃこりゃ」という簡単な男飯を作って食べていたのだけれど、人と暮らし始めたらそうもいかない。

毎日嫌になりながら必死にYouTubeでレシピを探し、一つ一つ計測しながらしっかりと味付けする。

しっかり計測しているのは、私が味覚の予想を全くできないから。

どの調味料をどの程度入れたら、こんな味になるだろうという予想が、私には全くできない。
料理を頻繁にこなすようになれば、多少身につくだろうと思っていたけれど、同棲を開始してから半年。料理のレシピを覚えただけで、新しい料理を作るのならば、いまだに1からレシピをみないと難しい状況だ。

しかし、日によってはレシピと異なる野菜量で作ったり、材料を代替しなければならない時がある。
そんな時、私の料理は失敗しやすい。

作り始めた当初、「おいしい?」という私の問いに、彼が「ありがとう」と変な返答をしていた時もあった。
最近はおいしいと言ってもらえる頻度が多くなってきたのだけれど、時には味付けが薄いこともあるらしく、食卓に並んだ後に、「塩かけてもいい?」と言われることもしばしば。

・・・

喧嘩をした日は、キュウリの和え物を作った。

キュウリの和え物というのは、無限大にレシピがある。
その日の気分で、適当にレシピをチョイスしているのだけれど、その日の和え物レシピでは、塩小さじ1/2の指示があった。

ちなみに、皆さん。突然だけれど日本人が推奨されている1日の塩分量ってご存じですか?

それは、約7g。
どれくらいかというと、塩小さじ1杯の場合、中には約6gの塩分が含まれています。

つまり、1回の食事で食べ終えてしまいそうな副菜のみで、塩分約6g。

1人前にしても、約3g。

だから、指示を見た時に「え、ちょっと多くない??」なんてその時思ってしまって。

味付けを薄くしようか迷ったのだけれど、いつも私の食事に塩を足す彼の姿を思い出した。
しばらく頭を悩ませたけれど、健康を考慮し、結局気持ち少なめにしよう…という結論に落ち着いた。もし美味しくないようであれば、塩を足してもらおうと思った。

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帰ってきた彼氏が「いただきます」とキュウリの和え物に手を伸ばす。
しばらく食べていたけれど、何も感想を言わないもんだから、「おいしい?」と私から聞いてみると、「うーん、うん。でも、もう少し味濃い方が好みかも」と、少し恐れていた、けれど予想通りの返答があった。

がっくりしながら、「やっぱり薄かったかぁ、なんかね。小さじ1/2って書いてあったんだけど、ちょっと多いかなと思っちゃって、ちょっと少なめにしたの」と私が言うと、彼が一瞬怪訝な顔をした。けれど、すぐにいつもの優しい顔に戻り「あれ??料理って、塩が大事だから、自分が思ってるよりふりかけないと、おいしくならないよって前に俺言わなかったっけ」と私に言った。

「ね、そういってくれていたよね。でも実は、日本人で推奨されてる塩分量って7gぐらいって言われてるんだよ。それなのに、こんな一食のうちのこれっぽっちしか使うのかと思うと、ちょっと気が引けちゃって…」

もちろん、彼が以前塩について思ったより振っていい、と言っていたのは覚えていたのだ。しかし、自分が看護師なのもあるが、味付けが濃すぎるのもな、と思ってしまいその日はあえて薄味にしたのだ。
たった一食で高血圧にでもなるかと言われると違うけれど、それでも気になってしまった。

「言われたのは覚えてたけど、気になっちゃって…」

私がそう言うと彼は言った。

「そっか。今度から、じゃあきゅうりの味付けは別々にしよう( ◜◡◝ )」

どことなく、もういいや、だるいみたいな呆れた表情を彼氏にされた。その態度にかっちーんと頭に来てしまい、心の中で二度と作らねぇなんて悪態をついた。もっと言い方あるでしょう、と憤慨した。

これからじゃあ、キュウリで和え物を作る時は全部、2人前作るっていうこと?
極端すぎない?
ていうか嫌いな料理毎日作ってるんだから文句言うなよ。
そうやって心の奥で湧き上がるイライラした言葉たちが、じわじわ感情を覆っていく。

「そう」

その時の私は、感情を殺して、たった2文字を呟くので精いっぱいだった。

−−−

時が経つと、私の脳は嫌なものを排除するかのように、なぜあの時怒りが湧いたのかを忘れさせようとした。 
けれど何となく、忘却しようとしている小さな傷が、いつか治療しようのない大きな傷になる気がした。

キュウリの味付けが濃くて、塩分が高すぎてしまうと思ったのは、彼氏の健康へ対する配慮だ。
そりゃあ毎回毎回、お母さんのように栄養バランスの整った丁寧な食事を用意しているわけでもない。塩分とか油は、何となくのタイミングで気をつけているだけで、具体的に食習慣で行動していることもない。

じゃあなぜ、あんなにもイライラしたのか?

.
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きっと私は、自分を認めて欲しかったのだ。

ただ、一言、私の気持ちをねぎらう言葉が欲しかった。

「そうなんだ、塩分ってそれしか食べちゃいけないんだね。でも、ちょっと物足りないから、それでも味付け濃いめの方がうれしいかも」

なんて言われなら、もしかしたら「そっか」とすんなり納得できたかもしれない。

きっと、カップルが喧嘩する大半の理由は、言い方が原因なんじゃないだろうか。
みんな、人それぞれ価値観が違うなんて当たり前の事実はすでに理解しているし、気をつけようと努力もしている。
けれど、そんなカップル達の努力を残酷にも打ち壊していくもの、それを『慣れ』と言うんだろうな。

その後、私から彼に喧嘩をした時の思いを話し、わだかまりは解消した。

私は根底に「嫌いな料理を頑張っているのに」「あなたのためにやったのに」という思いが。
一方彼は「料理の時は何度も塩を多めにと言ったのに」という抑圧された気持ちがあったのを知れた。

時が経つのは怖い。
1番大切で、大事にしなきゃいけない人との対話を、おざなりにしてしまう。

でもきっと、これからもキュウリ事件のような喧嘩は繰り返し起きるのだろう。
ひとつひとつは小さかった喧嘩の跡が、2人の対話をする気力をどんどん奪っていく。

そうならないためにも、日々彼との対話を大事にしていきたい。
そうな風に考える、今日の日記なのでした。



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